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出会い
波乱万丈過ぎないですか?
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精神年齢三十路前の二十九歳社会人、死んだと思ったら見た目が赤ちゃんになってたとかありえるだろうか?否、ありえなさすぎて笑える。
「ぁ…」
鏡に映る自身の姿に死んだ直後の事を思い出す。
体も瞼も重くここがあの世なのかと信じずにはいられなかったが鼻をかすめる薬品の臭いと心配する男女の声に沈みかけていた意識が浮上した。
「幸い命に別状はありません。体にも目立った傷は見受けられませんので、数日安静にしていればすぐに良くなりますよ」
「本当ですか?あぁ、良かったぁ…!」
嘘?車に跳ねられて無傷で助かったの?そんな事ってある?奇跡じゃん! …ん?でも、心配してくれている女の人の声聞いた事ないんだけど…
「しかし、あんな火事の中で助かるとは奇跡としか言いようがないな」
ん?火事?
「本当ねぇ…無傷で安心したわ。でも、あやめは死んでしまったわ…」
あやめ?一体、何の話をしているんだろう?
「ああ、そうだな…まさか、子供がいるとは思わんだ」
「私も知らなかったわ。久しぶりに帰ってきたと思ったらまさか火事になって亡くなるなんて…それも、こんな可愛い赤ちゃんを残して…」
ん!????赤ちゃん?私が赤ちゃん!?
予想外の言葉に今すぐ瞼を開けて体を起こしたかったが全てが重く微動だにしなかった。
う…動かない…この鉛みたいな体は何?頭は異様に重いし指を動かすだけで精一杯…
「…大丈夫よ。私達があなたのお母さんの分まで守るからね」
指先がそっと額に触れ優しく撫でられる感触に瞼が開かない歯がゆさが募る。
うぅ…目を開けて状況確認したいのに開かない
「そうだな、俺達がこの子を守ろう」
「ええ、あやめの分までね」
うーん…状況を整理すると私は車の衝突事故の後、生まれ変わってこの赤ちゃんに転生して早々に火事になり実の母親が亡くなり私一人が助け出されたって事かな?そうすると、目の前の男女は実の母親の友人?か何かでこれからは育ての親?になってくれるって事でいいのかな…?んー、複雑で分からなくなってきた。とりあえず、今は睡魔には勝てないわ……
赤ちゃんに転生したからなのか?その後の私は睡魔と意識の浮き沈みと戦い続けそこから、まともに動ける様になるまで二年の歳月がかかった。その間にも周りの声には聞こえている間は必ず聞くようにしたため情報は断片的にだが得る事は出来たのだった。
「ぅ…‥」
今までの情報を合わせると、どうやらこの世界は鬼と人間が共存する世界らしい。
育ての親となった奥さんの駒と旦那さんの次郎は三十代半ばの夫婦であり、二人は共に小さな定食屋を営んでいた。そして、その定食屋に時々鬼の風貌のお客さんがやって来る。鬼達は人間からしたら絶対に逆らえない程の力を持つらしく、人間は鬼に怯えながら生きていた。
そして、この着ている服も和服だし…
自身が着ている紺色の甚平を見ながら、夫婦が着ていた着物を思い出しこの世界の衣服の主流が和服なのだと思った。
貧困格差、鬼と人間の上下関係。色々と思う所はあるけど、一番の問題は…‥これだよね?
鏡に映る自身の姿に初めて瞼を開けた日を思い出す。
「な、なんて事だ…」
「そんな…‥」
初めて瞼を開け、目の前に映る駒と次郎の姿は喜びではなく戸惑いと畏怖の目だった。
どうしてそんな顔で私を見るの?
「鬼の印はなかったはずだよな?」
「ええ、何処にも無かったわ」
鬼の印?何それ?
「じゃあ、何でこんな目の色なんだ?」
「分からないわ。体に異常はないってお医者様には言われたし…」
目の色?何かおかしいの?
