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新しい家
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纏まった金が手に入ったが、当然ながら、これで屋敷が建て直せるはずも無く、宿代だけで3ヵ月。食費なども居れたら2ヵ月程度、何もせずに生活が出来る程度であった。
しかし、これだけあれば、家を借りる事が出来る。
街には不動産屋が存在する。彼等は土地や家の売買をしたり、賃貸の仲介をする事を生業としているが、そもそも、この時代においては人の移動も左程では無いので、大抵は副業である。
この街の不動産屋も普段は金融業を営んでいる。つまり金貸しだ。
家を買うにも大金が動く事を考えると不動産業と金融業は相性が良い。そして、取り立てという事を考えれば、それを行う者はそれなりに腕に自信のある者となる。
まともな法律のある世界では無いが、彼等ははっきりと言えば、反社会組織の連中である。
その店に二人は入る。店内は酒場のような感じだった。
「いらっしゃい」
いかにも悪そうな顔立ちの男達が迎えてくれた。
「メイドと・・・そちらが主様で?」
一番偉そうな男が二人を値踏みするように尋ねる。
「はい。私はメイドのエリス。こちらは我が主、マリク様であります」
物怖じせずにエリスは答える。その凛とした態度に悪そうな連中の方が少し驚いたようだ。
「なんか知らんが、メイドのお嬢ちゃんは何でそんな身の丈ぐらいありそうな剣を吊ってるんだ?」
明らかに目立つエリスの剣に男達はニヤニヤしていた。
「はい。ご主人様を守る為です」
エリスは笑顔で答える。その答えに男達は馬鹿にしたような反応を見せる。
「まぁ・・・良い。で、ご主人様はお若いようだが・・・どっかの御曹司で?」
「マリク様はシュナイダー公爵であります」
「シュナイダー公爵・・・はははっ、死んだと思っていたら、まだ、生きてたんだな」
男達は大笑いをした。
「何がおかしいのですか?」
エリスは感情を押し殺すように尋ねる。
「そりゃ、そうだろ。王国はすでに滅亡して、この街もすでに魔族の支配下なんだよ。まぁ、奴等、大人しくしていれば、何もしないから、好き勝手にやってるけどな。街の治安も領主が不在になったから、冒険者ギルドが大きな顔をしてやがるがな」
「そ、そうなのですか?」
初めて聞いた事にマリクが驚く。
「今頃、知ったのか?あんたは没落貴族様って事だ。見た所、金もねぇんだろ?」
ボロボロの衣服を見て、彼等は馬鹿にしたように言う。
「まぁ・・・あんたが貴族って事は悪魔に引き渡せば、金になるってもんだ」
そう言った瞬間、男達が短剣を懐から抜いた。
「捕まえろ!」
その一言で5人の男達が一斉にマリクに飛び掛った。
「触れるな」
エリスの剣が一閃した。長い剣は天井も低い狭い室内では振り回すのに適さない。
だが、エリスは鞘から抜き放った剣をそのまま振り上げる動きで相手を斬った。
男の右腕が二の腕で軽々と切断された。
そのまま、剣は振り下ろされ、別の男の腹を切り裂いた。
二人の男が一瞬にして、斬り倒された。マリクに襲い掛かった男達は一瞬の事にただ、動きを止めるしか無かった。その一瞬でマリクが呪文を放つ。
「炎よ!」
空中に噴き上げる炎。
爆発しように燃え上がる炎に男達は壁まで吹き飛ぶ。当然ながら、マリクも無事では済まず、転がるように吹き飛ばされた。
「主様、魔法は状況を考えて、発してください」
エリスは剣で爆風を防ぎながら、言う。それにマリクは「すまない」と小声で謝る。
壁に吹き飛ばされた一番偉い男が髪の毛をチリチリに焦がしながら、立ち上がる。
「な、なんだ・・・お前等?」
かなり驚いた様子で彼は二人を凝視するだけだった。
「武器を捨てなさい。殺しますよ」
エリスは剣を構えて、そう恫喝する。事実、二人が斬られ、呻き声を上げている時点で彼女の本気が解るので、誰も抵抗など出来ないと思い、短剣をその場に投げ捨てた。
「私は家を探しています。安い物件を出しなさい」
エリスは剣先を偉い男に向ける。
「わかったよ。どうでも良いようなボロ家が郊外にある。それで良ければ、ただでくれてやる」
「なるほど・・・あと、魔族に密告したら・・・皆殺しにしますよ」
エリスは笑いながら倒れている腕を斬られて、呻いている男の首を斬り落とした。
その光景に残された男達は怯えた。
いかに悪党とは言え、平然と人を殺す程、覚悟があるわけじゃない。目の前でそれをやられれば、ただ、怯えるしかない。エリスはそれを知っているので、彼らに恐怖を植え付けたのだ。
二人は彼等から権利書を受け取り、教えられた場所に向かった。
それは市街地から少し離れた場所に建つ古びた屋敷・・・城だった。
「古城ですね」
長らく放置されていただろう城は全体に蔦が絡まり、薄気味悪かった。
「古城に縁でもあるのか?」
マリクは呆れたように呟く。すでに朽ちて失われた正門を通り抜け、城内に入ると、大木と化した庭木と伸び放題の草花の庭園が現れた。
「昔は綺麗な庭園であったのしょうね」
エリスはそれらを見ながら、石造りの天守へと向かった。
「造りからして、建てられたのは千年ぐらい前かな」
無駄に知識のあるマリクは荒々しい石細工などを見て、建てられた時代を読み取る。
「掃除が大変そうですが・・・とりあえず、住めそうですね」
