鬼の乙女ゲーム世界で裏チートで生き残りたいだけなのに

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始まりの城

双子の前では感情を無にしましょう

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 紫音に遭遇した次の日、昼食後の本城では女中達や侍従達だけではなく鬼衆王達やその側室達までもが慌ただしく動いていた。

冷と暁は嫌そうだったなぁ…

サッサッ…

 本城周辺の桜の木の下で箒で掃きながら先程見えた二人の顔を思い浮かべる。

まぁ、女中見習いの私には関係ない事だけど…

 今日は週に一度の勉強会の日。本城二階で行われる勉強会は時雨が主導とし鬼衆王や側室、鬼衆王の右腕や左腕の侍従と女中に勉学を教えていた。既に学習済みの者とある程度の年齢にならなければ学習不可能な者以外は除き強制的に参加しなければならない為、嫌でも彼等は参加していた。

黒道は見張り役だろうか…?

 暁の背後にいた黒道の姿を思い出し勝手に推測する。

 朱夏が暁はよく稽古や役職を放り出していなくなるって言っていたから、やっぱり見張り役だろうな…

普段の暁の行動を思い出し勝手に納得する。

サッサッ…サッ…

「ねぇ、誰?何で黒の間の女中の服を着てるの?」

っ…!?

 突然、背後から声が掛けられ振り向くと檸檬色の髪に茶色の瞳を持つ瓜二つな五歳ぐらいの少年が二人立っていた。

何でここにいるの!?本城にいるはずじゃ…?

 直ぐに顔を背けて内心動揺していると、少年達は互いに顔を見合せて話を続けた。

黄蘭おうらんは知ってる?」

 右耳に桃色の小さな桃の花のピアスをつけた少年が隣の外見が瓜二つの少年に問いかけた。

「ううん、知らな~い。黄桃おうとうも知らないの?」

 左耳に白色の小さな蘭の花のピアスをつけた少年こと黄蘭が聞き返すと、黄桃は笑みを浮かべてこちらに視線を移した。

「僕も知らないよ。ねぇ、見たこともないただの人間が何で黒の間の服を着てるの?」

「っ…」

 話すしかないのか…こうなってしまった以上、絶対に感情を無にしないと…それか、仕事が終わる事を考えるとか?前に食べたお団子の事を考えるとか?

意を決して、双子に向き合い口を開く。

「私は最近黒道様の計らいで黒の間で女中見習いとして働く事になった者です。疑いがあるのなら黒道様か時雨様に聞いて下さって構いません。御二方のおかげでここで働けているので‥」

「ふ~ん、黒道の計らいでね…?」

「どう思う?黄桃」

 黄蘭が問いかけるとその瞬間、黄桃の茶色の瞳が金色に変わった。

 早く掃き終わって黒の間に戻らないと!まだやる事が沢山あるのに遅くなったら夜ノに怒られる!

「…‥嘘じゃないみたいだよ。でも、怪しんだよね」

「確かに、そうだね。こんなただの人間の子供が黒道の計らいだからって女中見習いになれる?」

「そうそう~!桜鬼城に入るのは簡単じゃないのにね!やっぱりおかしいよ!」

ザッ…

 少しずつ距離を詰めてくる双子に思わず後退りをする。

「私は正真正銘黒道様に雇われた者です。疑うなら黒道様か時雨様に聞い‥」

「僕達はね、自分の目で見て判断する主義なんだ~!」

「だからね、怪しいと思ったり危ないと判断したら自分達の手で片付けるって決めてるんだ~!」

ザッ‥ザッ…

「そうなんですね…ですが、私は何も怪しい事なんて‥」

「君の話を信じるわけないでしょ?」

「そうそう!嘘か本当は僕達が決める事だよ?」

「特にその左目とか怪しさしかないよね~?」

「っ…」

 黄桃が左目を隠す黒い手拭いを指摘し必死に感情を無にする。

「本当だ!何で隠してるの~?怪しいな~?」

「それ、取って見せてよ?」

「いえ、それは‥」

「え~?見せられないの?怪しい~!」

「じゃあ、僕達が取ってあげようか?」

「そうだね~!ちゃんと確認しよう~!」

「っ…」

オダンゴオイシイ‥マタ、タベタイ…

 感情を無にするのが限界になり黄桃の手が黒い手拭いに伸ばされた瞬間、必死にお団子の事を考えた。

「は…?」

「どうしたの?黄桃?」

 伸ばした手が突然ピタッと止まり戸惑いの声を漏らした黄桃に、隣にいた黄蘭が疑問の声を漏らした。

「何でもない…」

 金色の瞳が揺れ動揺する黄桃の姿に黄蘭は戸惑いの表情を浮かべた。

「っ…!?」

再度手を伸ばした黄桃に思わず瞼を閉じる。

「見~つけた!こんな所で何してるの?」

「わっ!?」

「えっ!?」

 突然、聞こえた少年の声と共に双子の驚く声が聞こえ恐る恐る瞼を開ける。

この声、聞き覚えがある様な…?

「っ…!?」

 瞼を開けた瞬間、双子の肩に手を置き笑みを浮かべる肩まである薄紫色の髪に若葉色の瞳を持つ紫音を見るなりその場で固まった。

お…終わった……






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