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太陽神教と女神真教の内戦
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ブレッドは孤児だ。自我が芽生えたころから既に親の顔は知らず、孤児院の院長や同じ孤児たちと生活を共にしていた。
ブレッドのいた孤児院は旧市街の外れにあり、金持ちの商人や貴族の気まぐれな施しによって何とか運営が保たれていたが、寄付は決して多くは無く、孤児達の身を削った労働により何とか生きながらえていたというのが正直なところだ。
そんな中ブレッドが15歳の頃、ミロフ帝国の国教である太陽神教と、一部に熱狂的なカルト信者がいる女神真教による大規模な宗教内戦が勃発した。
太陽神教は多神教の為、女神真教について特に非難もせず隣人として扱っていた。対して女神真教は一神教にて他宗教は邪教であるという考えの元、太陽神教を国教とするミロフ帝国そのものの批判へと発展。大規模な内戦と化したのだ。
その内戦によって食糧難に陥り、孤児院の子供たちも飢餓により数が少なくなってしまった過去がある。
その時、既に帝国側の傭兵として働きつつも孤児院に仕送りをしていたブレッドは、どんどん顔なじみの年下の孤児たちが冷たくなっていくのを、悔しい思いで見つめるしか出来なかった。
終戦前にブレッドの所属していた孤児院は、女神真教の暴徒により焼き払われた。元々飢餓で少なくなっていた何の罪も無い孤児たちはその焼き討ちによりさらに数を少なくしてしまった。
ブレッドや魔女カミラは、その数少ない孤児院の生き残りである。
ブレッドは、過去に自分に力がなく助けられなかった孤児達と、痩せ細ったアルフとフィーネの姿を重ねてしまっていた。
客室のベッドに二人を寝かしつけた後、ブレッドは居間でエールを飲みながら今後の事を考える。
どう考えても厄介ごとの匂いしかしない。
なぜ、20年もいた施設から逃げ出したのか、なぜ施設から追われているのか。
追手がいるのならば、俺まで危険にさらされるのではないか。
色々な事を考えながらも、ブレッドは二人の細い体と冷たい体温を思い出した後、過去の助けられなかった孤児達に思いをはせる。
「はぁ… 。女神真教か。嫌な思い出しかねえな。」
ミロフ帝国軍とその傭兵たちの働きにより、女神真教の暴徒は掃討され帝国内には既に女神真教の教会は無くなっている。しかし、アルフ達が20年所属した後に逃げてきた組織は、その『過激派』だといった。つまり、残党がまだいるという事だ。
「女神真教、禁忌の錬金術、ホムンクルス… 。この字面で既にアウトだな。」
ブレッドはこめかみを指で押さえた後、残っていたエールを一気飲みした後、ベッドルームへと向かう。
「ふん。あいつらを囲って隠せば、胸糞悪いカルト教信者どもへの嫌がらせになるか。」
絶対に厄介ごとだと理解しつつも、アルフとフィーネが少し親切にされただけで見せた泣き顔を思い出し、その庇護欲には気が付かない振りをしつつ女神真教の残党組織への嫌がらせを兼ねた復讐だと独り言ちるブレッド。彼はベッドに横になりながら、明日からどうするか何もいい案が思い浮かばないまま、眠りに落ちたのであった。
翌朝、ブレッドは目が覚めた後、朝食の為のトーストを焼き、簡単に目玉焼きとスープを作る。
調理の音で目が覚めたのか、アルフとフィーネが昨日貸したダボダボの服とひどい寝癖のまま、居間へとやってきた。
「おー、起きたか。今飯作ってるから、座って待っとけ。」
「えっと… おはようございます。何から何まで、ご迷惑をかけてごめんなさい。」
「あの、ありがとうございます。私たち、こんなにゆっくり眠れたの初めてです。」
