64 / 202
Ⅴ.後日談
第3話 秘め事③ ※
しおりを挟む夕食のあと、少ししてからイルマ王子がシェンバー王子の部屋を訪れた。
レイは二人の前の卓に茶を置くと、部屋を下がる。
いつもと同じように、シェンバー王子は長椅子に腰かけている。
イルマ王子が隣に座れば、ふわりと甘い香りがした。
視力を失っても、全く見えなくなったのとは少し違う。
明るさと暗さを判断することは出来る。
そして、以前より嗅覚は鋭敏になった。
隣に座ったイルマの髪にシェンバーは触れた。
ふわふわした髪は、わずかに湿っていた。
「濡れてる? それに、花の香りがする」
「⋯⋯さっき、湯を浴びたから」
「そうか⋯⋯」
シェンバーが甘い香りのする髪を撫でれば、イルマは肩口にこつんと頭を乗せた。
──可愛いな。
以前は毛を逆立てた猫のようだったのに。
いつのまにか、隣で体を擦り寄せるようになった。
フィスタの王族たちは仲がいい。
末の王子のイルマは、国王夫妻だけでなく兄姉にも可愛がられていた。
そのせいだろうか。一旦心を許すと、気軽に甘えてくる。
そっと髪に口づけると、イルマは顔の向きを変えてシェンバーを見上げた。
イルマの手が、シェンバーの頬に触れた。ほっそりした手はいつも、ほんの少しシェンバーより温かい。その温かさに、シェンバーは自分から擦り寄ってしまいたくなる。
「⋯⋯シェン、大好き」
──小さく呟くこの生き物を、どうしたらいいのだろう。
自分への気持ちを、ただまっすぐに伝えてくる。そのたびに、激しく波打つこの気持ちを、どう伝えたらいいのだろう。
互いの吐息が近づいて、やわらかい感触が唇に触れる。
シェンバーは、唇の合間から舌を忍び込ませた。
自分よりも小ぶりなイルマの舌の上を、ちろちろと嬲っていく。
「⋯⋯んっ、シェン⋯⋯」
イルマの口から甘い声が漏れた。
シェンバーは、イルマの上顎の柔らかい部分から、綺麗に揃った歯の裏側に舌を這わせる。
追いかけてくるイルマの舌を絡め取れば、互いの唾液が口の中に溢れた。
堪らずイルマの体を抱き込んで、舌を強く吸い上げる。
「んっ、ん、んっ⋯⋯」
互いの口の端から唾液が糸のようにこぼれていく。
「シェ、シェン、待っ⋯⋯」
イルマは、両手でシェンバーの胸を押した。二人の唇と体がわずかに離れる。
ほんの少し離れただけで、こんなにも切ない。
はぁ、と息をつくその仕草すら愛しいと思った。
「⋯⋯イルマ、好きだ」
もう一度抱きしめようと、シェンバーはイルマの温かさを求めて手を伸ばす。
指と指を一瞬絡めた後、イルマは立ち上がった。
「イルマ?」
さらさらと衣擦れの音がした。
ぱさりと床に物が落ちる。
嗅覚だけではなく、聴覚も以前よりは鋭敏になったシェンバーには、それが何の音かわかった。
「⋯⋯イルマ!?」
花の香りが再び近づいた。
自分の膝に、しなやかな体が乗り上げてくる。
滑らかな肢体は、何も身につけてはいなかった。
イルマは手を伸ばして、シェンバーの頭を、胸にかき抱く。
「んっ⋯⋯!」
シェンバーの口に、ちょうど小さな膨らみが当たる。
舌で突起を転がして、ちゅ、と吸い上げる。
「⋯⋯ん、あ、ああっ!!」
シェンバーは、腕の中で体を反らそうとするイルマの体をきつく掴んだ。
「逃がさない」
肌に舌を這わせながら、もう一度突起に辿り着く。
軽く噛んでは吸い上げると、イルマの体がびくびくと震える。
──頭の中が沸騰しそうだ。
左手で腰を掴んだまま、右手を下におろしていく。
