少女はドラゴンハンターになった。

エムポチ

文字の大きさ
16 / 19

新しい仲間

しおりを挟む
 愛理とアミルは茂みを掻き分け、人影の後を追った。
 「ちっ・・・城内に逃げ込まれたか」
 愛理は名古屋城の天守の入り口に到達した。
 開け放たれた屋内は電気が切れているのだろう。真っ暗である。
 「アミル・・・ライトを用意して」
 愛理は左手にライトを持ち、9ミリ自動拳銃を持つ右手首の下に左手首を置くように構える。アミルは頭にライトを装着した。
 「あんたはすぐにライトが消せないから、襲われたらすぐに私の後ろに逃げなさい」
 愛理はそう言うと、屋内へと歩み出した。
 名古屋城の天守は戦中に焼け落ち、戦後にコンクリート造りで再建された。その為、屋内は展示施設となっており、名古屋城に関する資料などが置かれている。
 「思ったよりも荒れてないわね。まぁ、生活するにも盗むにしても価値は無いからか」
 愛理は冷静に屋内をライトで照らしながら、進む。隠れる場所は少ないので、警戒を怠らなければ、いきなり襲われる事は無さそうだった。
 上の階に上がるにはエレベーターが存在するが、さすがに電気は通っていない。彼女達は非常階段を上がり始める。
 幾つかに分かれている展示室を確認しながら、7階の展望室に上がると、愛理はいきなり発砲した。同時に矢が飛ぶ。それは愛理の場所とはまったく違う場所に飛んでいた。
 「止めろ!お前と話をしに来た!こっちはお前より力がある。これ以上やるなら、殺すぞ」
 愛理は脅しを掛ける。その為の発砲でもあったのだろう。
 僅かな間のあと、声が聞こえた。
 「お前達は何者だ?ここに何をしに来た?」
 「言っただろ?話をしに来た。私は愛理。こっちはお前と同じエルフのアミルだ」
 「エルフだと?」
 声の方にライトを照らしているとそこに人影が現れた。
 「あんたがダークエルフ?」
 「あぁ・・・そうだ。名前はペルティナ」
 「ペルティナね。ちゃんと会話が出来るじゃない」
 「私を何だと思ってるんだ・・・」
 「いや、ダークエルフはそこら辺の魔獣みたいに知能が無いとか聞いたから」
 「失礼な。確かにそんな噂はエルフ族にはあるがね」
 「噂だったんだ」
 「みたいだな。私もダークエルフになって、初めて知ったよ」
 ペルティナは軽く笑って、構えていた弓を降ろした。それを見て、愛理達も銃を降ろす。
 「まともに話が出来るダークエルフで助かった。あんたに聞きたい事があるの」
 「聞きたい事?こんな闇落ちしたエルフにか?」
 「なんで闇落ちしたのかは気になるけど、私が知りたいのはドラゴンについてよ」
 「ドラゴンか・・・そんなのそこら辺を探して回れば、いくらでも居るだろ?」
 ペルティナはつまらなそうに答える。
 「いや、そこら辺に居る奴じゃない。世界樹に関わって、この世界をこんな風にした原因のドラゴンの事」
 「あぁ・・・西の方に居た時に噂は聞いたな。神になろうとしたとかどーとか」
 「神?ドラゴンが?」
 愛理が呆れたように聞き返すと、ペルティナも苦笑いをしながら答える。
 「ドラゴンは魔獣ではあるけど、最も神に近い存在だと言われているのよ」
 「魔獣のくせに?」
 「魔獣は人が悪魔の手先だと考えたから、そう名付けただけ。魔獣は人より神に近い存在よ」
 「それだと、神は悪魔みたいな感じになるけど?」
 「そもそも悪魔が存在しないのよ。単純に魔獣の餌とされた人が勝手に敵意を以って、作り上げた妄想ね」
 「なるほど・・・ちょっと哲学的ね」
 愛理は考え込む。因みにアミルは話についていけてない。
 「話はわかったわ。それで・・・神になりたいドラゴンってのは西・・・大阪に居るんだな?」
 「噂よ。噂。世界樹と同化しようとしたドラゴンが居たって話。興味は無いわ」
 ペルティナはつまらなそうに言い放つ。
 「あんたは興味が無くても、私はこの世界を戻す為にそいつを殺さないといけないってなっててね」
 「使命感強いわね。あんた早死にするわよ?」
 ペルティナに言われて、愛理は彼女を睨み付ける。
 「怖いわね。噂では大阪って言うより、京都?って所に所に世界樹が生えてるらしいわ。多分、そこね」
 愛理は少し考え込む。その間にアミルが興味津々でペルティナに尋ねる。
 「なんで、闇落ちしたの?」
 それを聞かれて、ペルティナは気まずそうな表情になる。
 「闇落ちか・・・エルフ族ではよく言われる奴だな。あんなのは単なる迷信さ。黒い肌になったのは魔獣を狩る際に魔獣の血を浴びるせいさ。魔獣の血には高濃度の魔力があってね。それが肌に影響を与えるみたい。私は魔力焼けって呼んでいるよ」
 それを聞いてアミルが納得したように頷く。
 「まぁ・・・良いわ。それより、あんた、これからどうするの?」
 愛理に尋ねられて、ペルティナは笑う。
 「ダークエルフになっちまったからね。まともにエルフ族の村には戻れないから、こうして、魔獣を狩りながら、人間達と付き合って生活してゆくしかないさ。まぁ、元の世界なら、とっくの昔に野垂れ死んでたかもね」
 「そう・・・じゃあ、一緒に来てくれない?」
 「はぁ?」
 「あんた、なかなか経験値が高そうだし、こっちのエルフより使えそうだから」
 愛理はアミルを指差しながら言う。アミルはショックを受けたようで呆然とした顔で愛理を見る。
 「なるほどね。まぁ、そっちの嬢ちゃんは確かに・・・普通のエルフって感じだからね」
 「ふ、普通のエルフって何ですか!」
 アミルは怒ってそう叫ぶが、ペルティナは笑う。
 「普通のエルフってのは知能ばかり高くて、身体能力が低い連中さ。あんた、まともに弓も剣も振れないだろ?人間の武器を持ってるけど、それだって、反動が強くて、まともに撃てやしない」
 そう言われて、アミルは涙目になる。愛理はペルティナに尋ねる。
 「あんたはなんで、身体能力が高いの?」
 「生まれつきと言えば簡単だけど、元々、他のエルフよりも身体能力は高くてね。そこから日々、鍛えたから、しっかりと筋力が付いて、弓でも剣でも震えるようになっただけ。人間の男と格闘したら負けちゃうだろうけどね」
 「なるほど。個体差って事か。このエルフも鍛えて欲しい」
 「ははは。並のエルフじゃ、いくら鍛えても何にもならないじゃない?」
 「や、やれば出来ますっ!」
 アミルは涙目でそう力むが、やはり二人は笑った。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

