メイド、冒険者になる。

エムポチ

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強敵

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 洞窟が充分に冷えたと思った二人は松明に火を灯して、洞窟内へと入った。
 彼方此方にゴブリンの死体が転がっている。ゴブリンを殺したことを証明する為にゴブリンの腹を裂き、魔獣だけが持つ魔石と呼ばれる石を取り出す。
 因みにゴブリンの解体はエリスの役目である。マリクはこの手の作業が苦手だった。
 エリスは大剣の切っ先をゴブリンの腹に刺し、器用に切っ先をグリグリして、魔石だけ取り出す。ゴブリンの緑の血に塗れた魔石がコロリと地面に転がる。それをマリクが拾う。
 ゴブリンの死体だけでも30体以上あった。洞窟の奥には人間の死体も多かあった。それがマリクの魔法で死んだのか、そもそも死んでいたのか分からない。それらはゴブリンが子を産ませるために拉致してきた女達だ。
 「人の死体は丁重に葬ろう。ゴブリンの死体は適当に焼いて、腐らないようにしないと」
 魔石を取り終えたゴブリンの死体と人の死体を洞窟の外へと移し、ゴブリンの死体を焼いている間にエリスが墓穴を掘った。
 全てが終わった頃にはしっかりと夜となっていたので、マリクは野営をすることに決めた。
 まだ、ゴブリンの死体を焼いた臭いが漂う場所での野営はさすがに問題があったので、少し離れた場所に彼らは簡単なテントを張る。持ってきた干し肉や保存食を食べつつ、初仕事にマリクは満足気であった。
 食事も終わり、交代で見張りをして、寝る事にした。
 森での野営は危険であった。
 狼や熊などの獣もそうだが、魔獣も夜を好む。
 夜は山賊だって無暗に歩き回らないのが普通だ。
 なるべく、匂いは消す。食べ物の匂いは奴らを呼び寄せるからだ。
 エリスは眠るマリクの隣で大剣を携えて、座っていた。
 即座に対応するには立っているのが良いが、長時間、立っているのも体力を消耗させる。夜明けが来れば、今度は街まで歩く必要があるので、なるべく、消耗を避けたい。
 エリスは耳を澄ます。焚火の明りが照らすのはせいぜい周囲15メートル程度。それより先は闇だ。
 15メートルと言う距離は獣の足ならば、一瞬で飛び掛かられる。一斉に掛かられれば、エリスと言えども危険であった。その為、なるべく、早い段階で敵の接近を察知する必要があった。
 まもなく、マリクと交代する時間が迫っていた。
 その時、微かに草を掠る音がした。それは風で草が靡いたのとは違う。
 エリスは立ち上がり大剣を構えた。
 「マリク様、起きてください。襲撃です!」
 エリスがそう叫んだ時、闇が動いた。
 それが闇から姿を現したと思った瞬間、エリスの大剣がそれに振り下ろされる。
 激しい音が響き渡った。
 エリスはまるで鉄の塊を殴ったような衝撃を腕に感じる。
 ぐうあああああ!
  雄たけびが闇に響き渡る。
 マリクは慌てて、目を覚まし、杖を手にする。
 そして、見上げた時、見たのは。
 「ど・・・ドラゴン?」
 焚火の明りに照らし出されたのは真っ赤な鱗を持つドラゴンであった。
 ドラゴン種族はいくつか存在するが、普通の人が滅多にお目に掛かれない。
 そして、その力故に万が一、遭遇すれば、死ぬしかないと言われている。
 そんな希少な魔獣が目の前で、咆哮しているのだ。
 「マリク様、魔法を。こいつ、ゴブリンを焼いた匂いに誘われてきたに違いありません」
 エリスは大剣を更に振るい、ドラゴンの足に叩きつける。
 ドラゴンはその一撃に痛みを感じているのか、騒ぐように雄たけびを上げる。
 「ドラゴンに効く魔法なんて知らないけど・・・」
 ドラゴンと戦う事を仕事にするドラゴンスレイヤーが居る事をマリクは知っている。だが、それ以外においてはドラゴンと戦うことさえ考えないのが普通であった。故にドラゴンに有効な攻撃方法や魔法なんてのは知れ渡ってはいない。
 マリクは魔法で火球を産み出し、ドラゴンに放った。
 ドラゴンに当たった火球は激しく燃え上がる。その炎にドラゴンは驚きはしたが、大したダメージを感じていない様子だった。
 「くそっ・・・効かない!」
 マリクは悔しそうにだが、次の魔法を口にする。
 その間にもエリスは大剣を振るい、足、体、尾へと叩き込む。
 だが、それもドラゴンの皮膚には傷一つ、つかない。
 むしろ、まるで鉄の塊に打ち込んでいるような感じで、エリスの手は痺れてきた。
 「マリク様・・・私はそろそろ限界です!」
 エリスの弱音にマリクも焦っていた。
 「剣も魔法も・・・はっ!」
 マリクは水筒の蓋を取った。
 「フレア!出てこい!」
 その時、水筒の口から炎が飛び出した。
 「ようやく、俺の出番かぁああああ!」
 炎は闇夜を照らし、鳥の形になった。
 ドラゴンはそれを凝視した。
 大空を舞う火の鳥。
 「へへへ・・・ドラゴン・・・それも雑魚だな」
 フレアは笑みを浮かべて、ドラゴンを見下ろした。
 「頼むぞ。フレア!俺の炎をくれてやる」
 マリクは炎をフレアに放つ。その炎を吸収したフレアは更に巨大になる。
 「良い感じだ。おい。ドラゴン。今から相手してやるからな」
 巨大になったフレアは自らを大きく見せる様に翼を広げ、ドラゴンの前に立ちはだかった。
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