転生もの主人公ではなく悪女側室だったのでオタクは世界一の黒幕と結婚します

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二章・黒幕の妻になりたいのです

37・黒幕様の初恋です

 ミリアとノアが馬車の中にいる頃、皇城の後宮殿の一室ではソフィアが一人苛立ちを隠せずにいた。

 困った事になったわ…まさか、リリタリオン公爵があんなにもミリア・ロドムーシを思っていただなんて…

 パーティーでのミリアに対するノアの言動を思い出し眉を寄せる。

 あのリリタリオン公爵があんな悪女に肩入れするだなんて…おかげでルーデンがミリア・ロドムーシを毒殺しようとした事が沢山の貴族達の前で公になってしまったわ。しかも、そのルーデンは皇帝から狩猟大会まで自室から出る事もその他の人物達との接触も公務に関わる事さえも禁止された。でも、一番の問題は…

「…聞いた?王太子殿下の話」

っ‥!?

 扉越しに聞こえたメイドの話し声に扉の方へと顔を向ける。

「ミリア様を毒殺しようとした話でしょ?」

「そうそう。メイドが毒殺をしようとしたって話だったけど本当は王太子殿下が闇ギルドに依頼して毒殺しようとしたんだよね。本当に驚いたわ」

「それで、王太子殿下は陛下の命令で狩猟大会まで自室から出る事も他の人との接触も公務に関わる事も禁止されて今は自室で一人かぁ…ソフィア様、大丈夫かしら?」

「狩猟大会まで王太子殿下に会えないんだもん、お辛いでしょうね…」

「でも、仕方ないわ。悪女とは言え側室だったミリア様を毒殺しようとしたんだもの」

「そうね…」

…やっぱり状況は最悪ね

 通り過ぎて行くメイド達にソフィアは苦虫を噛み潰したような顔を浮かべた。

 今回の事でルーデンは悪評が広まり王太子としての評判が落ちた。次期皇帝を約束された状況でありながらも悪評のある王太子は最悪の場合他の貴族達を含めた民衆からの信頼を失う事になる可能性が高い。そうなれば、貴族達を含め民衆達は次期皇帝に大公を推す可能性が出てくる。そうなれば、せっかく手に入れた王太子妃の地位は水の泡になるかもしれないわ。どうにかしないと…

「リマイラだけでも厄介なのにミリアまで邪魔をするだなんて…」

タッ…

「そうだわ!」

 要は、いなくなれば後からでも話は好きなように捏造ねつぞう出来る。それに、願わくばリリタリオン公爵とシオルモディ公爵にも大打撃を与えられるかもしれないし…

 そう考えるなりソファアは不敵な笑みを浮かべたのだった。

 ❋

 時は戻り現在、ミリアが寝静まった深夜の世界一のギルドであるシルバーガラスの一室には肩まである黒髪をハーフ団子にし瞳を灰色に変え全身黒のタートルネックにズボンと皮のブーツを履きローブを羽織ったノアが部屋の中心に置かれたデスクに座り溜息を零していた。

「はぁ…‥」

「あれで、五回目よ。あんたのそれも気になるけど、マスターのあれも一体どうしたの?」

 同じく全身黒の装いに肩まである黒髪に翡翠色の瞳を持つシュリアは床の上で正座した状態で手足を拘束魔法にかけられ膝に微力の重力魔法をかけられた紺色の髪に茶色の瞳を持つ全身黒の装いのエルセンに声を掛けると、エルセンは不満気な声を上げた。

「自分の状況すら分かってないのに、マスターの事なんか分かるわけないだろ」

「確かに、そうね。聞いた私が馬鹿だったわ」

「はぁ…‥」

「六回目だ」

 エルセンとシュリアと共に居た同じく全身黒の装いに右手首にエメラルドグリーンのブレスレットと右手の人差し指に銀色の指輪をめたライムグリーンの短髪に茜色の瞳を持つ大柄な体格のデシットの呟きに二人はノアへと心配の目を向けた。

「あの…マスター、何かあったの?」

「っ…!?」

 シュリアの問いかけにノアは顔を上げ目を見開くと直ぐさま視線を落とした。

何か…あったと言えばあったと思うが…

 皇城から帰宅しミリアを部屋の前まで送った際の事を思い出しながらまた深い溜息を吐く。

「はぁ…‥」

『馬車での事ですが‥』

『分かっています!あれは、ですよね?決して、肉体的な接触じゃない事は分かっていますから』

『それは…』

『ご心配なく!今後もを忘れずに守りますので!では、おやすみなさい』

ガチャ…バタッ…

『あ…‥』

 確かに、お仕置だとは言ったがあんな風にハッキリと言われると何故か胸が痛む…

 平然とした顔でハッキリと言うなり部屋の中に入って行ったミリアの姿を思い浮かべるなり胸が痛んだ。

「マスター、何をそんなに悩んでいるのかは分かりませんが元気出して下さい!」

「…‥」

 励ます言葉をかけるなり笑みを浮かべるシュリアに一度、ミリアの事を頭の隅に置き口を開く。

「既に、防音魔法と感知魔法を張っている。普段通りで構わない」

「じゃあ、遠慮なく…

 そう返答をするシュリアと同時に背後に居たデシットはブレスレットと指輪を外しアンバー色の短髪にミントグリーンの瞳になり床の上で正座しているエルセンも茶髪に深緑色の瞳に戻った。

