10 / 12
強敵
しおりを挟む
洞窟が充分に冷えたと思った二人は松明に火を灯して、洞窟内へと入った。
彼方此方にゴブリンの死体が転がっている。ゴブリンを殺したことを証明する為にゴブリンの腹を裂き、魔獣だけが持つ魔石と呼ばれる石を取り出す。
因みにゴブリンの解体はエリスの役目である。マリクはこの手の作業が苦手だった。
エリスは大剣の切っ先をゴブリンの腹に刺し、器用に切っ先をグリグリして、魔石だけ取り出す。ゴブリンの緑の血に塗れた魔石がコロリと地面に転がる。それをマリクが拾う。
ゴブリンの死体だけでも30体以上あった。洞窟の奥には人間の死体も多かあった。それがマリクの魔法で死んだのか、そもそも死んでいたのか分からない。それらはゴブリンが子を産ませるために拉致してきた女達だ。
「人の死体は丁重に葬ろう。ゴブリンの死体は適当に焼いて、腐らないようにしないと」
魔石を取り終えたゴブリンの死体と人の死体を洞窟の外へと移し、ゴブリンの死体を焼いている間にエリスが墓穴を掘った。
全てが終わった頃にはしっかりと夜となっていたので、マリクは野営をすることに決めた。
まだ、ゴブリンの死体を焼いた臭いが漂う場所での野営はさすがに問題があったので、少し離れた場所に彼らは簡単なテントを張る。持ってきた干し肉や保存食を食べつつ、初仕事にマリクは満足気であった。
食事も終わり、交代で見張りをして、寝る事にした。
森での野営は危険であった。
狼や熊などの獣もそうだが、魔獣も夜を好む。
夜は山賊だって無暗に歩き回らないのが普通だ。
なるべく、匂いは消す。食べ物の匂いは奴らを呼び寄せるからだ。
エリスは眠るマリクの隣で大剣を携えて、座っていた。
即座に対応するには立っているのが良いが、長時間、立っているのも体力を消耗させる。夜明けが来れば、今度は街まで歩く必要があるので、なるべく、消耗を避けたい。
エリスは耳を澄ます。焚火の明りが照らすのはせいぜい周囲15メートル程度。それより先は闇だ。
15メートルと言う距離は獣の足ならば、一瞬で飛び掛かられる。一斉に掛かられれば、エリスと言えども危険であった。その為、なるべく、早い段階で敵の接近を察知する必要があった。
まもなく、マリクと交代する時間が迫っていた。
その時、微かに草を掠る音がした。それは風で草が靡いたのとは違う。
エリスは立ち上がり大剣を構えた。
「マリク様、起きてください。襲撃です!」
エリスがそう叫んだ時、闇が動いた。
それが闇から姿を現したと思った瞬間、エリスの大剣がそれに振り下ろされる。
激しい音が響き渡った。
エリスはまるで鉄の塊を殴ったような衝撃を腕に感じる。
ぐうあああああ!
