【祝福の御子】黄金の瞳の王子が望むのは

尾高志咲/しさ

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第四部 婚礼

第37話 幸せの天秤③

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 女神の祝福を受けた恋人たちは思う。

 死して女神の元に行く時は共にと誓い、魂となっても共に在りたいと願う。ならば、審判の天秤が同じ方向に傾くようにと。

 ──人の世に再び生まれるのなら⋯⋯。何も知らずとも、また出会う日が来ますように。

 シェンバーとイルマは互いに指を握りしめ、祈りを籠めて、ゆっくりと口づけを交わした。






 スターディアでの婚姻の儀から、二か月が経った頃。

 遠く離れたフィスタでも、喜びの声が湧いた。サリア王女の子が元気な産声を上げたのだ。

「セツ! サフィード! 男の子だ!! 無事に生まれたって!」

 早馬が届けた手紙を読みながら、黄金の瞳がきらきらと輝いている。イルマがセツと手を取り合って飛び跳ねる様子に、サフィードが微笑んだ。

「いいな。きっと可愛いだろうな。⋯⋯姉上はぼくが縫った産着を一番に使ってくださったみたいだ」

 興奮して震えるイルマを見ながら、シェンバーは言った。

「里帰りをすればいいんじゃないか? 誕生の祝いを持って。イルマはこっちに来てから、一度もフィスタに帰っていないだろう」

「シェン! ほんと!? それなら、シェンも一緒に行こう!」
「えっ?」
「姉上の子に会うだけじゃない。フィスタに行くなら、ゴートの孤児院に行ってシアたちに会いたいし、育てていた穀物がどのぐらい収穫できるようになったのかも知りたい。そうだ、女神の湖にも行きたい! 岸に立って、ぼくたちは今、こんなに幸せだと女神に直接、感謝を伝えたいんだ。それに、フィスタの民はきっとシェンを歓迎してくれる」
「イルマ⋯⋯」

 イルマの言葉に、セツとサフィードが揃って頷いた。イルマの期待に満ちた瞳に、シェンバーは思わず笑った。

 ⋯⋯あの思い出の地に、もう一度。

「一緒に行くなら、すぐには無理だが。少し待ってもらえれば、都合をつけよう」
「ありがとう、シェン!!」

 イルマは満面の笑みを浮かべてシェンバーの広い胸に飛びついた。シェンバーは、伴侶に弱い自分を痛感する。それでもこの笑顔を見られるのならば、どんな苦労も厭わないと思う。

「楽しみだな、イルマ」
「うん!」


 ──ぼくは、シェンと共に生きていく。そして、北の地に生まれた命と人々の幸せを願おう。どこにいても。

 祝福の子の感謝と祈りは、柔らかな陽射しの中に静かに満ちていく。



 人は言う。
 北の小国フィスタこそ、聖なる女神のいます神秘の国。
 女神の愛し子は、故国を遠く離れても、女神と人々の幸せを願う。その心を女神は喜ばれて、より深く広く、あまねく大地に祝福を授けるのだと。

 人々は、折に触れて感謝の言葉を唱えた。そして、青空を見上げて願う。
 ──⋯⋯幾久しく、女神と愛し子に幸いあれと。





 【第四部 婚礼 了】


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