メイド、冒険者になる。

エムポチ

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初仕事

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 翌朝、マリクは目を覚ました。するとすでにエリスは起きて、剣を研いでいた。
 「主様、おはようございます」
 「あぁ、おはよう。早いね」
 「荷物が盗まれないか見張ってましたので」
 「そ、そう・・・言ってくれれば、交代したのに」
 「主様に任せるわけにはいきません」
 エリスにはっきりと言われ、何だか、頼りにされてないなぁと感じるマリク。
 二人は荷物を整え、酒場へと降りて行く。
 「主様、早速、仕事を探しましょう」
 エリスはそう言うと、依頼の貼られた壁へと向かう。
 こんな時代だからか、思ったよりも仕事の数は多かった。大抵は魔獣相手の力仕事。
 「あまり暴力的なのは嫌だなぁ」
 マリクは不安そうに呟く。それを聞いたエリスは溜息をつく。
 「主様・・・ここは荒くれ者の冒険者ギルドですよ。大抵、暴力的な事ばかりですよ」
 「だけど・・・エリス。僕があまり肉体労働が得意じゃない事は知ってるだろう?」
 「嫌と言うほど知っております。出来れば、今からでも身体を鍛えてください。もう貴族でも金持ちでも無いのですから」
 「そんな厳しい事を・・・」
 「あっ、これなら良いじゃないですか」
 エリスは一枚の依頼書を手に取る。
 「邸宅の掃除だそうですよ」
 「邸宅?」
 「地図だと、街の郊外にある邸宅らしいですけど、主様、御存じですか?」
 エリスから依頼書を貰い、マリクは地図を眺める。
 「うーん・・・これって、記憶が確かなら、邸宅って言うより、昔のお城じゃなかったかな?」
 「お城ですか?」
 「うん・・・千年前の魔族との戦いの時にこの辺りを守る為に築かれた城だったような。数百年は使ってないから、とても使えるような代物じゃないと聞いていたけど」
 「それを邸宅と言うのはどんな人物なんでしょうか?」
 「ギルバート・・・知らないなぁ」
 「お城って事はここもシュナイダー家の持ち物なんですよね?」
 「あぁ・・・どうだったかな?何せ、うちの家よりも遥かに古い時代の城だし・・・それに場所が悪くて、調査をしたぐらいで、誰も行かなかったからねぇ。うちの持ち物って感じじゃなかったかな・・・まぁ、領土の一部では当然、あるんだけど・・・まぁ、今となってはそんな事も言ってられないけどねぇ」
 「なるほど・・・まぁ、この邸宅を掃除するだけで、10万ガルソを頂けるなら安いもんです」
 「10万ガルソか・・・1年は食うに困らないねぇ。だけど、城だから、結構な大きさがあると思うけど」
 「それでも10万ガルソは魅力です。早速、行ってみましょう。見て、ダメそうなら断れば良いのです」
 「な、なるほど」
 やる気のエリスに引きずられるようにマリクは酒場を後にした。
 
 依頼主のギルバートは街で商人をしている男だ。
 髭面で強面の中年男を前にマリクは少し怖気づく。
 「あんたみたいな子どもがこの依頼を請けるのか?」
 ジロリと見られて、更に萎縮するマリク。だが、その隣に座るエリスは落ち着いた雰囲気だ。
 「問題ありません。掃除は私が主に担当しますから。それより、実際、どのような仕事なのか確認しないといけないと思いまして、話を聞きに来ました」
 エリスの落ち着いた口調にギルバートは少し納得したように話し始める。
 「邸宅とは書いたが、実際には遥か昔に放棄された城だ。大きさはざっと領主様の屋敷の倍ぐらいかな。かなり壊れているので、完璧に掃除をして貰う気は毛頭無い。ただ、魔族がこれだけ暴れていると安心して、暮らせる場所が欲しいと思ってな。あそこなら、魔族が襲ってくることも無いと思うから、最低限、生活が出来るようにだけしてくれ。住めるとなったら、約束通り、10万ガルソを払おう」
 「それで良いのですね?解りました。それでは着手金で2万ガルソを頂けませんか?何か修繕とかあれば、先立つ物が必要となりますので」
 エリスの交渉にギルバートは少し嫌そうな顔をしたが、仕方がないと思ったらしく、使用人に金貨の入った革袋を持って来させた。
 「持ち逃げしたら、殺すからな」
 ギルバートの脅しにもエリスは屈しない。笑いながら「解っています」と答える。

 着手金を手に入れたエリスは早速、大工道具などを買い込む。それらを大きなリュックサックに詰め込み、大きなリュックサックは更に膨らみ、小柄なエリスが背負っていると、何かの苦行かと思わせる姿だ。だが、当の本人はそんな事を気にせずにスイスイと歩いて行く。
 城までの道は普段、人が滅多に訪れない場所だけにほぼ、獣道だった。
 エリスは器用に片手剣で進路を塞ぐ茂みをガシガシと切り、道を開いていく。
 その後ろをマリクは杖で地面を突きながら、息を切らせつつ、何とかエリスから離れずに歩いている。
 街からは休憩を入れながら、3時間程度の登山で城に到着した。
 城は鬱蒼とした森に囲まれ、その姿はほぼ、木々に隠れている。
 「見た目は流石に・・・古いですね」
 エリスは蔦と苔に覆われた城を見て、呆然と呟く。
 「まぁ、外観は良いんじゃない?住めれば良いと言ってたわけだし」
 「そうですね。これはこれで情緒がありますし」
 エリスはそう言って、門へと向かう。
 門はさすがに立派で馬車などが通れるように5メートルぐらいの高さがあった。
 とは言え、すでに門扉は丁番が腐食して、壊れたのか、倒れてしまっている上に木製の扉も朽ちて、扉だっただろうぐらいにしか残っていない。
 「門扉は・・・必要ですかね?」
 エリスはまたしても呆然としてマリクに尋ねる。
 「う・・・うん・・・まずは中を確認してから考えようか?」
 そう言って、二人は中へと進んだ。
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