少女はドラゴンハンターになった。

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ゴブリン駆除

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 愛理の隣に飛び乗って来たのはハンマーを手にした体長1メートル弱の小柄な体躯をした緑色の肌をしたゴブリンだった。小学生のような体躯の割りに老けた顔立ち、口からはみ出るぐらいの牙を生やした口を大きく開き、一切の毛の無い頭の中で黄色い瞳がギラギラと愛理を見つめる。振り上げられたハンマーが愛理の頭に振り下ろされる前に彼女は腰から9ミリ自動拳銃(シグP228)を抜いて、ゴブリンの顔面の間近で発砲した。
 うぎゃ
 短い悲鳴と共にゴブリンの顔面が撃ち抜かれ、後頭部が破裂したゴブリンが運転席の天井から落ちていく。愛理が見上げるとビルの窓から飛び降りようとしているゴブリンの群れを見る。高さは数十メートルあるにも関わらず、奴等は怯える様子も無く、飛び降りてくるのだ。愛理は拳銃を彼らに向けて発砲する。
 飛び降りたゴブリンは銃弾を受けて、そのまま、地面に落下していく。だが、それでも何十匹ものゴブリンが飛び降りて来た。愛理の拳銃は弾を撃ち尽くし、スライドがオープン状態になる。
 「愛理さん!」
 アミルが自動小銃を車内から上げる。愛理はそれを取り、スライドがオープンした拳銃を代わりに車内に落とす。
 「狙っている暇なんてない」
 彼女はとにかく、自動小銃を撃ち捲る。だが、その間にもトラックに乗り移ったゴブリンたちは運転席を襲おうとしていた。ゴブリンは斧やハンマーを振るうだけじゃない。石礫を投げ付ける。愛理の被ったヘルメットに激しい衝撃が走る。ヘルメットを被っていて助かったと愛理は心底思った。

 トラックの一台が突如、車列から外れて、路肩に衝突する。派手な衝突音が銃声と爆音の間に響いた。その車が邪魔になる形で車列が停止した。
 「一台、食われた!」
 愛理は運転席に向かってそう叫びながら、飛び掛って来たゴブリンを自動小銃のストックで殴り飛ばした。
 「アミル、ここを死守して!私は荷台に上がるから」
 愛理は荷台の上に飛び乗る。そこにはゴブリンが5匹程、居た。
 「邪魔だぁああああ!」
 愛理は荷台の上で座射した。
 撃たれたゴブリンが荷台から落ちていく。それでも運動神経の高いゴブリンは荷台の上を気にする事なく、軽妙に愛理へと迫る。彼女が撃ち尽くした時、2匹のゴブリンが手にしたハンマーや鉄パイプを紗季へと振り下ろそうとした。
 「舐めるなっ!」
 愛理は立ち上がり様にハンマーを持ったゴブリンの顔面に銃のストックを打ち付ける。派手に吹き飛ぶゴブリン。しかし、間髪無く、鉄パイプが振り下ろされた。それを銃で受け止める。
 ガチンと激しい音が鳴り響く。
 「いってぇえええ!」
 手に衝撃が走り、愛理は苦痛に顔を歪ませる。だが、それに負ける事なく、彼女は目の前のゴブリンの隙だらだけの腹に前蹴りを入れる。ゴブリンはゴロゴロと荷台の上を転がっていく。
 その間にもシャルナは運転席の天井で短機関銃を撃ち捲っている。あまり命中率が良いとは言えないが、絶え間ない銃撃は敵を近付けさせない程度に役立っている。
 「ぶっ殺す」
 愛理は空弾倉を落とし、予備弾倉を銃に叩き込む。その間に転がったゴブリンが立ち上がる。転がった拍子に鉄パイプを失ったが、それでも闘志を失っておらず、愛理へと飛び掛って来た。その顔面に愛理は銃を突き付ける。銃口が噛みつこうとしたのか、大きく開かれたゴブリンの口に突き刺さる。
 銃声と共にゴブリンの頭が破裂した。
 「汚ねぇな」
 紗季は飛び散ったゴブリンの血肉を無視して、別のゴブリンを狙い撃つ。
 
 20分程度の戦闘だった。
 ゴブリンは形勢が不利になった事に気付いたのか一斉に逃げ出し、姿を消した。ハンター達が周囲を警戒した。そして、周囲にゴブリンが居ない事を確認した。
 車列を外れて、大破したトラックの救出が始まる。運転席は大きく壊れ、搭乗員はゴブリンに殺されたようだった。トラックも自走させる事は無理だと判断され、その場に放置される事が決定した。
 荷物は一部を別のトラックに分けて載せる。愛理はその間、ゴブリンが再び、攻めて来ないように他のハンターと共に見張りを務める。
 ゴブリンの死体が彼方此方に転がっている。無数とも言えるぐらいの数だ。それでもゴブリンの繁殖力からすれば、大した数では無いのだろう。
 田中も驚いていた。
 「こんな数のゴブリンは初めてだぜ。自衛隊に頼んで、駆除して貰わないとな」
 人の済まなくなった場所にはこうして、魔獣が繁殖している事がある。それは人間の生活圏を脅かす事になる。その為、自衛隊は駆除を日々、行っている。それが人間側にすると大きな負担でもあった。
 愛理はゴブリンの死体の山を見ながら、僅かに吐き気を催す。これまで多くの魔獣を狩って来た。確かに生きる為である。だが、その多くはドラゴンであったり、狼や熊などに似通った獲物であった。こうして、人に近い形をした魔獣を殺したのは初めてだった。
 「愛理さん、大丈夫ですか?」
 アミルが心配そうに尋ねる。愛理は少し笑顔を見せた。
 「大丈夫よ。ただ・・・なんか、人を撃った感じがしてね」
 「人ですか・・・私達からすれば、確かに意思疎通は出来ますが、あれはただの害獣ですよ。殺して当然です」
 アミルは当然と言わんばかりに身体が千切れたゴブリンの頭を蹴り飛ばす。
 嫌われた種族とはこんな扱いなんだと愛理は思った。
 そして、人間側の3人の遺体が遺体袋に納められる。
 最初から犠牲者が出る事は予想されていた。時に全滅する事さえある。それだけ危険を冒してでも荷を運ぶ事は社会を維持する為には必要な事だった。
 改めて、車列が整えられ、出発した。
 あと少しで神奈川県に入れる所まで来ていた。
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