【祝福の御子】黄金の瞳の王子が望むのは

尾高志咲/しさ

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第二部 眼病の泉

第16話 逢瀬② ※

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「落ち着いた?」

 ぼくたちは、木の根元に座り込んでいた。
 シェンは、自分の背中を木の幹に預け、ぼくを抱きしめていた。ぐすぐすと泣くたびに、背中を優しく撫でられる。
 膝の上に抱きかかえられたまま、ぼくは瞼が開けられない。泣きすぎて目が腫れているせいだ。体からは、すっかり力が抜けていた。それなのに、右手だけはずっとシェンの服を握っている。
 この手を離したら、またいなくなってしまう。そんな気がして、とても離すことなどできなかった。

 首筋にすり寄ると、シェンが黙り込む。
 何かとまどっているようだったけど、構わずにぴたりと体を寄せた。
「イルマ。久しぶりすぎて、ちょっと⋯⋯」
 呟きながら、ぼくの頭に口づけがひとつ落ちてくる。

「もう、夜も更けた。眠った方がいい」
「シェンと寝る」
「⋯⋯イルマ?」
「今夜はシェンと寝る。⋯⋯話は、明日聞く」
 ぼくは、腫れあがった瞼を擦りながら立ち上がった。

 水泥棒の騒ぎで、村の男たちは長の家に行ったようだった。
 長の家の周りだけ灯火がついて、ざわざわと空気が揺れている。

 ぼくたちに用意された客室は、村長の家からは遠い。
 シェンに腕を掴んでもらい、黙って自分に与えられた部屋に連れていく。
 勝手に決めたぼくに、シェンは何も言わずについてきてくれた。
 誰にも見咎められないのをいいことに、自分の寝室にシェンをいざなう。
 寝台として床に動物の皮が何枚も積まれ、その上に厚みのある織物がかけられている。

「ねえ、イルマ」

 寝台に一緒に寝転んで、必死で抱きついた。
 見上げると、目を閉じてシェンは一つため息をついた。呆れているのかもしれない。
 長く揃ったまつ毛がきれいだ。でも、会わない間に中性的な美しさは影を潜め、ぐっと男らしくなった気がする。

「寝た方がいい」
「うん」
「でも、困ってる⋯⋯」
「⋯⋯?」
「嬉しくて、⋯⋯死にそうなんだ」

 そう言った途端に、息が出来なくなるほど強く抱きしめられた。
 名前を呼ぼうとすれば、唇を塞がれて熱い舌が口腔に入ってくる。
 舌が絡められる感覚があまりに久しぶりすぎて、カッと頭の中が熱くなった。
「⋯⋯! ん! ⋯⋯っ!!」
 口中をくまなく舐められ、背中に甘く痺れるような感覚が突き抜けていく。
 同じように舌を絡めようとしても、シェンの激しい動きに為すすべもなかった。

 乾いた唇が、頬から顎、首へと少しずつ口づけを降らせていく。鎖骨を這う舌が時折、肌を吸い上げた。小さな痛みが走る。
「⋯⋯っ! シェ⋯⋯!」
 体がずり上がりそうになるのを許さないと言うように、絡めた指ごと強く寝台に押しつけられた。鎖骨から肩へ。舐められては吸われ、小さな痛みが続く。
 肌の上には、幾つもの赤い花が散っているだろう。

 ぼくが震えているのに気が付いたのか、シェンは力を緩めた。
 そっと触れるだけの優しい口づけの後に、起き上がって、自ら服を脱いでいく。
 小さな窓から入る月のわずかな光に、鍛えられた上半身が露になった。
 浮き上がる輪郭と流れる髪。均整の取れた身体は、しなやかな獣を思い出す。
 触れられた場所が甘く痺れているのに、目の前の姿を頭のどこかできれいだと思う。

「イルマ、何を考えてる⋯⋯?」
 シェンが、額にかかった髪をそっとつまんで横に流してくれる。
「⋯⋯シェンのこと。⋯⋯シェンのことばっかり」
「いい子」
 妖艶な微笑みが浮かび、シェンの手が、ぼくの服にかかった。はだけたシャツのボタンを、確かめるようにまさぐる。釦が外され、するりと上半身が曝された。
「⋯⋯え? シェン?」
 記憶にあるよりずっと滑らかな動作に目をみはる。

 シェンの節くれだった指が胸を弄った。親指と人差し指でくり、と突起を摘まんで弄られれば、ピクリと体が揺れた。
「⋯⋯ン! あ、だめ」
「ここ、忘れてなかったんだね」
 もう片方も舌先で舐められ、軽く歯を立てられた。小さな乳首を執拗に弄られて腰が揺れる。
「やっ、あ、あ!」
 胸で感じるようになったのは、シェンが何度も弄ったからだ。少しずつ少しずつ、体を開かれるたびに触れられた場所。ちゅ、と吸われて思わず自分の指を噛んで快感を耐えた。シェンがそれに気づいて、手首を掴む。

「噛んじゃだめ。声、出して」
「⋯⋯や、だ。聞こ⋯⋯える、から」
 砂漠の家の窓は、開いたままだ。嬌声を上げたら聞こえてしまう。
 そう思ったら、恥ずかしさで体が震えた。
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