エリスは建物の中を見て、安心したようにマリクに報告をした。
「雨風が凌げれば、良いよ。まぁ、たった二人で住むには広すぎるが・・・」
マリクは謁見の間であっただろう場所に立ち、苦笑いをした。
しかし、これだけあれば、家を借りる事が出来る。
街には不動産屋が存在する。彼等は土地や家の売買をしたり、賃貸の仲介をする事を生業としているが、そもそも、この時代においては人の移動も左程では無いので、大抵は副業である。
この街の不動産屋も普段は金融業を営んでいる。つまり金貸しだ。
家を買うにも大金が動く事を考えると不動産業と金融業は相性が良い。そして、取り立てという事を考えれば、それを行う者はそれなりに腕に自信のある者となる。
まともな法律のある世界では無いが、彼等ははっきりと言えば、反社会組織の連中である。
その店に二人は入る。店内は酒場のような感じだった。
「いらっしゃい」
いかにも悪そうな顔立ちの男達が迎えてくれた。
「メイドと・・・そちらが主様で?」
一番偉そうな男が二人を値踏みするように尋ねる。
「はい。私はメイドのエリス。こちらは我が主、マリク様であります」
物怖じせずにエリスは答える。その凛とした態度に悪そうな連中の方が少し驚いたようだ。
「なんか知らんが、メイドのお嬢ちゃんは何でそんな身の丈ぐらいありそうな剣を吊ってるんだ?」
明らかに目立つエリスの剣に男達はニヤニヤしていた。
「はい。ご主人様を守る為です」
エリスは笑顔で答える。その答えに男達は馬鹿にしたような反応を見せる。
「まぁ・・・良い。で、ご主人様はお若いようだが・・・どっかの御曹司で?」
「マリク様はシュナイダー公爵であります」
「シュナイダー公爵・・・はははっ、死んだと思っていたら、まだ、生きてたんだな」
男達は大笑いをした。
「何がおかしいのですか?」
エリスは感情を押し殺すように尋ねる。
「そりゃ、そうだろ。王国はすでに滅亡して、この街もすでに魔族の支配下なんだよ。まぁ、奴等、大人しくしていれば、何もしないから、好き勝手にやってるけどな。街の治安も領主が不在になったから、冒険者ギルドが大きな顔をしてやがるがな」
「そ、そうなのですか?」
初めて聞いた事にマリクが驚く。
「今頃、知ったのか?あんたは没落貴族様って事だ。見た所、金もねぇんだろ?」
ボロボロの衣服を見て、彼等は馬鹿にしたように言う。
「まぁ・・・あんたが貴族って事は悪魔に引き渡せば、金になるってもんだ」
そう言った瞬間、男達が短剣を懐から抜いた。
「捕まえろ!」
その一言で5人の男達が一斉にマリクに飛び掛った。
「触れるな」
エリスの剣が一閃した。長い剣は天井も低い狭い室内では振り回すのに適さない。
だが、エリスは鞘から抜き放った剣をそのまま振り上げる動きで相手を斬った。
男の右腕が二の腕で軽々と切断された。
そのまま、剣は振り下ろされ、別の男の腹を切り裂いた。
二人の男が一瞬にして、斬り倒された。マリクに襲い掛かった男達は一瞬の事にただ、動きを止めるしか無かった。その一瞬でマリクが呪文を放つ。
「炎よ!」
空中に噴き上げる炎。
爆発しように燃え上がる炎に男達は壁まで吹き飛ぶ。当然ながら、マリクも無事では済まず、転がるように吹き飛ばされた。
「主様、魔法は状況を考えて、発してください」
エリスは剣で爆風を防ぎながら、言う。それにマリクは「すまない」と小声で謝る。
壁に吹き飛ばされた一番偉い男が髪の毛をチリチリに焦がしながら、立ち上がる。
「な、なんだ・・・お前等?」
かなり驚いた様子で彼は二人を凝視するだけだった。
「武器を捨てなさい。殺しますよ」
エリスは剣を構えて、そう恫喝する。事実、二人が斬られ、呻き声を上げている時点で彼女の本気が解るので、誰も抵抗など出来ないと思い、短剣をその場に投げ捨てた。
「私は家を探しています。安い物件を出しなさい」
エリスは剣先を偉い男に向ける。
「わかったよ。どうでも良いようなボロ家が郊外にある。それで良ければ、ただでくれてやる」
「なるほど・・・あと、魔族に密告したら・・・皆殺しにしますよ」
エリスは笑いながら倒れている腕を斬られて、呻いている男の首を斬り落とした。
その光景に残された男達は怯えた。
いかに悪党とは言え、平然と人を殺す程、覚悟があるわけじゃない。目の前でそれをやられれば、ただ、怯えるしかない。エリスはそれを知っているので、彼らに恐怖を植え付けたのだ。
二人は彼等から権利書を受け取り、教えられた場所に向かった。
それは市街地から少し離れた場所に建つ古びた屋敷・・・城だった。
「古城ですね」
長らく放置されていただろう城は全体に蔦が絡まり、薄気味悪かった。
「古城に縁でもあるのか?」
マリクは呆れたように呟く。すでに朽ちて失われた正門を通り抜け、城内に入ると、大木と化した庭木と伸び放題の草花の庭園が現れた。
「昔は綺麗な庭園であったのしょうね」
エリスはそれらを見ながら、石造りの天守へと向かった。
「造りからして、建てられたのは千年ぐらい前かな」
無駄に知識のあるマリクは荒々しい石細工などを見て、建てられた時代を読み取る。
「掃除が大変そうですが・・・とりあえず、住めそうですね」
エリスは建物の中を見て、安心したようにマリクに報告をした。
「雨風が凌げれば、良いよ。まぁ、たった二人で住むには広すぎるが・・・」
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