雄たけびが闇に響き渡る。
マリクは慌てて、目を覚まし、杖を手にする。
そして、見上げた時、見たのは。
「ど・・・ドラゴン?」
焚火の明りに照らし出されたのは真っ赤な鱗を持つドラゴンであった。
ドラゴン種族はいくつか存在するが、普通の人が滅多にお目に掛かれない。
そして、その力故に万が一、遭遇すれば、死ぬしかないと言われている。
そんな希少な魔獣が目の前で、咆哮しているのだ。
「マリク様、魔法を。こいつ、ゴブリンを焼いた匂いに誘われてきたに違いありません」
エリスは大剣を更に振るい、ドラゴンの足に叩きつける。
ドラゴンはその一撃に痛みを感じているのか、騒ぐように雄たけびを上げる。
「ドラゴンに効く魔法なんて知らないけど・・・」
ドラゴンと戦う事を仕事にするドラゴンスレイヤーが居る事をマリクは知っている。だが、それ以外においてはドラゴンと戦うことさえ考えないのが普通であった。故にドラゴンに有効な攻撃方法や魔法なんてのは知れ渡ってはいない。
マリクは魔法で火球を産み出し、ドラゴンに放った。
ドラゴンに当たった火球は激しく燃え上がる。その炎にドラゴンは驚きはしたが、大したダメージを感じていない様子だった。
「くそっ・・・効かない!」
マリクは悔しそうにだが、次の魔法を口にする。
その間にもエリスは大剣を振るい、足、体、尾へと叩き込む。
だが、それもドラゴンの皮膚には傷一つ、つかない。
むしろ、まるで鉄の塊に打ち込んでいるような感じで、エリスの手は痺れてきた。
「マリク様・・・私はそろそろ限界です!」
エリスの弱音にマリクも焦っていた。
「剣も魔法も・・・はっ!」
マリクは水筒の蓋を取った。
「フレア!出てこい!」
その時、水筒の口から炎が飛び出した。
「ようやく、俺の出番かぁああああ!」
炎は闇夜を照らし、鳥の形になった。
ドラゴンはそれを凝視した。
大空を舞う火の鳥。
「へへへ・・・ドラゴン・・・それも雑魚だな」
フレアは笑みを浮かべて、ドラゴンを見下ろした。
「頼むぞ。フレア!俺の炎をくれてやる」
マリクは炎をフレアに放つ。その炎を吸収したフレアは更に巨大になる。
「良い感じだ。おい。ドラゴン。今から相手してやるからな」
巨大になったフレアは自らを大きく見せる様に翼を広げ、ドラゴンの前に立ちはだかった。
彼方此方にゴブリンの死体が転がっている。ゴブリンを殺したことを証明する為にゴブリンの腹を裂き、魔獣だけが持つ魔石と呼ばれる石を取り出す。
因みにゴブリンの解体はエリスの役目である。マリクはこの手の作業が苦手だった。
エリスは大剣の切っ先をゴブリンの腹に刺し、器用に切っ先をグリグリして、魔石だけ取り出す。ゴブリンの緑の血に塗れた魔石がコロリと地面に転がる。それをマリクが拾う。
ゴブリンの死体だけでも30体以上あった。洞窟の奥には人間の死体も多かあった。それがマリクの魔法で死んだのか、そもそも死んでいたのか分からない。それらはゴブリンが子を産ませるために拉致してきた女達だ。
「人の死体は丁重に葬ろう。ゴブリンの死体は適当に焼いて、腐らないようにしないと」
魔石を取り終えたゴブリンの死体と人の死体を洞窟の外へと移し、ゴブリンの死体を焼いている間にエリスが墓穴を掘った。
全てが終わった頃にはしっかりと夜となっていたので、マリクは野営をすることに決めた。
まだ、ゴブリンの死体を焼いた臭いが漂う場所での野営はさすがに問題があったので、少し離れた場所に彼らは簡単なテントを張る。持ってきた干し肉や保存食を食べつつ、初仕事にマリクは満足気であった。
食事も終わり、交代で見張りをして、寝る事にした。
森での野営は危険であった。
狼や熊などの獣もそうだが、魔獣も夜を好む。
夜は山賊だって無暗に歩き回らないのが普通だ。
なるべく、匂いは消す。食べ物の匂いは奴らを呼び寄せるからだ。
エリスは眠るマリクの隣で大剣を携えて、座っていた。
即座に対応するには立っているのが良いが、長時間、立っているのも体力を消耗させる。夜明けが来れば、今度は街まで歩く必要があるので、なるべく、消耗を避けたい。
エリスは耳を澄ます。焚火の明りが照らすのはせいぜい周囲15メートル程度。それより先は闇だ。
15メートルと言う距離は獣の足ならば、一瞬で飛び掛かられる。一斉に掛かられれば、エリスと言えども危険であった。その為、なるべく、早い段階で敵の接近を察知する必要があった。
まもなく、マリクと交代する時間が迫っていた。
その時、微かに草を掠る音がした。それは風で草が靡いたのとは違う。
エリスは立ち上がり大剣を構えた。
「マリク様、起きてください。襲撃です!」
エリスがそう叫んだ時、闇が動いた。
それが闇から姿を現したと思った瞬間、エリスの大剣がそれに振り下ろされる。
激しい音が響き渡った。
エリスはまるで鉄の塊を殴ったような衝撃を腕に感じる。
ぐうあああああ!