ほっそりした腰から腿に触れる。滑らかで温かい体。自分の冷たい指先が余裕なく動いていく。
内腿に触れた時に、天を向いているイルマ自身を見つけた。
熱く張り詰めた花芯に触れれば、先からは、しとどに雫が零れている。
「や! あぁあ⋯⋯っ」
「⋯⋯イルマ、イルマ。可愛い」
硬くなったイルマの竿を摺り上げる。
先の割れ目の部分を開くように親指で押せば、イルマの体が震えた。
熱い汁がくぷりと迸って、シェンバーの指を濡らす。
「⋯⋯あッあ! ぼく⋯⋯ぼく⋯⋯」
シェンバーの頬に、ぽろぽろと、涙の粒が落ちてきた。
「おいで」
シェンバーが腕を伸ばす。
イルマは体の力を抜いて、シェンバーの腕の中に飛び込んだ。
「ごめ、ごめん。ぼくだけ⋯⋯」
イルマの顔に口づける。
零れる涙を舐め上げて、まぶたに、頬に、額に。
例え姿が見えなくても、肌の熱さを感じることは出来る。
顔から首へと、至る所に口づけを降らせていると、イルマが言った。
「シェン、くすぐったい」
「⋯⋯全部、食べてしまいたい」
シェンバーは、イルマの耳を軽く食んだ。舌で耳孔を舐めながら、指で胸をまさぐった。
胸の突起をこねるたびに、ピクリと跳ねる。
はあ、と漏れる吐息が、堪らなく淫靡だった。
「イルマ、教えて。どうしてほしい?」
耳許で囁けば、腕の中で体を震わせながら、しがみついてくる。
「シェ、シェンと」
「私と?」
「⋯⋯りたい」
小さな小さな声が呟く。
⋯⋯ひとつになりたい。
シェンバーは、イルマを抱きしめたまま、天井を仰いだ。
心臓が飛び出しそうだった。
自分を落ち着かせるように、ゆっくりと言葉を吐きだす。
──イルマは、どこまでわかっているんだろうか。
「準備がいるんだ」
「え?」
「男同士の場合には⋯⋯。ちょっと、男女とは違って」
「うん、知ってる」
首にイルマの腕が巻き付く。
肩にぴたりと頬を付けながら、恋人は小声で言った。
「えっと、セツに聞いて。⋯⋯準備してきたから」
シェンバーは、叫ばなかった自分を心の中で褒めた。
101
あなたにおすすめの小説
愛してやまなかった婚約者は俺に興味がない
了承
BL
卒業パーティー。
皇子は婚約者に破棄を告げ、左腕には新しい恋人を抱いていた。
青年はただ微笑み、一枚の紙を手渡す。
皇子が目を向けた、その瞬間——。
「この瞬間だと思った。」
すべてを愛で終わらせた、沈黙の恋の物語。
IFストーリーあり
誤字あれば報告お願いします!
侯爵令息セドリックの憂鬱な日
めちゅう
BL
第二王子の婚約者候補侯爵令息セドリック・グランツはある日王子の婚約者が決定した事を聞いてしまう。しかし先に王子からお呼びがかかったのはもう一人の候補だった。候補落ちを確信し泣き腫らした次の日は憂鬱な気分で幕を開ける———
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
初投稿で拙い文章ですが楽しんでいただけますと幸いです。
氷の婚約者様に破談を申し出たら号泣された
楽矢
BL
目が覚めると、レースの牢獄のような天蓋付きベッドの上だった。
何も覚えていない出来損ない下級貴族ミラ。無能だクズだと冷酷な罵詈雑言を浴びせてくる氷の騎士セティアス。
記憶喪失から始まる、2人のファンタジー貴族ラブコメディ。
----------
※注)
かっこいい攻はいません。
タイトル通りそのうち号泣しますのでご注意!
