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25話 入浴(2)
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「う……。わ、分かった」
僕は一旦、扉の外に出ると、アーマーを外し、服を脱ぎ、付け耳を外し、丁寧に積み重ねて置いた。
鼓動がうるさいくらいに乱れ打つ。
まあ考えてみれば昨晩、既にレンには抱かれてしまっているのだけれど。でも昨晩は僕は普通じゃなかったわけで。
今は、いたって普通。いたって冷静。
こんな冷静な頭で、あんなことやそんなことをしたら……。
わあ僕は恥ずかしさのあまりどうにかなってしまうんじゃないだろうか。
ああ駄目だ、この期に及んで何をためらっているんだ僕は。
レンには借りがいくつもある、借りだらけの借金大王だ僕は。
今こそしっかり、体で払わねば!
僕は意を決し、裸になって、再び風呂の扉を開けた。
湯船の中、すごくいたずらっぽい顔でレンが僕を見ている。
はああ、駄目だ、意を決したはずなのにもういきなり恥ずかしい!
僕はそろそろと湯船に近づき、
「え、えっと、入る前に、桶でさっと体を流すのがマナーだから、その、桶はどこかな」
レンは急に立ち上がった。素っ裸の濡れたレンは、いきなり僕の体を横抱きに抱き上げた。
「わわっ」
レンは僕を抱いたまま、風呂に腰を落とす。
僕はレンに肩を抱きすくめられながら、レンの体の上にうつぶせに寝そべるような形で湯船の中に身を浸した。
お風呂のぬくもりと、レンのぬくもり。その両方に包まれて、僕の心臓がばくばく言っている。
「このまましばらく、お前のこと抱きしめてていいか?」
僕は顔を真っ赤にさせて、無言でうんとうなずいた。
レンは僕の額にちゅっとキスをした。
うわあああ 恥ずかしい恥ずかしい なんだそれ、うわああああ
「体で払ってくれてありがとな」
その物言いに、僕は「ん?」と思う。
よく分からないという面持ちで、レンを見る
レンはふっと笑った。
「心配するな、こんだけだよ。ただヨウのこと抱きしめて風呂に入りたい気分になった」
「あ……。え……」
僕は口をぱくぱくさせてしまう。
とんでもない、誤解をしていた。
そして完全に、僕が変な誤解していたことは、レンにばれている。
なんて恥ずかしい誤解をしてしまったんだ。
頼む忘れてくださいレン様、もう穴があったら入りたい!
とかなんとか一人脳内で大慌てな僕の頭が、ふいにレンの肩に引き寄せられた。
レンは引き寄せた僕の頭に、ぴっとりと自分の頬をくっつけた。
「こうしてると浄化される感じする」
僕はレンに頭ごと抱きすくめられて、恥ずかしいやら嬉しいやら幸せやら。
「じょ、じょう?か?」
「俺のこと綺麗にして、ヨウ。汚い俺のこと」
どくん、と心臓が高鳴った。
胸が切り裂かれるような心地がした。
「な、なんでそんなこと言うんだ、レンは汚くなんかないのに」
「汚いよ。ヨウには俺みたいになってほしくない。俺がお前を全力で守るから、誰にも指一本触れさせないから。だからもう、体で払うとか簡単に言わないでくれ」
「だ、だってそれじゃ、レンばっかり辛い思いをして、僕、なんにも!僕はレンに何もしてあげられてない!」
「俺はもう、もらってる。今こうやって、お前はそばにいてくれてるだろ」
「い、いるけど、なんの役にも」
「いるだけでいい。それだけでいい。俺はもう一人になりたくない……」
ずきっ、と何かが僕の心に刺さる。
この一年の、レンの孤独を思った。
レンはずっと一人ぼっちで、この地獄に耐え抜いたんだ。
どれほど苦しかっただろう、どれほど心細かっただろう。
「れ、レン!」
僕はいきなり大声を出した。レンがびっくりしたように、僕を抱きしめる腕を緩めた。
僕はレンに顔を上げた。
手を伸ばし、その両耳を手ではさみ、じっと見上げる。
「僕は、絶対にレンのそばを離れない。ずっとずっと一緒にいる。もうレンを一人ぼっちにしないって誓う!」
レンが驚いた顔で僕を見ている。
やがてその目が優しく細められ、顔が傾く。
その傾きは、ぞくりとするほど色気があって、僕の心臓は跳ね上がる。
レンの唇が、近づいてくる。
僕はぎゅっと目をつぶった。
唇に、レンの唇が触れた。柔らかくて、熱くて、少し濡れた唇の感触。
瞬間、幸せが全身を駆け抜けていった。
レンは唇を離した。僕は顔を上気させて、レンを見つめていた。
レンは大きな手で僕の顔を包んで、泣きそうな顔をした。
「すげえ、うれしい……」
そう言ってもう一度、僕をきゅっと抱き寄せた。
あったかくてたくましいレンの体が、僕の細い体を包み込んでくれる。
僕はレンの心臓の音に耳を傾けた。
レンはそのままずっと長い間、僕を抱きしめ続けた。
レンの鼓動はとても耳に心地よかった。
このあと僕たちは、互いになんとなく照れながら、普通に体を洗って、普通にお風呂を出て、普通に午後を過ごした。
普通とは言っても、僕はずっと、レンにキスされた余韻で頭の中はいっぱいだったけれど。
「飢餓」中にも濃密なディープキスをされたような気がするけど、あれは異常事態ということでとりあえず置いておいて……。
今のキスは「飢餓」中の出来事じゃないから、覚えていてもいいんだよね?
忘れろなんて言われないよね?