雄たけびが闇に響き渡る。
マリクは慌てて、目を覚まし、杖を手にする。
そして、見上げた時、見たのは。
「ど・・・ドラゴン?」
焚火の明りに照らし出されたのは真っ赤な鱗を持つドラゴンであった。
ドラゴン種族はいくつか存在するが、普通の人が滅多にお目に掛かれない。
そして、その力故に万が一、遭遇すれば、死ぬしかないと言われている。
そんな希少な魔獣が目の前で、咆哮しているのだ。
「マリク様、魔法を。こいつ、ゴブリンを焼いた匂いに誘われてきたに違いありません」
エリスは大剣を更に振るい、ドラゴンの足に叩きつける。
ドラゴンはその一撃に痛みを感じているのか、騒ぐように雄たけびを上げる。
「ドラゴンに効く魔法なんて知らないけど・・・」
ドラゴンと戦う事を仕事にするドラゴンスレイヤーが居る事をマリクは知っている。だが、それ以外においてはドラゴンと戦うことさえ考えないのが普通であった。故にドラゴンに有効な攻撃方法や魔法なんてのは知れ渡ってはいない。
マリクは魔法で火球を産み出し、ドラゴンに放った。
ドラゴンに当たった火球は激しく燃え上がる。その炎にドラゴンは驚きはしたが、大したダメージを感じていない様子だった。
「くそっ・・・効かない!」
マリクは悔しそうにだが、次の魔法を口にする。
その間にもエリスは大剣を振るい、足、体、尾へと叩き込む。
だが、それもドラゴンの皮膚には傷一つ、つかない。
むしろ、まるで鉄の塊に打ち込んでいるような感じで、エリスの手は痺れてきた。
「マリク様・・・私はそろそろ限界です!」
エリスの弱音にマリクも焦っていた。
「剣も魔法も・・・はっ!」
マリクは水筒の蓋を取った。
「フレア!出てこい!」
その時、水筒の口から炎が飛び出した。
「ようやく、俺の出番かぁああああ!」
炎は闇夜を照らし、鳥の形になった。
ドラゴンはそれを凝視した。
大空を舞う火の鳥。
「へへへ・・・ドラゴン・・・それも雑魚だな」
フレアは笑みを浮かべて、ドラゴンを見下ろした。
「頼むぞ。フレア!俺の炎をくれてやる」
マリクは炎をフレアに放つ。その炎を吸収したフレアは更に巨大になる。
「良い感じだ。おい。ドラゴン。今から相手してやるからな」
巨大になったフレアは自らを大きく見せる様に翼を広げ、ドラゴンの前に立ちはだかった。
0
あなたにおすすめの小説
主人公の恋敵として夫に処刑される王妃として転生した私は夫になる男との結婚を阻止します
白雪の雫
ファンタジー
突然ですが質問です。
あなたは【真実の愛】を信じますか?
そう聞かれたら私は『いいえ!』『No!』と答える。
だって・・・そうでしょ?
ジュリアーノ王太子の(名目上の)父親である若かりし頃の陛下曰く「私と彼女は真実の愛で結ばれている」という何が何だか訳の分からない理屈で、婚約者だった大臣の姫ではなく平民の女を妃にしたのよ!?
それだけではない。
何と平民から王妃になった女は庭師と不倫して不義の子を儲け、その不義の子ことジュリアーノは陛下が側室にも成れない身分の低い女が産んだ息子のユーリアを後宮に入れて妃のように扱っているのよーーーっ!!!
私とジュリアーノの結婚は王太子の後見になって欲しいと陛下から土下座をされてまで請われたもの。
それなのに・・・ジュリアーノは私を後宮の片隅に追いやりユーリアと毎晩「アッー!」をしている。
しかも!
ジュリアーノはユーリアと「アッー!」をするにしてもベルフィーネという存在が邪魔という理由だけで、正式な王太子妃である私を車裂きの刑にしやがるのよ!!!
マジかーーーっ!!!
