勝手に魔王と呼ばれて困ってます。/【旧題】俺的魔王の楽しみ方。

きつねころり

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第19話

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 すっかり目の前のお客さんの事を放り出して念話に集中してしまった。

「あぁ、すまない。結論から言わせてもらいたいのだが」

 このお客さんの願いは叶えてやれないしな。

 そんな希望に満ちた目で俺を見られても困るのだが……。えー、凄い言いにくいよ。

「何処の誰が吹き込んだのかは知らないが、この城には魔王と呼ばれる人物は存在しない」

「そんな……。じゃあ、一体私はどうしたら良いのよ!」

 どうしたら良いのよって……どうしましょうね。いや、ホントに。

 お客さんはその場で崩れ落ちる様に膝をつき、項垂れてしまった。

「あ――、いや、そのなんだ。元の世界に帰りたい理由とかあるのか?」

 そりゃあるだろうけど、何となく話さなきゃな雰囲気だったからな。

 俺の声に応える様に顔を上げ、お客さんは俺の事を凝視している。

 よく見ると美少年って感じだな。何で男って判断したかって?

 いや、それは――。




 胸が無いし、ぱっと見、股間にアレがある。女性だとしたら不自然な膨らみが。

「私、こっちの世界?に来てから、一日だけ教会みたいな所でお世話になったの」

 お客さんは、何か、覚悟を決めた表情でポツポツと語り出した。

 あれ、これ長くなる?

「最初は夢だと思ってたし、とりあえず夢から覚めるまで流れに任せてみよう。そんな感じだったの」

 となると、このお客さんも眠っている時に召喚されたという事か。

「夢だと思ってたんだけど……」

「夢じゃないと確信した何かが起こった。と」

 お客さんの話に相槌を打つ。

 夢では説明がつかない事もあるんだろうしな。

「私ね、こんななり・・だけど……本当は女なの」

「ん?まぁ、世の中色々な事情もあるだろうし、特に気にする事では無いと思うんだが」

 心と体の性別が違う。それは別に気にする事でも無いと思ってるからなぁ。

 そういう人も居るだろうし。そんな事気にした事も無いからな。

「違うの!」

 お客さんは叫んだ。

 あれ、俺何か間違えたかな……。

「私!女だったの!この世界に来るまで!」

 えーっと……。

「つ……たのよ……」

 言いにくいのか、小声でよく聞き取れなかった。

「済まない、もう一度聞かせて貰えるだろうか」

 俺の言葉に、お客さんは息を吸い込み――、

「17年間生きてきて、触れた事も見た事も物が・・ついてたのよ!」

 そういってお客さんは顔を両手で覆いながら泣き出してしまった。

「……」
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