本当の君

あいは

文字の大きさ
1 / 3

〈1〉

しおりを挟む
 「キャー!」
数人の女子生徒の悲鳴が、廊下に響いた。
その方を見てみると、5人くらいの男子生徒が倒れていた。
その真ん中に見覚えのある、金色の髪の男の子が立っていた。

 高校に入学する前のこと。
それは、塾の帰り道。
いきなり雨が降ってきて、屋根があるところに駆け込んだ。
鞄からタオルを出して、雨で濡れたところをふいていると、
「ニャー。」
猫の弱々しい鳴き声が、どこからか聞こえてきた。
「お前、一人なのか?」
続いて、男の子のそう言う声が聞こえてきた。
気になってそっちの方を見てみると…
毛布に包まれて、ダンボールの中にいる子猫に、輝く金色の髪の男の子がその子猫に話しかけていた。
「俺んち来るか?」
猫を優しく撫でながらそう言った。
「ニャー。」
それに答えるように、猫が鳴いた。
男の子は猫を抱いて、そのまま立ち去っていった。
(見た目によらず優しい人だな…。)
そんなことを思いながら、折り畳み傘をさして、家に向かって歩いて行った。

 -それが、彼との出会いだった。その時から私は…-

 (あの人、この前の…?)
でも、あんな目はしていなかった。
記憶の中の彼と、どこか違う。
優しい目をしていたのに、今は怒りに満ちた恐ろしい目をしていた。
でも、何かに怯えているようにも見えた。
しばらくして、周りの人は教室に行って、倒れていた5人と男の子は先生に怒られていた。
私はその光景を眺めていた。
気になっていた、あの男の子のことが…。
また会えて嬉しいんだ。
彼を見かけたときから、鼓動が速くなっていた。
すると、話を終えた男の子が私の方に近づいてきた。
「名前は、なんていうの?」
私の横を通りすぎようとしたときに、そう聞いた。
「…累野乱星。お前と同じクラスだ、松山令奈。」
(え…?)
累野くんはそう言って、教室とは反対の方向に向かって歩いて行った。
(なんで、私の名前を…?)

 教室に行って、席についた。
授業が始まる直前になって、ふと気づいたことがあった。
それは、私の隣の席の人のこと。
その人は、今まで学校に来たことがなかった。
〔お前と同じクラスだ。〕
累野くんはそう言った。
あんな目立つ髪色をした人なんて、すぐ見つけられる。
でも、今まで見かけたことがなかった。
(もしかして、私の隣の人って-。)
ガタッ。
隣でイスを引く音がした。
その方を見ると、
(やっぱり…。)
累野くんが立っていて、ちょうど目が合った。
「何だよ…。」
「ぅ、ううん。」
さっきとは違う、近寄るなオーラみたいなのを感じた。
「あの、さ…。」
でも、どうしても聞きたいことがあった。
〔松山令奈〕
「どうして私の名前、知ってたの?」
「……。うるせぇな、黙ってろ。」
怒り混じりの声でそう言われた。
「あ、うん…ごめん。」

 そう悲しそうに彼女が言った。
「あ…。」
言い過ぎたと思って、そう声をあげた。
でも、小さくて聞こえなかったのだろう。
それから松山は、黙って授業が始まるのを待っていた。
(俺は何も変われてねぇんだな…。)
結局あの日から、一歩も前に進めてない。
(俺は今まで、何を頑張ってきたんだろう…。)
こぼれそうになる涙をぐっとこらえた。
弱い自分を変えたくて、無理やり強くなった。
でも、俺のこの強さは、正しいのだろうか。
気にくわなかったら暴力をふる。
(それって…、あいつらと何も変わんないんじゃないか?)
俺は、そんな考えを全て押し殺した。
そうでもしなうと…
(俺が壊れちまう…。)
たった一つの進む道が、消えてなくなる…-

 俺が松山の名前を知ってるのは、昔、あいつに救われたから。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

いちばん好きな人…

麻実
恋愛
夫の裏切りを知った妻は 自分もまた・・・。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

10年前に戻れたら…

かのん
恋愛
10年前にあなたから大切な人を奪った

娼館で元夫と再会しました

無味無臭(不定期更新)
恋愛
公爵家に嫁いですぐ、寡黙な夫と厳格な義父母との関係に悩みホームシックにもなった私は、ついに耐えきれず離縁状を机に置いて嫁ぎ先から逃げ出した。 しかし実家に帰っても、そこに私の居場所はない。 連れ戻されてしまうと危惧した私は、自らの体を売って生計を立てることにした。 「シーク様…」 どうして貴方がここに? 元夫と娼館で再会してしまうなんて、なんという不運なの!

不倫の味

麻実
恋愛
夫に裏切られた妻。彼女は家族を大事にしていて見失っていたものに気付く・・・。

ある辺境伯の後悔

だましだまし
恋愛
妻セディナを愛する辺境伯ルブラン・レイナーラ。 父親似だが目元が妻によく似た長女と 目元は自分譲りだが母親似の長男。 愛する妻と妻の容姿を受け継いだ可愛い子供たちに囲まれ彼は誰よりも幸せだと思っていた。 愛しい妻が次女を産んで亡くなるまでは…。

悪意には悪意で

12時のトキノカネ
恋愛
私の不幸はあの女の所為?今まで穏やかだった日常。それを壊す自称ヒロイン女。そしてそのいかれた女に悪役令嬢に指定されたミリ。ありがちな悪役令嬢ものです。 私を悪意を持って貶めようとするならば、私もあなたに同じ悪意を向けましょう。 ぶち切れ気味の公爵令嬢の一幕です。

処理中です...