貴族描写は緩い目で雰囲気だけお読みいただけると幸いです。
ハッピーエンドです。
激重感情をこじらせた攻→受な関係がお好きな同志の方、どうぞよろしくお願いします!
全16話 完結済み/現在毎日更新予定
他サイトにも同作品を投稿しています。
様子を見ながらそのうち統合するかもしれません。
初めての一次創作でまだよく分かっておらず、何かおかしなことをしでかしていたら申し訳ないです!
「オレの番は、いちばん近くて、いちばん遠いアルファだった」
星井 悠里
BL
大好きだった幼なじみのアルファは、皆の憧れだった。
ベータのオレは、王都に誘ってくれたその手を取れなかった。
番にはなれない未来が、ただ怖かった。隣に立ち続ける自信がなかった。
あれから二年。幼馴染の婚約の噂を聞いて胸が痛むことはあるけれど、
平凡だけどちゃんと働いて、それなりに楽しく生きていた。
そんなオレの体に、ふとした異変が起きはじめた。
――何でいまさら。オメガだった、なんて。
オメガだったら、これからますます頑張ろうとしていた仕事も出来なくなる。
2年前のあの時だったら。あの手を取れたかもしれないのに。
どうして、いまさら。
すれ違った運命に、急展開で振り回される、Ωのお話。
ハピエン確定です。(全10話)
2025年 07月12日 ~2025年 07月21日 なろうさんで完結してます。
【完結】悪役令息の伴侶(予定)に転生しました
* ゆるゆ
BL
攻略対象しか見えてない悪役令息の伴侶(予定)なんか、こっちからお断りだ! って思ったのに……! 前世の記憶がよみがえり、反省しました。
BLゲームの世界で、推しに逢うために頑張りはじめた、名前も顔も身長もないモブの快進撃が始まる──! といいな!(笑)
本編完結しました!
おまけのお話を時々更新しています。
きーちゃんと皆の動画をつくりました!
もしよかったら、お話と一緒に楽しんでくださったら、とてもうれしいです。
インスタ @yuruyu0 絵もあがります
Youtube @BL小説動画 アカウントがなくても、どなたでもご覧になれます
プロフのwebサイトから両方に飛べるので、もしよかったら!
本編以降のお話、恋愛ルートも、おまけのお話の更新も、アルファポリスさまだけです!
名前が * ゆるゆ になりました。
これからもどうぞよろしくお願い致します!
表紙や動画はAIを使用していますが、文章にはAIを一切使用しておりません。
虚ろな檻と翡翠の魔石
篠雨
BL
「本来の寿命まで、悪役の身体に入ってやり過ごしてよ」
不慮の事故で死んだ僕は、いい加減な神様の身勝手な都合により、異世界の悪役・レリルの器へ転生させられてしまう。
待っていたのは、一生を塔で過ごし、魔力を搾取され続ける孤独な日々。だが、僕を管理する強面の辺境伯・ヨハンが運んでくる薪や食事、そして不器用な優しさが、凍てついた僕の心を次第に溶かしていく。
しかし、穏やかな時間は長くは続かない。魔力を捧げるたびに脳内に流れ込む本物のレリルの記憶と領地を襲う未曾有の魔物の群れ。
「僕が、この場所と彼を守る方法はこれしかない」
記憶に翻弄され頭は混乱する中、魔石化するという残酷な決断を下そうとするが――。
【完結】100回生まれ変わっても心のないオレの心を奪ったのは黒い竜
MINORI
BL
100回生まれ変わり、98回黒い竜に殺され、99回の人生の記憶を持つ、心と感情を持たない主人公が、唯一の記憶がない初回人生をすごした6体の竜が統べる異世界に、自分の魂を確実に消し去る方法を探す旅に出るお話。
竜が主人公を取り合い、BLになる・・・はず・・・ですが、大分遠いかもしれません・・・。
※このお話は、ムーンライトノベルズ様の方で先行投稿しております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる