少女はドラゴンハンターになった。

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海龍

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 多くの貨物船が行き交う港。
 愛理達は潮風に当たりながら、その光景を眺める。
 「潮風が気持ちいい」
 愛理は笑いながらはしゃぐ。その横でアミルは嫌そうにしている。
 「そうですかぁ?何だか、ベトベトします」
 「変な表現をしないでよ。エルフは海が嫌いなの?」
 「森の中しか生活してません。あまり海に行った事のある同族って聞きませんねぇ」
 「あっそう・・・しかし、海外との交易の中心ってだけあるわね」
 埠頭を歩きながら、その先端まで進んだ時、愛理に声が掛けられた。
 「おい、そこのガキ。ここは危険だ。街に戻れ」
 愛理が声の主を探して、見上げると、停泊していた護衛艦の舳先に女性士官が立っていた。
 「危険って、人をガキ扱いしないでくれる?海に落ちたりしないわよ」
 愛理は嫌そうに答える。
 「馬鹿。最近、海龍がここいらに出るようになったんだ。危ないから海に近付かないようにしている」
 「海龍?海のドラゴンって事?」
 「そうだよ。海の中を動き回るドラゴンだ。厄介な奴でね」
 「そんなのが出て来たら、私が一撃で仕留めてやるわよ」
 愛理は担いだ銃を見せつけ、笑う。
 「そうかい。なら、良いけど、海龍は水を自在に扱うからねぇ。吹き飛ばされて死んでもしらんよ」
 女性士官はそう言って、姿を消した。
 「愛理さん、海龍って怖そうです。街に戻りましょう」
 アミルが不安そうに言う。
 「嫌よ。こうなったら、その海龍って奴を一度、拝んでやりたくなったわ」
 愛理は埠頭の先で仁王立ちになる。そんな彼女に女性士官が笑いながら言う。
 「やめておけ。こっちは海龍に護衛艦が食われてるんだ」
 
 結局、海龍が現れる事なく、二人は街に戻る。
 「シュウマイ弁当が夕飯なのか・・・」
 愛理は安宿に用意されていた弁当を見て溜息をつく。
 「仕方がないですよ。中華街は意外と高かったですし」
 アミルも残念そうにシュウマイ弁当を食べる。
 「それね。あんなに高いとは思わなかった。どうなってるのかしらね」
 「これだけ物流があると金持ちも多いんでしょうか?」
 「だろうね。まぁ・・・名物のシュウマイ弁当が食べられただけでも良しか」
 二人はそのまま、寝る事にした。
 夜の帳が下りる頃、汽笛が遠くで響き渡った。
 平穏な夜だった。
 ふたりは疲れていたのか、ぐっすりと眠り込んでいた。
 だが、彼女達を叩き起こすように轟音が鳴り響いた。
 二人は跳び起きた。
 次々に鳴り響く音に愛理は即座に手元に置いた銃を手に取る。
 「砲声・・・魔獣の襲撃でも受けたの?」
 窓から外を見る。海の方で光が見えた。それは砲火だ。
 「海の方で・・・護衛艦が主砲を撃っている?」
 アミルも不安そうに見た。
 「何が起きているんですかね?」
 「知らないわよ。ただ、主砲を撃つなんて普通じゃないわ」
 護衛艦の搭載する主砲は75センチ以上の口径を持つ大砲である。一発で家だって吹き飛ぶ威力の砲弾を撃ち込む相手など魔獣だとすれば、数少ない。
 「相手は・・・海龍ですかね?」
 アミルの問い掛けに愛理は黙って頷く。
 「とにかく、逃げられる準備。着替えて荷物を持って、トラックの所に向かうよ」
 「わかった」
 二人はすぐに着替えと荷物を纏め、宿を出た。
 砲声は続き、街中も騒然としていた。逃げ惑う人々の間から愛理達は砲声の方を眺める。
 自衛隊の車両が港に向かっている。その中には戦車もあった。
 愛理はそれを見て、かなりまずいことが沖合で起きていると感じた。
 アミルが不安そうに愛理に尋ねる。
 「愛理さん、どうしますか?」
 「海龍ってのがどんなのか解らないけど・・・護衛艦と戦える程だからねぇ。まずい相手には違いない。けど・・・街から出てしまうと、商隊と離れてしまって、置いて行かれるかもしれないから、まずは合流するしかないわね」
 愛理達は混乱する人々を掻き分けつつ、トラックの駐車されている場所へと向かった。
 彼女達が到着した頃にはトラックは殆どが避難をしていて、そこには無かった。
 「まずかったわね。私達だけ離れた場所の宿だったのが仇になったわ」
 そこにはすでに退避してしまったのか、トラックの姿は無かった。
 「愛理さん、どうしますか?」
 「多分、騒ぎが収まれば、戻ってくるだろうから・・・私達も逃げた方が良いわね」
 愛理は人々が逃げる方向へと逃げ出す事にした。だが、その時、突如として、街が切り裂かれた。一瞬にして、散り散りとなる建物と人々。
 「なに?」
 愛理はアミルを庇いながら、建物の影に飛び込む。
 そして、状況を窺う為に冷静に暗闇を眺める。すると海側から、何かの光線のような物が伸びて、街を破壊している。
 「愛理さん、何ですか?あれは何ですか?」
 アミルが怯えながら尋ねる。だが、愛理にだって、それが何か解らない。だが、そんなのは大抵、竜の仕業だ。愛理はそう思って、海が見える場所へと移動する。建物の隙間から海を見ると、竜の口から光線が出ていた。護衛艦を狙っての攻撃だが、外れたのが街へと飛び込んでいるらしい。
 「光線を吐くドラゴンなんて知らないわよ」
 愛理はこのままじゃ危険だと思い、遠くに逃げるのを諦め、流れ弾の飛んでこない港の方へ向かう事にした。
 
 港に近付くと逃げ惑う人々も無く、閑散としていた。
 そして、近付いた事で解ったのはドラゴンが放っているのは光線では無く、水だった。多量の海水を強烈な水圧で噴き出しているのだ。距離が離れれば、威力は減衰するのだが、それでも建物や人を破壊する程度もあるならば、相当な威力だと想像が出来る。
 「炎を吐くドラゴンより、厄介ね」
 愛理は冷静に眺めながら、考え込む。アミルは不安そうに尋ねる。
 「あれは倒せないですよね?海に居るし」
 「そうね。大きさも海の中を考えると、普通のドラゴンの3倍はあるわよ。化け物ね」
 護衛艦はかなり破壊されているが、それでもドラゴンを倒さんと果敢に戦っていた。
 しかしながら、ロケットが攻撃の主体となった現代の護衛艦では相手が巨大怪物では攻撃にも制約が大きかった。
 76センチ砲が唸る。甲板に飛び散る大きな空薬莢。
 それは確かに海龍にダメージを与える。だが、海龍もそれに負けじとその長く巨大な体をうねらせ、護衛艦を叩く。激しい衝撃を受けながらも護衛艦は主砲と機関砲にて、ダメージを与える。その動きは少しでも距離を開けて、魚雷、またはミサイルによる攻撃を仕掛けたいのだろうが、海龍は護衛艦を逃がさぬように動き回る。小回りに長けた海龍の動きに護衛艦は翻弄されている感じだ。
 「あのままじゃ、船が沈むわよ」
 愛理は対物ライフル銃を構える。それを見たアミルが驚く。
 「大砲でも効かない相手ですよ?」
 「普通のドラゴンと同じよ。あいつらの身体って戦車の砲撃を跳ね返すんだから。だけど、全てがそんな鎧に包まれているわけじゃないのよ」
 愛理は対物ライフル銃の二脚を展開させ、銃を地面に置いた。そして、伏射に姿勢を取る。
 「アミル。風を読んで」
 アミルは慌てて、双眼鏡を眺めながら、風を読む。エルフは自然と共に生きる種族だ。風を読むのは本能的に優れている。
 「二時から強風。海龍と護衛艦の動きでかなり乱れているけど・・・概ね二時、五時、八時の順に吹ている」
 「了解」
 愛理は狙いをゆっくりと定める。全ては風の動きを含めた狙いだ。
 そして、引金が引かれた。50口径の銃弾が海龍の右目を貫く。
 「ビンゴ」
 愛理は即座に次弾を装填する。
 
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