転・精・者/邪神の生贄 ~地獄みたいな異世界で、僕は憧れの彼に会う~

空月 瞭明

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33話 転生者の神様

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 次の朝起きると、レンが真剣な顔でノートみたいなのを読んでいた。
 僕は目をこすりながら聞いた。

「何読んでるのー?」

「昨日のあいつら、転生者狩りのハンターの私物。誰かが転生者について調べてまとめたノート、って感じだな。あいつらはきっと転生者の生態を知ってより効率的に狩るためにこれを所持してたんだろう。俺が知らないこともいっぱい書いてある。これはいいものゲットした」

「え、レンが知らないって、転生者のことは転生者自身が一番よく知ってるんじゃないの?」

「んなことはない。たとえばなんで俺は魔法が使えるのか、俺は知らなかった」

「そっかあ。そのノートに書いてあった?レンが魔法を使える理由」

「うん、転生時の状況に関連してるっぽいな。ヨウお前さー、転生した時、神様に会った?」

 僕は目を見開いた。

「神様!?ぜ、全然会ってないよ。青い光に包まれて、気づいたらもうこの世界にいた」

「あー、それ普通のやつだ」

「ちょ、ちょっと待って!まさかレンは神様に会ったの!?」

 僕はラノベとかアニメの異世界転生ストーリーのテンプレ(よくあるパターン)を思い出していた。
 テンプレでは、異世界に転生する前に、一旦、神様とか女神様と話をするんだ。
 そこで神様に特殊能力を授けられて、異世界で敵を爽快になぎ倒すんだ。

「俺は、ちらっとだけ覚えてるんだ。なんにもない空間に、人型の光があった。そいつが俺に語りかけて、でも途中から音声が途切れて、気づいたらこの世界にいた」

「すごい!そうだったんだ!」

「このノートには<神との対話>って書いてある。で、<神との対話>の記憶があるやつは能力値が高くて魔法とかも使えるっぽい。そして<神との対話>の記憶の量が多ければ多いほど、能力値は高いらしい」

「記憶、僕なんてゼロだよ」

 僕はレンがうらやましくなった。
 僕は転生者の中でもザコだったらしい。魔法、使えるようになりたかったなあ。

「どうも俺の記憶は、平均より多いみたいだ。神の姿しか覚えてない、とかでもある程度の魔法は使えるらしい。俺は一応、さわりだけ会話覚えてるから」

 僕は思わず前のめりになった。

「な、なんて!?神様、なんて言ってたの!?」

「俺が覚えてるのは、『そなたは今、時空に仕掛けられた呪い<異世界転生>により、ある世界へと飛ばされようとしている。転生先からは、<帰還の門>により元の世界へ……』こんだけ」

「時空にかけられた呪い……。帰還の門……」

「俺は今まであんなのただの夢だと思ってた。でも俺には実際、他の転生者より高い能力があるっぽいし、あれは本当に<神との対話>なのかもしんねえ」

「ちょ、ちょっと待って、帰還の門から元の世界に戻れるの!?」

 それって「異世界転生」じゃなくて「異世界転移」だな、僕達「転生者」じゃなくて「転移者」なんだな、でもこの世界では僕達を「転生者」と呼んでいるんだな、などとあさってなことを思ってしまったがそんなことは問題ではない。

 元の世界に、戻れる!?

 レンは重々しくうなずいた。

「きっとそうだ。このノートに、帰還の門の位置まで書いてある」

「えっ!?」

「西のミルドジャウ山の洞窟の奥に、古代の邪神崇拝者たちが作った秘密の扉があって、その中にあるって。これが神が言っていた帰還の門に違いない」

 レンはノートを閉じるとすくと立ち上がった。

「行こう、帰還の門。俺は元の世界に戻りたい」

 僕は一瞬、言葉に詰まった。そして視線を泳がせながらうなずく。

「う、うん、そうだね。僕も、戻りたいよ……」

 どうしたんだろう僕は。
 戻れるって聞いても、何故かちっとも心が華やがなかった。

 ヨルイチに戻る。
 それってどういうこと?

 あの気持ち悪い顔に戻って、レンに片思いするだけの僕に戻るっていうことだ。

 そうか、僕は。
 たとえ地獄のような異世界でも、レンを独り占めできる今の状況を手放したくないんだ。
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