「それで、どうだ?」

「怪しい者も不審な行動をする者もいなかったわ」

「本当に、皇帝も王太子もその他の貴族達も何も気づいていなかったみたいですね」

 シュリアの言葉にエルセンが付け加えるなり視線を落とす。

「…その様だな」

「でも、結果的には成功したんだからいいんじゃない?」

「成功と言っても王太子は狩猟大会まで自室から出る事と人との接触と公務に関わる事を禁止されただけだ。今回の件で評判が落ちたとしてもこの程度なら何かしら皇帝が手を打ち評判は回復するだろう」

「まだ足りないと言うわけですね」

デシットが頷きそう言い肯定した。

「ああ」

「それじゃあ、またミリア・ロドムーシをするの?」

「…‥」

利用か…‥

シュリアの問いかけに押し黙り眉を寄せる。

 シュリアの言う通り彼女との婚約は鉱山を手に入れるだけでなく皇室に打撃を与える為のものだった。だが…

「魔塔主様?」

「…‥」

 王太子から無下にされ毒殺されそうになった悪評のある彼女を利用すればまた皇室に打撃を与える事が出来るだろう。だが、この先も彼女を利用するという事は彼女を危険に晒すという事だ。それは…したくない

「いや、次は俺が餌になる」

「えっ!?魔塔主様が!?」

「どの道、皇帝と約束した狩猟大会に出る事になっている。それで、皇帝は俺を消しにかかるだろう。それを、逆手に取る」

「マスター、その前にミリア様との結婚式はどうするんですか?王太子は出席出来ませんが、皇帝と王太子妃であるソフィア嬢は出席する可能性がありますよ」

 床の上で正座しながら淡々と問いかけるエルセンに無表情のまま口を開く。

「式を挙げる場所はリリタリオン家の本邸だ。そんな場所で皇帝が何かを仕出かす可能性は低い。ソフィア嬢も王太子が謹慎を食らっている状況で出席する可能性は低いだろう。それに、出席し何かを企んでいたとしてもリリタリオン家でそんな事をしたら危うくなるのはソフィア嬢の方だ」

「確かに、リリタリオン家は魔法の巣窟みたいな場所ですからね」

 納得した様にそう言い頷くエルセンを呆れた目で見つつ話を切り替える。

「話は変わるが、ソーワゴ男爵家から手を引く事にした」

「えっ!?」

 その言葉に驚きの声を上げるエルセンを他所にデシットへと視線を移す。

「そのせいで、ギルドに頼りに来る可能性があるが上手く追い払え」

「了解です」

 静かに頷くデシットからエルセンへと視線を移す。

「それと、エル」

「はい」

「ジュシュ子爵家を注意しろ」

「ジュシュ子爵家をですか?」

「怪しい行動があれば直ぐに報告しろ。分かったな?」

「それは、分かりましたけど…パーティーで何があったんですか?」

「大した事はない」

「あー…はい、分かりました」

 何かを察したかの様にそれ以上問いただす事はなく頷いたエルセンを他所にシュリアへと視線を移す。

「マリンの状況はどうだ?」

「問題ないわよ」

 得意げに笑みを浮かべ頷くシュリアに対し無表情のまま再度口を開く。

「その日が来たら知らせると伝えてくれ」

「分かったわ。それより、愚弟はどうするの?」

「今、騎士団を辞めれば疑われるだけだ。それに、まだ皇室の行動を知る者が必要な状況に彼奴の存在は必要不可欠だ。シュリアには悪いがシーユには引き続き騎士団に潜入してもらう」

「私は気にしてないわ。寧ろ、存分にこき使ってやって」

「ああ、そのつもりだ」

「うわぁ…彼奴に凄く同情するわ」

 当の本人がいない中で頷き合うシュリアとノアの姿にエルセンは心底同情したのだった。

カタッ…

「それにしても、魔塔主様が自ら餌になるなんて…もしかして、ミリア・ロドムーシの事を好きになったからだったりして?」

 机の上に座るなりからかう様な笑みを浮かべるシュリアに目を見開く。

「好き…?」

 彼女の一挙手一投足が気になったり彼女を悪く言う者達に腹が立ったり彼女の言動に心が動くのは彼女…ミリアの事を好きだと言う事だろうか…?

 そう思うなりミリアの姿が脳裏を過り小さく呟く。

「そうか…この気持ちは好きという事なんだな…」

「え…?」

「…?」

 僅かに口角を上げ柔らかな笑みを零すノアの姿にシュリアとデシットは呆気に取られエルセンの方を見ると、呆れた顔をしながらエルセンは肯定する様に頷いたのだった。


























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