転生後はゆっくりと

衣更月
ファンタジー
貧しい集落で生まれたリリは、生まれた瞬間から前世の記憶があった。 日本人特有の”配慮”に徹した赤ん坊を演じていたことで、両親から距離を置かれた挙句、村人からも「不気味な子」として敬遠されることに…。 そして、5才の誕生日に遠くの町に捨てられた。 でも、リリは悲観しない。 前世の知識チートは出来ないけど、大人メンタルで堅実に。 目指すは憧れのスローライフが出来るほど、ほどほどの守銭奴としてリリは異世界人として順応していく。 全25話(予定)

主人公の恋敵として夫に処刑される王妃として転生した私は夫になる男との結婚を阻止します

白雪の雫
ファンタジー
突然ですが質問です。 あなたは【真実の愛】を信じますか? そう聞かれたら私は『いいえ!』『No!』と答える。 だって・・・そうでしょ? ジュリアーノ王太子の(名目上の)父親である若かりし頃の陛下曰く「私と彼女は真実の愛で結ばれている」という何が何だか訳の分からない理屈で、婚約者だった大臣の姫ではなく平民の女を妃にしたのよ!? それだけではない。 何と平民から王妃になった女は庭師と不倫して不義の子を儲け、その不義の子ことジュリアーノは陛下が側室にも成れない身分の低い女が産んだ息子のユーリアを後宮に入れて妃のように扱っているのよーーーっ!!! 私とジュリアーノの結婚は王太子の後見になって欲しいと陛下から土下座をされてまで請われたもの。 それなのに・・・ジュリアーノは私を後宮の片隅に追いやりユーリアと毎晩「アッー!」をしている。 しかも! ジュリアーノはユーリアと「アッー!」をするにしてもベルフィーネという存在が邪魔という理由だけで、正式な王太子妃である私を車裂きの刑にしやがるのよ!!! マジかーーーっ!!! 前世は腐女子であるが会社では働く女性向けの商品開発に携わっていた私は【夢色の恋人達】というBLゲームの、悪役と位置づけられている王太子妃のベルフィーネに転生していたのよーーーっ!!! 思い付きで書いたので、ガバガバ設定+矛盾がある+ご都合主義。 世界観、建築物や衣装等は古代ギリシャ・ローマ神話、古代バビロニアをベースにしたファンタジー、ベルフィーネの一人称は『私』と書いて『わたくし』です。