こんな僕がレンに必要とされている。
それが嬉しくてたまらなかった。
僕は一旦、扉の外に出ると、アーマーを外し、服を脱ぎ、付け耳を外し、丁寧に積み重ねて置いた。
鼓動がうるさいくらいに乱れ打つ。
まあ考えてみれば昨晩、既にレンには抱かれてしまっているのだけれど。でも昨晩は僕は普通じゃなかったわけで。
今は、いたって普通。いたって冷静。
こんな冷静な頭で、あんなことやそんなことをしたら……。
わあ僕は恥ずかしさのあまりどうにかなってしまうんじゃないだろうか。
ああ駄目だ、この期に及んで何をためらっているんだ僕は。
レンには借りがいくつもある、借りだらけの借金大王だ僕は。
今こそしっかり、体で払わねば!
僕は意を決し、裸になって、再び風呂の扉を開けた。
湯船の中、すごくいたずらっぽい顔でレンが僕を見ている。
はああ、駄目だ、意を決したはずなのにもういきなり恥ずかしい!
僕はそろそろと湯船に近づき、
「え、えっと、入る前に、桶でさっと体を流すのがマナーだから、その、桶はどこかな」
レンは急に立ち上がった。素っ裸の濡れたレンは、いきなり僕の体を横抱きに抱き上げた。
「わわっ」
レンは僕を抱いたまま、風呂に腰を落とす。
僕はレンに肩を抱きすくめられながら、レンの体の上にうつぶせに寝そべるような形で湯船の中に身を浸した。
お風呂のぬくもりと、レンのぬくもり。その両方に包まれて、僕の心臓がばくばく言っている。
「このまましばらく、お前のこと抱きしめてていいか?」
僕は顔を真っ赤にさせて、無言でうんとうなずいた。
レンは僕の額にちゅっとキスをした。
うわあああ 恥ずかしい恥ずかしい なんだそれ、うわああああ
「体で払ってくれてありがとな」
その物言いに、僕は「ん?」と思う。
よく分からないという面持ちで、レンを見る
レンはふっと笑った。
「心配するな、こんだけだよ。ただヨウのこと抱きしめて風呂に入りたい気分になった」
「あ……。え……」
僕は口をぱくぱくさせてしまう。
とんでもない、誤解をしていた。
そして完全に、僕が変な誤解していたことは、レンにばれている。
なんて恥ずかしい誤解をしてしまったんだ。
頼む忘れてくださいレン様、もう穴があったら入りたい!
とかなんとか一人脳内で大慌てな僕の頭が、ふいにレンの肩に引き寄せられた。
レンは引き寄せた僕の頭に、ぴっとりと自分の頬をくっつけた。
「こうしてると浄化される感じする」
僕はレンに頭ごと抱きすくめられて、恥ずかしいやら嬉しいやら幸せやら。
「じょ、じょう?か?」
「俺のこと綺麗にして、ヨウ。汚い俺のこと」
どくん、と心臓が高鳴った。
胸が切り裂かれるような心地がした。
「な、なんでそんなこと言うんだ、レンは汚くなんかないのに」
「汚いよ。ヨウには俺みたいになってほしくない。俺がお前を全力で守るから、誰にも指一本触れさせないから。だからもう、体で払うとか簡単に言わないでくれ」
「だ、だってそれじゃ、レンばっかり辛い思いをして、僕、なんにも!僕はレンに何もしてあげられてない!」
「俺はもう、もらってる。今こうやって、お前はそばにいてくれてるだろ」
「い、いるけど、なんの役にも」
「いるだけでいい。それだけでいい。俺はもう一人になりたくない……」
ずきっ、と何かが僕の心に刺さる。
この一年の、レンの孤独を思った。
レンはずっと一人ぼっちで、この地獄に耐え抜いたんだ。
どれほど苦しかっただろう、どれほど心細かっただろう。
「れ、レン!」
僕はいきなり大声を出した。レンがびっくりしたように、僕を抱きしめる腕を緩めた。
僕はレンに顔を上げた。
手を伸ばし、その両耳を手ではさみ、じっと見上げる。
「僕は、絶対にレンのそばを離れない。ずっとずっと一緒にいる。もうレンを一人ぼっちにしないって誓う!」
レンが驚いた顔で僕を見ている。
やがてその目が優しく細められ、顔が傾く。
その傾きは、ぞくりとするほど色気があって、僕の心臓は跳ね上がる。
レンの唇が、近づいてくる。
僕はぎゅっと目をつぶった。
唇に、レンの唇が触れた。柔らかくて、熱くて、少し濡れた唇の感触。
瞬間、幸せが全身を駆け抜けていった。
レンは唇を離した。僕は顔を上気させて、レンを見つめていた。
レンは大きな手で僕の顔を包んで、泣きそうな顔をした。
「すげえ、うれしい……」
そう言ってもう一度、僕をきゅっと抱き寄せた。
あったかくてたくましいレンの体が、僕の細い体を包み込んでくれる。
僕はレンの心臓の音に耳を傾けた。
レンはそのままずっと長い間、僕を抱きしめ続けた。
レンの鼓動はとても耳に心地よかった。
このあと僕たちは、互いになんとなく照れながら、普通に体を洗って、普通にお風呂を出て、普通に午後を過ごした。
普通とは言っても、僕はずっと、レンにキスされた余韻で頭の中はいっぱいだったけれど。
「飢餓」中にも濃密なディープキスをされたような気がするけど、あれは異常事態ということでとりあえず置いておいて……。
今のキスは「飢餓」中の出来事じゃないから、覚えていてもいいんだよね?
忘れろなんて言われないよね?
こんな僕がレンに必要とされている。
それが嬉しくてたまらなかった。
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