「そうだな…だが、この目を他人が見たら不気味がられるかもしれん。もしくは、鬼と誤解する可能性も…」
「やめてっ!そんな事聞きたくないわ!この子は鬼でも何でもないわ。普通の人間よ!それに、この子はあやめの子なのよ…例え、普通じゃなかったとしても私はこの子を守るって決めたの」
泣きそうな顔で小さく笑みを浮かべる駒に渋い顔をしていた次郎も笑みを浮かべ頷いた。
「そうだな…あやめの子であり、俺達の子だ」
「ええ、私達が絶対あなたを守るから…‥花火」
花火…そう名付けられた名前と優しく笑みを浮かべる二人の姿を私は瞼に刻みつけた。
真っ青な海のような右目と真っ赤なルビーのような左目を鏡越しに見つめ私は自身のぷよぷよの頬に小さな手を当てた。
私でも思うよ。左右対称の目の色を普通じゃないって。でも、夫婦は言っていた。鬼じゃないって。鬼の印もないって。鬼の印が何なのかはまだ分からないけどあの夫婦が言うんだから私は人間だ。それに、他の人が何を言ってもあの夫婦さえ信じてくれたら私はそれでいい。
二年間の夫婦の優しい言葉を思い出し思わず頬が緩む。
うーん、将来有望な二歳児だ。これは。
鏡に映る自身の姿に思わず見とれてしまいそうになりながらもふと、ある疑問が浮かんだ。
鬼と人間の世界……そう言えば転生する前にやっていた乙女ゲームって鬼と人間の世界の乙女ゲームだったよね?確か、【寵鬼~鬼の姫はあなただけ】って言うゲームでイケメンの鬼の攻略対象者達とその鬼達に愛される寵鬼と呼ばれるヒロインのゲーム。だけど、そのゲームにこんな左右対称の目を持つ女の子なんていたっけ…?
ゲームのキャラクターを思い出すが自身と重なる女の子のキャラクターは浮かばなかった。
まぁ…モブかなんかかもしれないし、それはそれでラッキーかも。面倒な物語に関わらずに済むからね。そもそも、この世界がゲームの世界だと言う確証はないわけだから今は生きて行く事だけを考えよっと…
「花火ー?あら、また鏡見てたの?ふふふっ」
襖から顔を出した駒に顔を向けるとその優しい笑みに不安や疑問が一気に吹き飛んだ。
やめやめっ!今はこの幸せに身を委ねよっと…
そう、この幸せが永遠に続くと信じていた。あの日の冬が来るまでは……
「ぁ…」
鏡に映る自身の姿に死んだ直後の事を思い出す。
体も瞼も重くここがあの世なのかと信じずにはいられなかったが鼻をかすめる薬品の臭いと心配する男女の声に沈みかけていた意識が浮上した。
「幸い命に別状はありません。体にも目立った傷は見受けられませんので、数日安静にしていればすぐに良くなりますよ」
「本当ですか?あぁ、良かったぁ…!」
嘘?車に跳ねられて無傷で助かったの?そんな事ってある?奇跡じゃん! …ん?でも、心配してくれている女の人の声聞いた事ないんだけど…
「しかし、あんな火事の中で助かるとは奇跡としか言いようがないな」
ん?火事?
「本当ねぇ…無傷で安心したわ。でも、あやめは死んでしまったわ…」
あやめ?一体、何の話をしているんだろう?
「ああ、そうだな…まさか、子供がいるとは思わんだ」
「私も知らなかったわ。久しぶりに帰ってきたと思ったらまさか火事になって亡くなるなんて…それも、こんな可愛い赤ちゃんを残して…」
ん!????赤ちゃん?私が赤ちゃん!?
予想外の言葉に今すぐ瞼を開けて体を起こしたかったが全てが重く微動だにしなかった。
う…動かない…この鉛みたいな体は何?頭は異様に重いし指を動かすだけで精一杯…
「…大丈夫よ。私達があなたのお母さんの分まで守るからね」
指先がそっと額に触れ優しく撫でられる感触に瞼が開かない歯がゆさが募る。
うぅ…目を開けて状況確認したいのに開かない
「そうだな、俺達がこの子を守ろう」
「ええ、あやめの分までね」
うーん…状況を整理すると私は車の衝突事故の後、生まれ変わってこの赤ちゃんに転生して早々に火事になり実の母親が亡くなり私一人が助け出されたって事かな?そうすると、目の前の男女は実の母親の友人?か何かでこれからは育ての親?になってくれるって事でいいのかな…?んー、複雑で分からなくなってきた。とりあえず、今は睡魔には勝てないわ……
赤ちゃんに転生したからなのか?その後の私は睡魔と意識の浮き沈みと戦い続けそこから、まともに動ける様になるまで二年の歳月がかかった。その間にも周りの声には聞こえている間は必ず聞くようにしたため情報は断片的にだが得る事は出来たのだった。
「ぅ…‥」
今までの情報を合わせると、どうやらこの世界は鬼と人間が共存する世界らしい。
育ての親となった奥さんの駒と旦那さんの次郎は三十代半ばの夫婦であり、二人は共に小さな定食屋を営んでいた。そして、その定食屋に時々鬼の風貌のお客さんがやって来る。鬼達は人間からしたら絶対に逆らえない程の力を持つらしく、人間は鬼に怯えながら生きていた。
そして、この着ている服も和服だし…
自身が着ている紺色の甚平を見ながら、夫婦が着ていた着物を思い出しこの世界の衣服の主流が和服なのだと思った。
貧困格差、鬼と人間の上下関係。色々と思う所はあるけど、一番の問題は…‥これだよね?
鏡に映る自身の姿に初めて瞼を開けた日を思い出す。
「な、なんて事だ…」
「そんな…‥」
初めて瞼を開け、目の前に映る駒と次郎の姿は喜びではなく戸惑いと畏怖の目だった。
どうしてそんな顔で私を見るの?
「鬼の印はなかったはずだよな?」
「ええ、何処にも無かったわ」
鬼の印?何それ?
「じゃあ、何でこんな目の色なんだ?」
「分からないわ。体に異常はないってお医者様には言われたし…」
目の色?何かおかしいの?
「そうだな…だが、この目を他人が見たら不気味がられるかもしれん。もしくは、鬼と誤解する可能性も…」
「やめてっ!そんな事聞きたくないわ!この子は鬼でも何でもないわ。普通の人間よ!それに、この子はあやめの子なのよ…例え、普通じゃなかったとしても私はこの子を守るって決めたの」
泣きそうな顔で小さく笑みを浮かべる駒に渋い顔をしていた次郎も笑みを浮かべ頷いた。
「そうだな…あやめの子であり、俺達の子だ」
「ええ、私達が絶対あなたを守るから…‥花火」
花火…そう名付けられた名前と優しく笑みを浮かべる二人の姿を私は瞼に刻みつけた。
真っ青な海のような右目と真っ赤なルビーのような左目を鏡越しに見つめ私は自身のぷよぷよの頬に小さな手を当てた。
私でも思うよ。左右対称の目の色を普通じゃないって。でも、夫婦は言っていた。鬼じゃないって。鬼の印もないって。鬼の印が何なのかはまだ分からないけどあの夫婦が言うんだから私は人間だ。それに、他の人が何を言ってもあの夫婦さえ信じてくれたら私はそれでいい。
二年間の夫婦の優しい言葉を思い出し思わず頬が緩む。
うーん、将来有望な二歳児だ。これは。
鏡に映る自身の姿に思わず見とれてしまいそうになりながらもふと、ある疑問が浮かんだ。
鬼と人間の世界……そう言えば転生する前にやっていた乙女ゲームって鬼と人間の世界の乙女ゲームだったよね?確か、【寵鬼~鬼の姫はあなただけ】って言うゲームでイケメンの鬼の攻略対象者達とその鬼達に愛される寵鬼と呼ばれるヒロインのゲーム。だけど、そのゲームにこんな左右対称の目を持つ女の子なんていたっけ…?
ゲームのキャラクターを思い出すが自身と重なる女の子のキャラクターは浮かばなかった。
まぁ…モブかなんかかもしれないし、それはそれでラッキーかも。面倒な物語に関わらずに済むからね。そもそも、この世界がゲームの世界だと言う確証はないわけだから今は生きて行く事だけを考えよっと…
「花火ー?あら、また鏡見てたの?ふふふっ」
襖から顔を出した駒に顔を向けるとその優しい笑みに不安や疑問が一気に吹き飛んだ。
やめやめっ!今はこの幸せに身を委ねよっと…
そう、この幸せが永遠に続くと信じていた。あの日の冬が来るまでは……
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