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フレアとドラゴン

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 フレアは火の粉を撒き散らし、洞窟内を飛び回る。
 ドラゴンは突然、現れたフレアをただ凝視している。
 圧倒的な力を持つとされるドラゴンでも、聖獣を前に怯えているようだ。
 マリクはその様子に勝機を感じた。
 「フレア。ドラゴンは怯えている。一気に勝負を掛ける。俺の炎をくれてやる」
 マリクは更に魔法の炎をフレアに放つ。
 「えぇ感じだ。やったるでぇ」
 炎を吸収したフレアは更に巨大化して、ドラゴンと遜色の無い大きさになる。
 エリスは大剣を担いで、ドラゴンの前から退がってくる。
 ドラゴンはフレアを威嚇するように頭や尾を振るう。
 だが、次の瞬間、フレアの放った炎がドラゴンを包む。
 燃え上がる炎に包まれたドラゴンは暴れ回る。
 エリスは暴れ回るドラゴンがマリクの方に来ないように大剣を構えて、待ち受ける。
 フレアの炎は離れた場所に居るマリク達にも熱さが感じられる程であった。
 暴れ回るドラゴンはやがて、力を失ったように倒れ込む。
 「ははは。同じ炎を操るにしても、こんな雑魚なドラゴンなんぞ。相手にならん」
 フレアの大きさは元の鳥程に縮んでいた。
 それを見ていたマリクは小瓶の蓋を開く。
 「フレア、そろそろ戻れ」
 「はいでっか」
 フレアは炎を吐くのを止めて、小瓶へと戻った。
 黒焦げになったドラゴンは虫の息だった。
 エリスは大剣を上段に構える。
 「トドメを刺します」
 「そうしてやってくれ」
 黒焦げになったドラゴンの鱗はすでに魔力による防御力を失っている。エリスの刃は鱗を破壊して、肉を断った。
 ドラゴンは断末魔を上げて、絶命した。
 「フレアのお陰で助かったな」
 マリクは小瓶の中の炎を見ながら、感謝する。
 「当たり前やろ。あんな雑魚相手に何をしてるん。もっと魔法を鍛えないとあかん。それとエリスのお嬢ちゃんが持っている剣もただの鉄で出来た剣だから、魔力で強化している魔獣だと刃が立たないんや」
 「確かにそうかも。剣士は魔法に対して弱い。だけど、魔法が付与された武器を使えば、対等以上に渡り合えるって聞いている」
 「そうや。人間だけや。魔力を道具に付与する術を完成させたのは」
 悪魔もエルフも人間よりも魔法に長けた種族は多い。だが、どれも道具などに魔法を掛けようとしない。
 魔獣は自らを守るために鱗や毛などに魔法を掛ける。ドラゴンの鱗も同じだ。だから並の剣では切れないし、普通の炎でも焦げない。フレアの炎のように魔法の掛かった炎だから燃やし尽くせたのだ。
 もし、今後、強力な魔獣に遭遇するなら、剣に魔法を付与するのは必須であった。
 「魔法を付与した剣ってあまり見かけないけど、凄く高い印象だったような」
 マリクの記憶通り、一般的に魔法を付与された剣は希少だ。なぜなら、剣のような無機物に魔法を付与するのはかなり難しい。一時的だとしてもかなりの魔力を要する。それが半永久的、または永久的に付与し続けるとなれば、膨大な魔力と複雑な工程が必要とされる。
 伝説の聖剣などは数年を掛けて、多くの魔術師が魔法を注ぎ、剣が鍛えられたと言われる。それだけでも価値は半端ない事であり、没落貴族のマリクが支払える額では決してない事は明らかだった。
 
 「主様、解体を始めます」
 エリスはドラゴンの血抜きをする為、彼方此方に刃を入れていた。血抜きが終わった頃に解体を始める。
 ドラゴンは素材の宝庫である。今回は鱗はフレアの炎で黒焦げになったので、価値を失ったが、牙や骨は魔力を帯びており、鋼鉄より硬い素材として、珍重されている。尚且つ、肉は滋養強壮、魔力増大などの効果もさることながら、旨さにも定評がある。
 残念なことはマリクとエリスだけでは運べる量に問題があり、せいぜい、全体の3分の1ぐらいしか運べず、肉に関しては大半を腐らせてしまう事になる。
 それでも二人は何とかドラゴンを解体して、帰宅した。
 ドラゴンの匂いは魔獣共を怯えさせる。
 帰路で魔獣に襲われる事は無かった。昔から魔獣除けとして、ドラゴンの鱗がある。偽物も多いので、アテにはならない代物だが、こうして、肉を運んでいるだけで、一切、魔獣が寄って来ないのを実感すると、マリクは良い物を手に入れたと思った。

 家に戻り、エリスはすぐに肉を保存用に塩を塗し、今、食べる分を調理し始める。
 その間にマリクは牙や骨の一部を自分用と売却用に振り分ける。
 功労のフレアには高級な油を与えられ、嬉しそうにそれを啜る。
 二人と一匹はボロボロになったが、それでもドラゴンを倒した事で意気揚々であった。
 
 
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