俺はゲームのモブなはずだが?

レラン

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 乾いた制服に腕を通すと、ふわっといい匂いがした。不思議に思い、ブレザーの袖に鼻を近づけて匂いを嗅ぐと、袖からとてもいい匂いがした。
 洗濯する時に洗剤を入れた覚えはないので不思議だったが、気にしないことにし、白蓮びゃくれんの体操服を持って外に出る。

「センセー。どうもありがとうございましたー」
「おーう。次からは気おつけろよー」
「何かあったら相談だぞ?」

 2人の攻略対象から見送られながら、俺は保健室を後にした。
 廊下に生徒が多く居るあたり、今は十分間休憩の途中なのだろう。ずっと保健室にいたから今が何時間目か分からない。

「お、白蓮」

 ちょうど白蓮が教室の外に出ており、体育館シューズを持っているあたりから、次は体育なんだと思う。

「おーい白蓮ー」
「ん?あ、稜驊いつか!もう大丈夫なのか?」
「ああ、大丈夫」

 クラスメイトと話していたところに声をかけてしまい、少し申し訳なくなったが、次が体育の様子だし、しょうがないだろう。
 そんな言い訳を心の中でしながら、俺は持っていた白蓮の体操服を渡した。

「ありがとな。助かった。次体育だろ?ちょっと良かったな」
「おう!危うく体育服なしで体育するしかなくて困ってたんだ!次からは気おつけろよ?」

 いい笑顔でそう言いきる白蓮。
 いや、体育服忘れたら体育参加させてもらえねーだろ。でも、そっか‥‥‥困るのか‥‥。

「そうか。じゃあ、今度から何かあってもお前頼らないようにするよ」
「え!?」
「だってお前のもの借りたらお前困るんだろ?だったら借りな──」
「──言葉のあやだ!別に困ってない!てか、お前に頼られることってあんま無いから嬉しい!嬉しいんです!」
「そ、そうなのか」

 やけに力強くそう言ってくる白蓮の迫力におされて、少しだけ後ずさってしまう。

「だからこれからも何かあれば俺に頼れよな!」
「お、おう」
「約束だぞ!」
「や、約束だ」
「なら‥‥ん!」

 そう言って小指を突き出してくる白蓮。
 ま、まさか‥‥。

「びゃ、白蓮。もう高校生だぞ?」
「だから?ん!」

 ‥‥‥はぁー。俺は知っている。こうなったら白蓮は絶対に譲らないことを。

「ほら」

 俺も同じく小指を出して白蓮の小指に絡める。
 それだけで顔を明るくする白蓮は単純だと思う。

「指切りげんまん♪嘘ついたら針千本飲~ます♪指切った!じゃあな!」

 高校にもなって指切りげんまんとは恥ずかしい限りだが、白蓮の笑顔を見るとそれもどうでも良くなってくるのは、やはり主人公補正が働いているからなのだろうか。
 俺は去っていく白蓮に手を振り、自身も教室に戻るべく、回れ右をする。

「ハァハァ‥[ガシッ]やっと見つけた!」

 急に肩を掴まれ、俺は反射的にそちらを向く。すると、そこには汗だくになった虎國とらくにがいた。

喜三久きみひさ先輩。どうしたんですか?」

 いつも(現実ではなくゲーム内で)爽やかでこんなに汗だくになることはない虎國が、こんなに汗だくになっているのはとても珍しい。あまりのレア差に体の向きを変え、正面から虎國を見る。

「ど、どうしたもハァハァ‥こうしたもハァハァありますか!ハァハァ」

 だいぶ息が切れている中、必死の顔をして俺を怒鳴る虎國。
 俺はすぐに怒られるようなことをしたか過去を振り返る。が、別に怒られるようなことをした覚えがない。それでも、虎國は俺を睨みつけているあたり、俺はなにかしてしまったのだろう。

「‥‥‥俺何か喜三久先輩を怒らせるような事しましたか?」
「な!」

 俺の発言に驚いたようで、言葉をなくして口を鯉の如くパクパクと動かす虎國は、見ていてマヌケ顔そのものだった。

「‥‥あなたからのメールを見て、私は必死になってあなたを探したんですよ?それを‥あなたは‥‥あなたという人は‥‥‥」
「ん??メール?」

 俺はいつ虎國にメールをしただろうか。全く記憶が無い。
 それを虎國に伝えると、虎國は引き攣り笑顔で眉をピクピクと今日に動かし始めた。

「ほう。では、このメールは一体誰から送られてきたんでしょうね」

 そう言ってポケットからスマホを取り出した虎國は、少し操作して俺に画面を突き出してきた。

「この『助けてください』の文字はだ・れ・が!送ったんでしょうね~」

 虎國が言った通り、そこには『助けてください』の文字があった。そして画面から見るにこれはトークアプリの『LAKU』だ。そして上にある名前を見ると、そこには『狐ノ山このやま 稜驊』の文字が。
 ‥‥‥‥。

「ああ!あの時送ったのですか」

 やっと思い出した。
 多分これは先程俺がトイレに閉じこめられた時のものだ。あの時、確かに俺は鷹雅たかまさと白蓮。それに虎國に『助けてください』の文字を送った。鷹雅が助けてくれたから、スッカリ忘れてた。

「すみません。もう大丈夫なんで、気にしないでください」
「‥‥ほう?稜驊君は、私の1時間目から今の時間までの時間を無駄にしたということですか」

 虎國の言葉に携帯についている時計を見ると、そこには4時間目があと2~3分で始まる時間だった。

「やっば。もうすぐ授業が始ま‥‥ん?1時間目から‥まで?」

 携帯から目線を外し虎國を見ると、目線をそらされた。もしかして‥‥。

「喜三久先輩。今の今まで授業サボって俺を探してくれてたんですか?」
「っ!‥‥‥」

 一気に耳まで赤く染め、それを隠すように携帯を口元に持っていった虎國。
 マジか。お前そんなに俺の事を心配してくれたのか。
 俺は無性に虎國が可愛く見えて来てしまい、虎國の頭に手を伸ばして頭を撫で始めた。

「‥‥なんですか?これは」
「いや、なんか喜三久先輩が可愛く見えたので‥‥‥失礼しました」

 何となく虎國が怒っているように見えたので、撫でるのを直ぐに辞め謝罪した。

「べ、別にやめろとは言ってませんが」

 そう言ってきた虎國の顔は、どこか寂しそうな顔だった。
 なんだコイツ。

「‥‥別に撫でてもいいですけど、腕と頭が疲れるので嫌です。それに授業があります」
「っ!‥‥‥ならこちらに来てください」

 そう言って俺の腕を引く虎國の耳は、赤かった。
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