相変わらず見た目と口調が合わないなと思いつつ、ところどころ出てくる過去の不遇な扱いを匂わせる発言を気にしつつ、ブレッドは軽口をたたく。
「それは良かったな。今日、俺は仕事は休みにするからよ、今後の話をしようぜ。」
「…はい。」
「まずは朝食だ。ほら、食え。」
三人は無言で朝食を食べ終えると、フィーネが先に口を開いた。
「ブレッドさんは、どうして得体の知れない私たちに、こんなにも親切にしてくれるのですか?」
「ん?気まぐれな偽善だ。ホムンクルスってのも別に疑っちゃいねぇよ。女神真教はカルト集団だからな、そんな人道に外れた研究してるってのも納得だ。」
敢えてぶっきら棒に話し、気にするなと態度で示すブレッドにアルフは感謝の意を述べる。
「本当に助けてくれて、ありがとうございます。僕たちは、成長しないだけで他は普通の感情のある生き物です。」
「あぁ、見てたらわかる。見た目にそぐわない態度と喋り方してるしな。でだ、今後どうする?」
単刀直入にブレッドは今後の事を問いただす。
「お前ら、昨日俺が助けなければ、あのまま死ぬつもりだったのか?」
「…それでも、良いとすら思っていました。」
アルフの、絞り出す様な声にブレッドは眉をひそめる。
「その、なんだ。女神真教の組織で何があって抜け出したんだ?」
「………。少し、どこから話せばいいか、考えさせて下さい。」
「あの、絶対に手に負えない事なんです。事情は話します。ですが、ブレッドさんを私たちの事情に巻き込みたく無いんです。」
悲痛な表情を浮かべる二人のホムンクルスは、やはりどう見てもただの人間にしか見えない。
「まぁ、追われてるって言ってたもんな。ただ、此処にいれば早々にはみつからねぇだろ。焦らずゆっくり話してくれ。」
ブレッドはそう言うと、牛乳を入れ二人に差し出した。
アルフはそれを一口飲むと、淡々とこれまでの出来事を話し出したが、ブレッドはその狂気の内容に背筋が凍る思いをする事になるのであった。
ブレッドのいた孤児院は旧市街の外れにあり、金持ちの商人や貴族の気まぐれな施しによって何とか運営が保たれていたが、寄付は決して多くは無く、孤児達の身を削った労働により何とか生きながらえていたというのが正直なところだ。
そんな中ブレッドが15歳の頃、ミロフ帝国の国教である太陽神教と、一部に熱狂的なカルト信者がいる女神真教による大規模な宗教内戦が勃発した。
太陽神教は多神教の為、女神真教について特に非難もせず隣人として扱っていた。対して女神真教は一神教にて他宗教は邪教であるという考えの元、太陽神教を国教とするミロフ帝国そのものの批判へと発展。大規模な内戦と化したのだ。
その内戦によって食糧難に陥り、孤児院の子供たちも飢餓により数が少なくなってしまった過去がある。
その時、既に帝国側の傭兵として働きつつも孤児院に仕送りをしていたブレッドは、どんどん顔なじみの年下の孤児たちが冷たくなっていくのを、悔しい思いで見つめるしか出来なかった。
終戦前にブレッドの所属していた孤児院は、女神真教の暴徒により焼き払われた。元々飢餓で少なくなっていた何の罪も無い孤児たちはその焼き討ちによりさらに数を少なくしてしまった。
ブレッドや魔女カミラは、その数少ない孤児院の生き残りである。
ブレッドは、過去に自分に力がなく助けられなかった孤児達と、痩せ細ったアルフとフィーネの姿を重ねてしまっていた。
客室のベッドに二人を寝かしつけた後、ブレッドは居間でエールを飲みながら今後の事を考える。
どう考えても厄介ごとの匂いしかしない。
なぜ、20年もいた施設から逃げ出したのか、なぜ施設から追われているのか。
追手がいるのならば、俺まで危険にさらされるのではないか。
色々な事を考えながらも、ブレッドは二人の細い体と冷たい体温を思い出した後、過去の助けられなかった孤児達に思いをはせる。
「はぁ… 。女神真教か。嫌な思い出しかねえな。」
ミロフ帝国軍とその傭兵たちの働きにより、女神真教の暴徒は掃討され帝国内には既に女神真教の教会は無くなっている。しかし、アルフ達が20年所属した後に逃げてきた組織は、その『過激派』だといった。つまり、残党がまだいるという事だ。
「女神真教、禁忌の錬金術、ホムンクルス… 。この字面で既にアウトだな。」
ブレッドはこめかみを指で押さえた後、残っていたエールを一気飲みした後、ベッドルームへと向かう。
「ふん。あいつらを囲って隠せば、胸糞悪いカルト教信者どもへの嫌がらせになるか。」
絶対に厄介ごとだと理解しつつも、アルフとフィーネが少し親切にされただけで見せた泣き顔を思い出し、その庇護欲には気が付かない振りをしつつ女神真教の残党組織への嫌がらせを兼ねた復讐だと独り言ちるブレッド。彼はベッドに横になりながら、明日からどうするか何もいい案が思い浮かばないまま、眠りに落ちたのであった。
翌朝、ブレッドは目が覚めた後、朝食の為のトーストを焼き、簡単に目玉焼きとスープを作る。
調理の音で目が覚めたのか、アルフとフィーネが昨日貸したダボダボの服とひどい寝癖のまま、居間へとやってきた。
「おー、起きたか。今飯作ってるから、座って待っとけ。」
「えっと… おはようございます。何から何まで、ご迷惑をかけてごめんなさい。」
「あの、ありがとうございます。私たち、こんなにゆっくり眠れたの初めてです。」
相変わらず見た目と口調が合わないなと思いつつ、ところどころ出てくる過去の不遇な扱いを匂わせる発言を気にしつつ、ブレッドは軽口をたたく。
「それは良かったな。今日、俺は仕事は休みにするからよ、今後の話をしようぜ。」
「…はい。」
「まずは朝食だ。ほら、食え。」
三人は無言で朝食を食べ終えると、フィーネが先に口を開いた。
「ブレッドさんは、どうして得体の知れない私たちに、こんなにも親切にしてくれるのですか?」
「ん?気まぐれな偽善だ。ホムンクルスってのも別に疑っちゃいねぇよ。女神真教はカルト集団だからな、そんな人道に外れた研究してるってのも納得だ。」
敢えてぶっきら棒に話し、気にするなと態度で示すブレッドにアルフは感謝の意を述べる。
「本当に助けてくれて、ありがとうございます。僕たちは、成長しないだけで他は普通の感情のある生き物です。」
「あぁ、見てたらわかる。見た目にそぐわない態度と喋り方してるしな。でだ、今後どうする?」
単刀直入にブレッドは今後の事を問いただす。
「お前ら、昨日俺が助けなければ、あのまま死ぬつもりだったのか?」
「…それでも、良いとすら思っていました。」
アルフの、絞り出す様な声にブレッドは眉をひそめる。
「その、なんだ。女神真教の組織で何があって抜け出したんだ?」
「………。少し、どこから話せばいいか、考えさせて下さい。」
「あの、絶対に手に負えない事なんです。事情は話します。ですが、ブレッドさんを私たちの事情に巻き込みたく無いんです。」
悲痛な表情を浮かべる二人のホムンクルスは、やはりどう見てもただの人間にしか見えない。
「まぁ、追われてるって言ってたもんな。ただ、此処にいれば早々にはみつからねぇだろ。焦らずゆっくり話してくれ。」
ブレッドはそう言うと、牛乳を入れ二人に差し出した。
アルフはそれを一口飲むと、淡々とこれまでの出来事を話し出したが、ブレッドはその狂気の内容に背筋が凍る思いをする事になるのであった。
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