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赤月の桜
その毒殺計画、私が止める!
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次の日、赤月の桜の宴が始まり朝から女中達や侍従達は忙しく働いていた。
「月華です。失礼します…」
…パタンッ…
戸を開き中に入るなり座りながら静かに閉めると鏡台の前に座る一人の女性に向き直る。
「待っていたわ。こっちに来てちょうだい」
黒色を基調とした淡い桃色と赤色の花びらが散りばめられた柄の着物に金色の帯をし赤い紅を引いた咲羅はいつもの柔らかい雰囲気とは違い凛としたかっこいい姿になっていた。
「はい」
咲羅の傍に近寄り腰を下ろすといつもの優しい笑みを向けられた。
「鏡の前に座ってくれる?」
「はい」
言われるがままに鏡台の前に座ると、背後から細くて白い指先が肩まである黒髪に触れた。
「ずっとこうしたかったの」
「あの…?」
桜の絵柄が描かれた黒色の櫛を手に黒髪を梳いていく咲羅に戸惑いの声が漏れる。
「髪を束ねた方が働きやすいでしょ?だから…これ解いてもいいかしら‥?」
「…‥」
鏡越しに咲羅が恐る恐る問いかける声に指先が左目を隠す黒い手拭いの結び目に触れているのに気づき黙り込む。
でも、咲羅なら…
「…はい」
考え込んだ末に重々しく頷くと咲羅の細長い綺麗な指先がするりと黒い手拭いを解き左目のルビーの様な真っ赤な瞳が顕になった。
「っ…!?」
やっぱりそういう顔になるよね…
鏡越しにルビーの様な真っ赤な左目を見るなり驚く咲羅に暗く影を落とす。
「…やっぱりそうだったのね」
「…?」
小さく呟かれた声に顔を上げ鏡越しに咲羅を見ると柔らかな笑みが返ってきた。
「あなたのその瞳、凄く綺麗ね!」
「っ…」
「後は髪だけね!これをこうして…‥」
嫌な顔せず笑みを浮かべながら髪を梳き黒髪がまとめられると何かが髪に挿され声が掛けられた。
「…ほら、可愛い!」
咲羅の言葉に鏡を見ると下の方でお団子状にまとめられた黒髪には桜の花の飾りが付いた赤色の簪が挿されていた。
「こ…これは頂けません!」
パシッ‥
「っ‥!?」
「だーめ!」
慌てて挿された簪を抜き取ろうとすると直ぐ様手を掴まれ止められた。
「私がしたくてしてるのよ?この私の好意を無下にするの?」
「い、いえ…でも‥」
「言い訳無用!」
「っ…」
半ば強引に黙らせる咲羅に降参とばかりに口を噤む。
「月華は幼い頃の私に似てるわ」
「咲羅様の幼い頃にですか…?」
「私は母親に売られて桜鬼城に来たの」
「え…」
「私は母親と二人で暮らしていたんだけど貧乏だったせいで六歳の時に桜鬼城に売られて火炎…暁の父親の二番目の側室になったの。だけど、桜鬼城に来たばかりの私は誰の事も信じられなかった。黒道も夜ノも火炎も皆信じられなくて孤立してたの…」
「…‥」
ゲーム内では咲羅の幼い頃の話はヒロインと攻略対象者達が関わる際に文章で断片的にしか書かれていなかった。ヒロインや攻略対象者達の目線で書かれていた為、幼い頃に咲羅がどういう気持ちで過ごしていたかなんて尚更書かれている筈もなかった…
「でも、少しずつ皆の優しさを信じる様になって一人じゃなくなったの…だからね、月華も周りの人達の事をもっと信じてみて?」
「…‥」
「手始めに私だけでも信じてみない?えっと、私は少しずつ皆の優しさを信じる様になって頼る様になって今は凄く幸せだから…月華にもそうなって欲しくて…」
「…咲羅様の事は信じてますよ」
「え…?」
「それに、私は一人じゃありません」
鏡越しにヒロインと同じ翡翠色の瞳を真っ直ぐに見つめて言い返すと咲羅は陽だまりのような笑顔を浮かべた。
パチンッ!
咲羅は何かを察したかのように両手を合わせて叩いた。
「…?」
「それって、好きな人かしら?」
ガタッ!