前世は腐女子であるが会社では働く女性向けの商品開発に携わっていた私は【夢色の恋人達】というBLゲームの、悪役と位置づけられている王太子妃のベルフィーネに転生していたのよーーーっ!!!
思い付きで書いたので、ガバガバ設定+矛盾がある+ご都合主義。
世界観、建築物や衣装等は古代ギリシャ・ローマ神話、古代バビロニアをベースにしたファンタジー、ベルフィーネの一人称は『私』と書いて『わたくし』です。
短編)どうぞ、勝手に滅んでください。
黑野羊
恋愛
二度も捨てられた聖女です。真実の愛を見つけたので、国は救いません。
あらすじ)
大陸中央にあるルオーゴ王国で、国を守る結界を維持してきた聖女ロザリア。
政略のため王太子と婚約していた彼女は、突如『真の聖女』が現れたとして婚約を破棄され、聖女の座を追われてしまう。さらに、代わりに婚姻しろと命じられた聖騎士からも拒絶され、実家にも見捨てられたロザリアは、『最果ての修道院』へと追放された。
けれど彼女はそこで、地位や栄光、贅沢などとはほど遠い、無条件に寄り添ってくれる『真実の愛』と穏やかな日々を手にいれる。
やがて聖女を失った王国は、崩壊へ向かっていき――。
ーーー
※カクヨム、なろうにも掲載しています
妻からの手紙~18年の後悔を添えて~
Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。
妻が死んで18年目の今日。
息子の誕生日。
「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」
息子は…17年前に死んだ。
手紙はもう一通あった。
俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。
------------------------------
「貧相な小娘」と罵った第一王子へ。番(つがい)は貴方ではなく、国王陛下(お父様)でした
しえろ あい
恋愛
「お父様、わたくし、あの方と目が合った瞬間、分かってしまったのです」
十六歳のデビュタントの夜、ルーセント侯爵令嬢フェリシアを待っていたのは、残酷な罵倒だった。第一王子カシウスは、可憐な白いドレスを纏った彼女を「貧相な小娘」と呼び、己の番(つがい)であることを真っ向から否定する。
会場に響く冷笑と、愛用の刺繍に込めた自信さえ打ち砕くような屈辱。しかし、絶望の淵に立たされた彼女を見つめていたのは、王子ではなく、圧倒的な威厳を放つ「ある男」だった。
魂を焦がすような熱い視線が重なり、静まり返る謁見の間。この出会いが、王室を揺るがす大事件の幕開けになるとは、まだ誰も知らない。自身の価値を否定された少女が、真実の愛によって世界で最も幸福な王妃へと駆け上がる、逆転溺愛ストーリー。
※小説家になろう様にも投稿しています※
三十年後に届いた白い手紙
RyuChoukan
ファンタジー
三十年前、帝国は一人の少年を裏切り者として処刑した。
彼は最後まで、何も語らなかった。
その罪の真相を知る者は、ただ一人の女性だけだった。
戴冠舞踏会の夜。
公爵令嬢は、一通の白い手紙を手に、皇帝の前に立つ。
それは復讐でも、告発でもない。
三十年間、辺境の郵便局で待ち続けられていた、
「渡されなかった約束」のための手紙だった。
沈黙のまま命を捨てた男と、
三十年、ただ待ち続けた女。
そして、すべてを知った上で扉を開く、次の世代。
これは、
遅れて届いた手紙が、
人生と運命を静かに書き換えていく物語。
「『お前に書く手紙などない』と言った婚約者へ、私は7年間手紙を書き続けた——ただし、届け先は別の人でした」
歩人
ファンタジー
辺境伯令嬢リゼットは、婚約者に7年間手紙を書き続けた。返事は一度もなかった。
「お前に書く手紙などない。顔も覚えていない」——婚約破棄。しかしリゼットは
泣かなかった。手紙の本当の届け先は、最初から別にあったから。前世の情報分析
能力で辺境の異変を読み解き、暗号として織り込んだ7年分の手紙。それを受け取り
続けていたのは第一王子。リゼットは誰にも知られず、王国を守っていた。
婚約破棄の翌朝、王子からの手紙が届く。「7年間、ありがとう。迎えに行く」
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる