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番外編 冬  真冬の使者 ※

③ ※

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 流れ落ちる湯が溜まって出来た岩の窪みが、あちこちにある。岩陰で服を脱ぎ、私たちは、その一つに体をひたした。最初は熱く思えたのに、あっという間に体に心地よく感じられる。

 見上げれば青空が広がる中で、体を湯につけているなんて驚くばかりだった。半身をつけたところで少し青みがかった湯をすくい、思わず微笑んだ。

「見て、クリス。すごくきれい」
「……綺麗なのは、貴方です」

 同じように体を浸している男の体は、均整が取れて美しかった。岩にもたれかかっている体の筋肉に思わず見惚れてしまう。急に自分の体が恥ずかしくなって、思わず肩まで湯の中に沈んだ。

「アルベルト様?」

 ヴァンテルが近寄ってきて、私の体を抱きしめる。肌と肌が重なって温かな流れだけが間にあった。うに天を向いていたヴァンテルの剛直が内腿に当たる。
 大きな手が柔らかい私の雄を探り、湯の中で握ったかと思うと、ゆっくりと擦り上げた。

「あッ! や、やめ…… クリス!」
「ああ、硬くなってきました。感じてくださるのですね」

 湯の中で、互いの肌に触れるような行為を行ったことはない。堪らなくなって口づけを求めれば、熱い舌が激しく口の中を犯す。清涼な空気に立ち上る湯気の中で、自分たちの行いの淫らさに震えた。ヴァンテルの手が湯の中で、二本の雄を一緒に擦り上げる。

「ンッっ!!」

 巧みに擦り上げられ、頭の中が真っ白になる。雄の昂ぶりが限界に達した時、熱いほとばしりが澄んだ湯の中に流れた。あまりの気持ちよさに体が蕩けてしまいそうだった。

「アルベルト様?」
「……クリス」

 ヴァンテルが、のぼせて力が抜けた私に気づいて、湯の中から抱き上げた。手近な岩に背を預けて、私を胸に抱き寄せる。ヴァンテルにもたれかかったまま風に吹かれていると、ぼうっとした頭が少しずつ楽になっていく。
 髪から雫が滴る美しい男が、ため息をつきながら私を見た。
 
「綺麗です、アルベルト様。貴方の何もかもが。燭台の下の貴方もお美しいですが、陽射しの下はまた違う」

 そう言いながら、顔中に柔らかな口づけが降って来る。ほう、と小さなため息をつくとヴァンテルの手はゆっくりと私の胸を撫でた。

「こ、こんな所で……」
「ご安心を。誰も見ておりませんので」

 ヴァンテルは、何度も軽く唇をんだ。私の乳首を指でつまみ、こねたかと思うと、戯れに顔を寄せる。口に含まれ舌で転がされた場所が熱くて、恥ずかしさでいっぱいになった。
 思わず、体がぶるりと震える。動きを止めたヴァンテルは、小さく笑った。

「お体が冷えてはいけません」



「あ……ンッ!!」

 もう一度、湯に入れられた私の体を、ヴァンテルが後ろから攻め立てた。

 目の前の大きな岩肌を必死で掴めば、手に手が重なって強く押し付けられる。肉襞にみちみちと剛直が分け入り、わずかな隙間に湯が入ってくるのがわかった。

「んッ! 入って……はいっちゃう」
「何がです?」
「ゆ……お湯が……」
「……これは、初めての感覚ですね」

 ヴァンテルが私の腰を捕らえて激しく突き上げるたびに、周りに細かな飛沫しぶきが立つ。中をぎゅっと締め上げるとはちきれんばかりに剛直が膨らむ。

「あ……ぁ! やあぁあああ!!」

 自分の中がヴァンテルで満たされた時、私は堪らず、もう一度精を迸らせた。




 今度こそすっかりのぼせた私は、ヴァンテルに体を拭かれ服を着せられた。
 馬車の中で横たわっていると、湯あたりした私に膝を貸し、口移しで少しずつ水を与えてくれる。

「……クリス。私は今日、わかったことがある」
「何です?」
「一つは、大事な恋人の誘いでも簡単に頷いてはいけない」
「……」
「もう一つは……。湯の中でも、自分の中に出されたものは熱く感じる」

 ヴァンテルは目を見開いた後、頬を真っ赤に染めた。そして、いきなり私の髪をぐしゃぐしゃにする。逃げ出そうと体をよじると、その手がぴたりと止まった。

「……あ! アルベルト様、鳥が」

 窓を見たヴァンテルが、私から体を離して馬車の扉を大きく開けた。
 空高く、輝く羽を持つ鳥たちが群れを成して羽ばたいていく。

「『真冬の使者』だ……」
「今年一番でしょう。いつもより早めに雪が降るかもしれません」
「うん。……クリス」
「何です? アルベルト様」

 ヴァンテルが私に顔を寄せてくる。

「何度冬が来ても、一緒にいて」

 おまえがいてくれたら、もう一人で寒さに凍えることはない。いつでも温もりを感じながら生きることができる。

「また、ここにも来よう」

 鳥の産毛よりも柔らかな口づけが降ってくる。
 「必ず」、と何よりも甘い声が続いた。






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 本編後の凍宮の一年を書いてみました。お読みいただきありがとうございます。
 次の番外編は時系列が変わります。
 引き続きご覧いただければ幸いです。
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