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番外編 竜の城の恋人たち
8.竜の城の宴会① フロル視点
しおりを挟む発情期も終わり、僕の体はようやく元の状態に戻った。発情期の間の記憶は朦朧としているが、レオンが水や果物を与えてくれたらしい。食事だけでなく、僕の体を洗い、髪を乾かし何から何まで世話をしてくれた。それが恥ずかしくも嫌でもなくただ幸せな気持ちばかりが湧いてきたのを覚えている。
少し痩せたとレオンが言い、僕の口に甘酸っぱい葡萄を運んでくれる。緑色に輝く葡萄は一番好きな果物だ。口元に運んでもらったのと一緒にレオンの指も舐めた。太い指が僕の口の中をくすぐるのが気持ちいい。かぷりと噛んで甘えていたら、レオンの眉が苦し気に寄った。慌てて口を離すと、レオンが小さくため息をつく。
「……いたずらはだめだ。フロル」
「いたずらじゃないよ。レオンにされることは皆、気持ちがいいから」
青い瞳をじっと見れば、頬をうっすらと赤く染めて僕に口づける。優しくレオンの舌が忍び込んでくるから、嬉しくなって僕も舌を絡めた。レオンの口づけがどんどん深くなって互いに夢中になった時、扉がコンコンと叩かれた。
レオンが僕の体をそっと離して出ていくと、隣室から話し声が聞こえた。すぐにダナエとリタが、レオンと一緒に入ってくる。
「カイ様が、今夜はどうだと仰るのですが……」
カイは一週間前に部屋に乱入した時以来、僕たちの前に顔を見せていない。寝室に踏み込まれて怒ったレオンに思い切り叩きのめされ、すっかり元気を失くしていたらしい。ダナエたちに番ったばかりの二人のところに行く方が悪いですよと窘められて大人しくしていたようだ。
レオンがむっとしたまま、僕の方を向く。
「どうする、フロル?」
「えっ? もう会ってもいいと思うよ。発情期は終わったし、カイだって悪気はなかったんだし」
「……フロルがそう言うのなら」
頷くレオンに、ダナエとリタは手を取り合って喜んでいる。二人は本当に主人思いなんだな、と思わず笑みが浮かんだ。すると、ダナエが僕たちに向かってきらきらと目を輝かせた。
「では、早速準備をいたしますね! お二人にも後でお支度をしていただきます」
「……したく?」
「はい! カイ様や皆に知らせないと」
ダナエたちがばたばたと走っていくのを見て、僕とレオンは思わず顔を見合わせた。
◇◇◇
竜の城の一階には大きな広間がある。時折カイの客人がやってきて、何日もの間宴会を繰り広げるのだそうだ。その大広間に、今は城中の使用人たちが集まっていた。全部で三十人位はいるだろうか。
僕は、城の中にこんなに人が集まっているのを初めて見た。肌や瞳の色、年齢も様々で、同じなのは皆オメガだということだけだ。
普段はただの広い空間なのに、今日は全く違っていた。魔石の明かりがあちこちに灯り、夕暮れ時にも関わらずまるで昼間のように明るい。床には見事な絨毯が敷かれ、輪になって皆が座る。協力し合って厨房から料理を運ぶ姿はとても和やかだ。
僕とレオンはお揃いの純白に金糸の衣装に身を包み、少しだけ高い台に並んで座っていた。僕は透けるように薄い生地に細かな宝石の付いたベールまでかぶっている。カイが隣国に行った時に気に入った品で、フロルにと真剣に言うので言われるままにした。
それにしても……。カイと久々に会って夕食を共にするつもりが、全く予想外なことになっていた。
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