乙女ゲームの悪役令嬢は生れかわる

レラン

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なんだって?

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『ねぇ。君はなにがしたいの?』

 暗い空間の中。透き通った声が聞こえる。

『ねぇ。君はなにがしたいの?』

 繰返される言葉。
 何がしたいか。そんなの決まってる。この魔法の世界を、思う存分楽しむ!

『本当にそれが、君のしたいことなの?』

 声が問いかけてくる。
 何を言ってるの?私のしたいことは、さっきも言ったとおり、この世界を楽しむことだよ?

『本当に?』

 再度問いかけてくる声。
 ‥‥‥そうだよ?

『‥‥君はそれでいいの?』

 ‥‥‥‥‥。

『ねぇ。いいの?』

 ‥‥‥‥‥‥。

 繰返される言葉は、私の心を揺さぶり始める。

 やめて。やめてよ。

『ねぇ。いいの?』

 やめてよ!私に問いかけないでよ!
 耳を塞ぎたいが、自分の体を感じ取れない。ただ、声だけが聞こえる。

『ねぇ。いいの?』

 ‥‥‥‥‥。

『ねぇ。いいの?』

 ‥‥‥‥‥‥。

『このままで‥‥‥‥いいの?』

 ‥‥‥だ‥‥‥‥‥やだよ!でも、それをあなたに言って何になるって言うのよ!!
 私は声の主に叫んだ。
 なんでこんなことを言ってしまうのかわからない。
 でも、これは自分の本心だと、何故か確信できた。

『ねぇ。君はなにがしたいの?』

 また声が問いかけてくる。

 ‥‥‥私の‥‥本当にしたいこと。

『ねぇ。君はなにがしたいの?』

 ‥‥‥‥‥私のしたいことは‥‥ーーーーーー。

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

「‥‥ん‥ふぁ~」

 眩しくて、私は目を覚ました。
 どうやら、私はあの後ケーキを食べてから、そのまま寝てしまったらしい。

「スー‥スー‥」

 横では、グリーズフラムが綺麗な寝顔と気持ちよさそうな寝息をたてて眠っている。
 肌の手入れをしているのか、とっても綺麗なお肌だ。

「‥‥‥‥このやろう」ツンツン
「んっん~」

 私が頬をツンツンすると、グリーズフラムは嫌だったのか、寝返りをうってしまった。
 感想?柔らかくてスベスベ肌だったよこんちくしょう!

「はぁー。何やってんだか」

 私は自分のやっていることがバカバカしく思えてきてた。
 ベッドからおりて、水差しからコップに水そそぎ、それを一気に飲みほした。

「‥‥ん‥ん‥ん‥‥ぷはぁー!」

 風呂上がりのおじさんみたいなことをしてしまったが、誰も見ていないのでよしとしよう。
 私は、一向に目を覚まそうとしないグリーズフラムに近づいた。

「‥‥‥おーい。いい加減起きろー」
「スー‥スー‥」

 起きない。
 ‥‥‥暇すぎてヤブァイ。
 魔法の練習をするにも、部屋の中だと危険すぎてダメだ。
 そういえば、昨日なんか変な夢を見た気が‥‥‥。

『ねぇーーーなにーーーーの?』

「っ」ズキズキ

 昨日の夢を思い出そうとした瞬間、目の前に火花がちって、頭痛がしてきた。
 あまりの痛さに、私は枕に顔を沈めた。
 しばらくすると頭痛も治まり、私は昨日の夢を思い出すことは諦めることにした。

「‥‥‥なんだったんだろう」
「それは俺のセリフだと思うんだけど?」
「え!?」

 私の独り言に返事が返ってきたので、驚いて声のした方を向くと、グリーズフラムかこちらを見ていた。

「あ、起きたの?それなら早く私を帰して」

 私はやっとこのヤンデレから離れられると、安堵した。

「‥‥‥‥俺がそれはできないって言ったら?」

 私の願いを、グリーズフラムは質問で返してきた。
 顔は、何かイタズラを思いついた子供のような顔をしている。

「‥‥‥‥‥」
「あ、すみません。謝りますからその魔力を閉まってください」

 私が「そんなこと言ったら、これでどうにかしてやる」と、いう感じの魔力オーラを出すと、グリーズフラムは素直を謝ってきた。
 私は魔力オーラをしまう。

「で?帰してくれる?私、これでも忙しい身なの」
「‥‥‥ヤダって言ったら?」

 またグリーズフラムが何か言ってきた。

「‥‥‥いい加減にしねーと、お前の魔力吸い取っちまうぞ子供ガキが」

 ゲーム設定では、ディーオとグリーズフラムは同い年だが、今は
は、私の方が倍ぐらいだ。
 ヤンデレ怖いという気持ちは、精神年齢でカバーする。

「すみません」

 グリーズフラムがまた謝ってきたが、次の謝り方は、何やら少しだけ違和感があった。
 

「‥‥‥何か隠してる?」

 昨日と打って変わってのグリーズフラムの態度に、違和感を感じたので、拷も‥‥質問してみることにした。

「な、なにも?」

 そう言ったグリーズフラムの目は、物の見事に泳いでいた。
 ‥‥‥魔族なのに嘘下手すぎない?

「‥‥‥隠すの?なら、実力行使しようか?」

 私は、一刻も早くこのヤンデレと離れたい一心で、魔力をねって手にまとわせる。

「うあぁああぁあ!待って!話すからそれだけは待ってください!」

 ‥‥‥本当にこいつ、最初とキャラ変わってない?てか、キャラブレブレなんですけど。
 私は、手にまとわりつかせた魔力を分散して、グリーズフラムと距離を置くために、壁に寄りかかる。

「で?何を隠してるの?」

「‥‥‥‥怒らないでくださいよ?」

「‥‥‥で、何を隠してるの?」

「え?返事してくださいよ!怒らないでくださいよ!?」

「‥‥何を隠してるの?」

「ねぇーー!!」

 私はグリーズフラムの言葉を無視し続けた。
 それとしつこいようだけど、グリーズフラムのキャラが違いすぎるんだけど。こいつ考えた運営さん。ちゃんとしましょうよ。

「何を隠してるの?」

「うぅ~。もういいですよ」

 私が無視し続けるので、グリーズフラムは諦めて、話し始めた。

「ディーオが消えて真っ先に慌てたのは、ルルンという侍女でした」

 グリーズフラムは1冊の本を読むように話し始める。
 やっぱり、ルルンは私のことを心配してたのね。

「そして、ルルンは王の間に乱入して、王に言いました」

 ‥‥‥ん?

「『このあほんだら王が!!何お嬢様攫わせてやがる!!それでも世界の三大勢力を誇る国か!!!お嬢様1人守れないで、何してやがる!!』と」

 ん!?ん!?

「ルルンの怒りは止まらず、ディーオが攫われた時に一緒にいた騎士達全員を集め、そいつらを拷問し始めました」

 え!?

「ちょ、ちょいまち!!」

 私は、予想外の話をし始めるグリーズフラムを一旦止めて、頭の整理を始める。

 まず、ルルンが1番私の事を心配していた。
 これはいい。予想内だ。問題はその次からだ。
 ルルンが王に向かって暴言!?それプラスに騎士達全員を拷問!?
 何がどうなってるの!?

「ええ~?ここで止めちゃうんですか?これからが面白いのに」

「え!?まだあるの!?」

 どうやら、ルルンの暴走劇には、続きがあるらしい。
 私はとりあえず、深呼吸をして心を落ち着かせて、話を聞く覚悟をした。

「ふー‥‥どうぞ続きをどうぞ」

「わかった。えっと、ルルンの怒りはそれでも収まりませんでした。ルルンは、『今すぐにお嬢様を助けに行く!』と言い出して、なんの準備もなしに、国を飛び出しました」

 !?

「ルルンはいろんな人の止める言葉も聞かずに、城を飛び出して、魔族の住む森の近くまで来ました」

 !?!?

「そこから、グリーズフラムの家を探し出し、ただいまこの家の番人と生死をかけて戦っています♡」

 !?!?!?

 私はすぐにここから出ようと、壁に向かって魔法を放った。

「っ!なんで!」

 でも、魔法はそのまま壁に飲み込まれて、威力を発揮しなかった。

「無理だよ?だって、話してる最中に、『魔力吸収』の魔法を壁にかけたから」

 っ。ルルンの元に早く行きたいのに!!
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