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第2章 【異世界召喚】冒険者
第58話 遭遇。
しおりを挟む「サリーじゃないか。こんな所でどうしたんだ?」
俺は見知った顔(と言っても、実際に顔を合わせたのは数回)のサリーに声を掛けた。
王城に居た時と同じメイド服を着ている。
「アオイ様、お久ぶりですね。その後……お元気そうですね」
隣に居たリンダさんをみて、皮肉って見せた。
「あぁ、まぁ、元気だよ。それより一人で来たのか?」
「いえ、まさか。連れもそろそろこちらに来る頃です」
連れ?って誰だろう。他のメイドさんとか使いの人かな。
「あの、アオイさん……こちらの方が結婚を考えている方ですか?」
リンダさんは、急に放り込んできましたね。どうやら、今目の前に居るメイドさんが結婚相手だと思っている様だ。
「いやいや、サリーとはまだそう言う仲では無いですよ」
俺は即答気味に否定した。ここはしっかり否定しておかなきゃだしな。
「「「まだ?」」」
あれ?可笑しいな。声が3つ聞こえた気がした。
「そうですか、アオイ様はサリーまで狙っておいでなのですね」
そう、その声を聞いた瞬間、身体が固まった。
別に悪い事をした訳では無いのに、何だろ。浮気の現場を目撃されたような……。
恐る恐る振り向くと、そこには髪をまとめ上げ、いつものメイド服姿でこちらを笑顔で見ているアリアが居た。
「ア、アリアっ、いや、さっきのは言葉のあやでな……その、他意は無いというか」
完全に失言だった。そもそも、サリーまでどうにかしようとか本当に思って無かったのだけど。
「そんな、他意は無いなんて……。私の事は遊びだったんですね」
しくしくと嘘泣きするサリーがこっちをちらりと見た。
「アオイさん……そんな人だったんですね」
リンダが呆れた表情で俺を見る。
「なっ!違う違う!いや、サリーもいつまでふざけてるんだ。って、この状況な一体なんだ?!」
完全に玩具にされているのだが、理解が追い付かなくて正直テンパっていた。
「ほらサリー、アオイ様で遊ぶのもそれ位になさい」
アリアがサリーにそう言うと、
「そうですね。失礼いたしました」
そう言って、ペコリと軽く頭を下げた。
「さて、冗談はさて置き、少しお話をしたいのですが宜しいですか?」
アリアはそう言うと、予めおさえていたであろう部屋へと俺達を連れて行った。
その部屋にベッドは無く、どちらかと言えば会議室の様な部屋だった。
テーブルを挟んで、2人掛けのソファーが置いてある。
俺とリンダさん、向かいにはメイド組が座っている。
「まず、自己紹介いたしましょう」
アリアは立ち上がり、
「アグストリア国、筆頭侍女を務めておりますアリア・サージェスです。こちらは、サリーサ・ナイトレイです。以後お見知りおきを」
サリーも立ち上がり、二人共綺麗な角度で頭を下げた。
「あ、すみませんっ、申し遅れました!斡旋所の受付をしてます、リンダ・ローゼリスです!今は、アオイさんの専属受付をしています!宜しくお願いします!」
リンダさんも立ち上がって、勢いよく頭を下げた。
いやいや、何ですかこれ。
「ふふ、リンダさんですね。これから宜しくお願いいしますね」
アリアの目が、険呑な光を帯びた気がした。
いや、分かってる。と言うか、アリアがリンダさんとの事を気付いている事が分かっている。
ややこしいな。
「あー、アリア。その、察しているかもしれないけど…リンダさんを嫁に貰います」
別にアリアの許可が必要と言う訳では無いが、この場ではアリアが主導権を握っている。そんな雰囲気だ。
「そうなんですね……。まぁ、そんな事だろうとは思いました」
「あ、アリアさんなんですね。アオイさんの仰っていたメイドさんは」
「まぁ!もうそんな話をするまでに仲良くなったのですね!それはそれは」
チラチラと横眼でアリアが俺の事を見るんだけど、何だろう、凄く視線が痛い気がする。
「そうですね。少しだけ二人でお話いたしませんか?リンダ様」
突然のアリアの申し出に、リンダさんも少し困っていたけど、
「分かりました。私も少しお話したいと思っていたので、お願いします」
そう言って二人で部屋の外に出て行った。
「ふぁー、一体何だったんだ。これは」
背もたれに体重を押し付けながら、軽く固まっていた身体を伸ばす。
「アオイ様にお話が有ったのでここまで来たのですが、まさか、他の女性とニャンニャンしているとは」
「いや、ニャンニャンて。どこで覚えたんだよ、その表現は」
現代でも使わないぞ、そんなの。
使わないよね?
「まぁ、冗談はさて置き、風の噂で耳にしましたが、早速ランクが上がったそうですね。素直におめでとう御座います」
「お、おう、ありがとう」
澄ました顔で褒められた。ちょっとドキッとするんだよ。そのギャップにさ。
「正直、ここまで早く結果を残せるとは思っていなかったので……。それにしてもアオイ様。このペースなら、高ランクの冒険者になるのも、かなり現実味があるのでは?」
「いやいや、流石にそれは楽観過ぎかな。どんな功績を挙げたら良いのかも全く分からんし」
今回は偶々オーガを討伐出来たから昇格出来たけども、この先は本当に未知。
ソロで狩りに出られる位には実力があるとは思うんだけど、そもそもの経験が無いからな。まぁ、それはやっていくうちに身につければ良いんだろうけどさ。
「そうですか。でも、これでまたランクが上がる様な事があれば、もう一人位増えてしまいそうな気がしますが……ご結婚相手が」
おいー!サリー、それはフラグと言ってだなぁ!
「いやいや、それは無い!とも言い切れない自分が悔しいな」
「あら、お認めになるのですか?流石、アオイ様。女たらしは伊達では無いですね」
「おい、人聞きの悪い。いや、全く否定できない……」
異世界に来て、何人と関係を結んだ?いや…まじ、駄目だろう。俺。
「ふふ、相変わらずですね。全く、そんなだから……」
「ん?何だって?」
「何でもありませんよ」
サリーが何か言おうとしてたけど、丁度良く二人が戻って来た。
「アリアさんったらっ」
「いえいえ、リンダさんこそ」
二人で笑いながら帰って来て、一体何を話してたのか聞いたら、
「それは女同士の秘密ですよ、ね、リンダさん」
「ふふ、そうですねアリアさん」
そう言って二人で「ふふふっ」なんて笑い合ってるんだけど。
何か怖いって。
サリーも少し引き気味になってるじゃんか。
「で、アリア達が此処に来たのはどうして?俺に何か用があったんだよな」
態々、街に来たついでに寄ってみた。ってのもあるとは思うけど、普段宿泊しているのは【銀のかまど亭】だ。【白い三日月】に来たという事は、明らかに俺を捜しての事だろう。
「そうでした。本題に入りますね」
アリアが姿勢を正し、真っすぐに俺を見据え、
「グズリンが脱獄致しました」
「は?」
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