突拍子な発言に思わず倒れそうになりながらも慌てて振り向いて弁解する。
「違いますっ!変な誤解は止めて下さい!」
「あら?違ったの?月華は可愛いから好きな人の一人や二人いるのかと思ったのに…」
はぁ…この人は本当に娘であるヒロインと瓜二つなんだから…‥
片手を頬に当て困った様に目尻を下げる咲羅の姿がヒロインと重なって見えた。
天然で誰にでも優しくて陽だまりのような笑顔をするヒロインと同じだ
「咲羅様」
「…?」
シャラ…
「この簪…大事にしますね」
桜の簪に触れ目の前の陽だまりのような咲羅にそう言いながら内心はこれから始まる毒殺計画を絶対に止めると決意した。
‥…って言ったのはいいけど、流石に普段使いは周りの女中達から反感を買いそうだから無理だ
ザー…ドタドタドタッ…
咲羅と別れた後、夜ノに頼み込み絶対に台所から出ないという約束で食器を洗う係に参加させてもらった私は宴が始まるなり踏み台を使いながら次々に来る洗い物を洗っていた。
「次、焼き物を運んでちょうだい!」
「はい!」
背後で料理を作る係と運ぶ係の女中達がやり取りしているのを聞きながら未だに来ない李に内心動揺する。
毒を入れるとしたら台所かと思ったけど違うのかな?でも、他の場所で料理に毒を入れるだなんて考えられないし…
「うわぁ…!美味しそうな料理ですね!」
「李様!?」
っ…!?
鈴の鳴る様な可愛らしい声がその場に響き女中達の驚く声と共に洗う手を止め振り返る。腰まである橙色の長い髪に檸檬色の瞳を持ち鬼灯の花の柄の着物を着た六歳ぐらいの彼女は双子の姉妹の姉であり姉妹揃って鬼衆王の双子の側室である。妹は黄蘭の姉である彼女は黄桃の側室という双子同士の関係であった。
「何故、この様な場所においでになられたのですか?今は宴の最中の筈では…」
「黄桃様が口にする特別な料理ですもの!誰よりも先に見てみたくて…駄目でしたか?」
「い、いえ!そんな事はございませんが…」
「ふふっ、ご迷惑はおかけしません。ただこの桜の宴の三日間だけこうして少し覗かせて下さい。少し見たら直ぐに宴に戻りますから」
「それなら構いませんが…」
一件、大人しそうで可愛らしい容姿をした李の言葉巧みな発言にその場にいた女中達は押し黙り戸惑いながらも作業を再開した。
この世界で二番目の悪女、李…‥黄桃の事が好きで黄桃の為なら何でもする嫉妬深い人物。そして、この宴において菫に利用され咲羅に毒を盛った人物だ。
「月華です。失礼します…」
…パタンッ…
戸を開き中に入るなり座りながら静かに閉めると鏡台の前に座る一人の女性に向き直る。
「待っていたわ。こっちに来てちょうだい」
黒色を基調とした淡い桃色と赤色の花びらが散りばめられた柄の着物に金色の帯をし赤い紅を引いた咲羅はいつもの柔らかい雰囲気とは違い凛としたかっこいい姿になっていた。
「はい」
咲羅の傍に近寄り腰を下ろすといつもの優しい笑みを向けられた。
「鏡の前に座ってくれる?」
「はい」
言われるがままに鏡台の前に座ると、背後から細くて白い指先が肩まである黒髪に触れた。
「ずっとこうしたかったの」
「あの…?」
桜の絵柄が描かれた黒色の櫛を手に黒髪を梳いていく咲羅に戸惑いの声が漏れる。
「髪を束ねた方が働きやすいでしょ?だから…これ解いてもいいかしら‥?」
「…‥」
鏡越しに咲羅が恐る恐る問いかける声に指先が左目を隠す黒い手拭いの結び目に触れているのに気づき黙り込む。
でも、咲羅なら…
「…はい」
考え込んだ末に重々しく頷くと咲羅の細長い綺麗な指先がするりと黒い手拭いを解き左目のルビーの様な真っ赤な瞳が顕になった。
「っ…!?」
やっぱりそういう顔になるよね…
鏡越しにルビーの様な真っ赤な左目を見るなり驚く咲羅に暗く影を落とす。
「…やっぱりそうだったのね」
「…?」
小さく呟かれた声に顔を上げ鏡越しに咲羅を見ると柔らかな笑みが返ってきた。
「あなたのその瞳、凄く綺麗ね!」
「っ…」
「後は髪だけね!これをこうして…‥」
嫌な顔せず笑みを浮かべながら髪を梳き黒髪がまとめられると何かが髪に挿され声が掛けられた。
「…ほら、可愛い!」
咲羅の言葉に鏡を見ると下の方でお団子状にまとめられた黒髪には桜の花の飾りが付いた赤色の簪が挿されていた。