「貧相な小娘」と罵った第一王子へ。番(つがい)は貴方ではなく、国王陛下(お父様)でした

しえろ あい
恋愛
「お父様、わたくし、あの方と目が合った瞬間、分かってしまったのです」 十六歳のデビュタントの夜、ルーセント侯爵令嬢フェリシアを待っていたのは、残酷な罵倒だった。第一王子カシウスは、可憐な白いドレスを纏った彼女を「貧相な小娘」と呼び、己の番(つがい)であることを真っ向から否定する。 会場に響く冷笑と、愛用の刺繍に込めた自信さえ打ち砕くような屈辱。しかし、絶望の淵に立たされた彼女を見つめていたのは、王子ではなく、圧倒的な威厳を放つ「ある男」だった。 魂を焦がすような熱い視線が重なり、静まり返る謁見の間。この出会いが、王室を揺るがす大事件の幕開けになるとは、まだ誰も知らない。自身の価値を否定された少女が、真実の愛によって世界で最も幸福な王妃へと駆け上がる、逆転溺愛ストーリー。 ※小説家になろう様にも投稿しています※

異世界に転移してしまった私、古民家をもらったのでカフェを始めたら大盛況。国王陛下が頻繁に来るのですが、どうしたらいいですか?

来栖とむ
ファンタジー
ブラック企業で疲れ果てた30歳の元OL・美里(みさと)が転移した先は、見渡す限りの深い森。 そこで彼女が授かったのは、魔女の称号……ではなく、一軒の**「日本の古民家」**だった! 亡き祖母が遺したその屋敷には、異世界では失われたはずの「お醤油」「お味噌」「白いお砂糖」という禁断の調味料が眠っていて――。 「えっ、唐揚げにそんなに感動しちゃうの?」 「プリン一口で、国王陛下が泣いちゃった……!?」 おにぎり、オムライス、そして肉汁溢れるハンバーグ。 現代日本の「当たり前」が、この世界では常識を覆す究極の美食に。 お掃除のプロな親子や、お忍びの王様、さらにはツンデレな宮廷料理人まで巻き込んで、 美味しい香りに包まれた、心もお腹も満たされるスローライフが今、始まります!

3歳で捨てられた件

玲羅
恋愛
前世の記憶を持つ者が1000人に1人は居る時代。 それゆえに変わった子供扱いをされ、疎まれて捨てられた少女、キャプシーヌ。拾ったのは宰相を務めるフェルナー侯爵。 キャプシーヌの運命が再度変わったのは貴族学院入学後だった。

完結 辺境伯様に嫁いで半年、完全に忘れられているようです   

ヴァンドール
恋愛
実家でも忘れられた存在で 嫁いだ辺境伯様にも離れに追いやられ、それすら 忘れ去られて早、半年が過ぎました。

短編)どうぞ、勝手に滅んでください。

黑野羊
恋愛
二度も捨てられた聖女です。真実の愛を見つけたので、国は救いません。 あらすじ) 大陸中央にあるルオーゴ王国で、国を守る結界を維持してきた聖女ロザリア。 政略のため王太子と婚約していた彼女は、突如『真の聖女』が現れたとして婚約を破棄され、聖女の座を追われてしまう。さらに、代わりに婚姻しろと命じられた聖騎士からも拒絶され、実家にも見捨てられたロザリアは、『最果ての修道院』へと追放された。 けれど彼女はそこで、地位や栄光、贅沢などとはほど遠い、無条件に寄り添ってくれる『真実の愛』と穏やかな日々を手にいれる。 やがて聖女を失った王国は、崩壊へ向かっていき――。 ーーー ※カクヨム、なろうにも掲載しています

転生『悪役』公爵令嬢はやり直し人生で楽隠居を目指す

RINFAM
ファンタジー
 なんの罰ゲームだ、これ!!!!  あああああ!!! 本当ならあと数年で年金ライフが送れたはずなのに!!  そのために国民年金の他に利率のいい個人年金も掛け、さらに少ない給料の中からちまちまと老後の生活費を貯めてきたと言うのに!!!!  一銭も貰えないまま人生終わるだなんて、あんまりです神様仏様あああ!!  かくなる上はこのやり直し転生人生で、前世以上に楽して暮らせる隠居生活を手に入れなければ。 年金受給前に死んでしまった『心は常に18歳』な享年62歳の初老女『成瀬裕子』はある日突然死しファンタジー世界で公爵令嬢に転生!!しかし、数年後に待っていた年金生活を夢見ていた彼女は、やり直し人生で再び若いままでの楽隠居生活を目指すことに。 4コマ漫画版もあります。

処理中です...