「こ…これは頂けません!」
パシッ‥
「っ‥!?」
「だーめ!」
慌てて挿された簪を抜き取ろうとすると直ぐ様手を掴まれ止められた。
「私がしたくてしてるのよ?この私の好意を無下にするの?」
「い、いえ…でも‥」
「言い訳無用!」
「っ…」
半ば強引に黙らせる咲羅に降参とばかりに口を噤む。
「月華は幼い頃の私に似てるわ」
「咲羅様の幼い頃にですか…?」
「私は母親に売られて桜鬼城に来たの」
「え…」
「私は母親と二人で暮らしていたんだけど貧乏だったせいで六歳の時に桜鬼城に売られて火炎…暁の父親の二番目の側室になったの。だけど、桜鬼城に来たばかりの私は誰の事も信じられなかった。黒道も夜ノも火炎も皆信じられなくて孤立してたの…」
「…‥」
ゲーム内では咲羅の幼い頃の話はヒロインと攻略対象者達が関わる際に文章で断片的にしか書かれていなかった。ヒロインや攻略対象者達の目線で書かれていた為、幼い頃に咲羅がどういう気持ちで過ごしていたかなんて尚更書かれている筈もなかった…
「でも、少しずつ皆の優しさを信じる様になって一人じゃなくなったの…だからね、月華も周りの人達の事をもっと信じてみて?」
「…‥」
「手始めに私だけでも信じてみない?えっと、私は少しずつ皆の優しさを信じる様になって頼る様になって今は凄く幸せだから…月華にもそうなって欲しくて…」
「…咲羅様の事は信じてますよ」
「え…?」
「それに、私は一人じゃありません」
鏡越しにヒロインと同じ翡翠色の瞳を真っ直ぐに見つめて言い返すと咲羅は陽だまりのような笑顔を浮かべた。
パチンッ!
咲羅は何かを察したかのように両手を合わせて叩いた。
「…?」
「それって、好きな人かしら?」
ガタッ!
突拍子な発言に思わず倒れそうになりながらも慌てて振り向いて弁解する。
「違いますっ!変な誤解は止めて下さい!」
「あら?違ったの?月華は可愛いから好きな人の一人や二人いるのかと思ったのに…」
はぁ…この人は本当に娘であるヒロインと瓜二つなんだから…‥
片手を頬に当て困った様に目尻を下げる咲羅の姿がヒロインと重なって見えた。
天然で誰にでも優しくて陽だまりのような笑顔をするヒロインと同じだ
「咲羅様」
「…?」
シャラ…
「この簪…大事にしますね」
桜の簪に触れ目の前の陽だまりのような咲羅にそう言いながら内心はこれから始まる毒殺計画を絶対に止めると決意した。
‥…って言ったのはいいけど、流石に普段使いは周りの女中達から反感を買いそうだから無理だ
ザー…ドタドタドタッ…
咲羅と別れた後、夜ノに頼み込み絶対に台所から出ないという約束で食器を洗う係に参加させてもらった私は宴が始まるなり踏み台を使いながら次々に来る洗い物を洗っていた。
「次、焼き物を運んでちょうだい!」
「はい!」
背後で料理を作る係と運ぶ係の女中達がやり取りしているのを聞きながら未だに来ない李に内心動揺する。
毒を入れるとしたら台所かと思ったけど違うのかな?でも、他の場所で料理に毒を入れるだなんて考えられないし…
「うわぁ…!美味しそうな料理ですね!」
「李様!?」
っ…!?
鈴の鳴る様な可愛らしい声がその場に響き女中達の驚く声と共に洗う手を止め振り返る。腰まである橙色の長い髪に檸檬色の瞳を持ち鬼灯の花の柄の着物を着た六歳ぐらいの彼女は双子の姉妹の姉であり姉妹揃って鬼衆王の双子の側室である。妹は黄蘭の姉である彼女は黄桃の側室という双子同士の関係であった。
「何故、この様な場所においでになられたのですか?今は宴の最中の筈では…」
「黄桃様が口にする特別な料理ですもの!誰よりも先に見てみたくて…駄目でしたか?」
「い、いえ!そんな事はございませんが…」
「ふふっ、ご迷惑はおかけしません。ただこの桜の宴の三日間だけこうして少し覗かせて下さい。少し見たら直ぐに宴に戻りますから」
「それなら構いませんが…」
一件、大人しそうで可愛らしい容姿をした李の言葉巧みな発言にその場にいた女中達は押し黙り戸惑いながらも作業を再開した。
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