鬼の乙女ゲーム世界で裏チートで生き残りたいだけなのに

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赤月の桜

修羅場に出会しました

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 明朝、日華を喜ばせる為に街へと出かける事に決めた黒道はふと月華の事を思い出し何処にいるかと女中達に尋ねたが誰も居場所を知る者はいなかった。

 だから、何か知ってるかと時雨の部屋を尋ねたが…

 巳の刻にも関わらず布団が敷かれその布団に何故かいる月華。そして、いつもより疲れがなさそうな時雨の顔を見るなり疑いの目を時雨に向ける。

「どういう事か説明してもらおうか?…時雨」

「はぁ…何か誤解をしているようですが、私は月華を頼まれただけですよ」

「頼まれただぁ?俺はお前に自分の所の女中を頼んだ覚えはない!」

「黒道ではなく冷にです。居場所のない月華をここで寝かせて欲しいと」

「居場所がないだと…?」

 どういう事だ?女中である月華には女中部屋がある筈だが…

「そのままの意味です。説明は後でしますよ」

「今しろ!納得がいかねぇ!」

「月華がいる前でしていい話ではありません。月華を傷つけたいのですか?」

 スーと細められた藍色の瞳に布団にいる月華を見つつ諦めた様に溜息を零す。

「はぁ…分かった。後で詳しく話せよ?」

「ええ、黒道には聞いてもらわなければいけませんから」

 時雨の棘のある物言いに只事ではない事を察した。

一体、月華に何があったんだ…?

「それより、用事が無いのなら帰って下さい。ずっとここに居られても困りますので」

「用事ならある…って、まだ解決してねぇ事があるだろ?」

「何か不満でも?」

「時雨、俺の所の女中に手を出したりしてねぇだろうな?」

 歳の差があるとはいえ女に興味のねぇ奴が一晩一緒に寝ただなんて怪しいにも程がある

「馬鹿馬鹿しい」

「はぁ?馬鹿馬鹿しいだぁ?」

「考えてもみて下さい。冷が私に月華を頼んで来たのは私が女嫌いの男色だからです。それに、月華は六つですよ?流石の私でも手は出しません」

 確かに、時雨は道理を重んじる奴だ。六つの奴に手を出すような真似はしねぇか…

「…そうだな、疑って悪かった」

「いえ、自分の所の女中を守ろうという姿勢は当たり前ですからね」

やっぱり何か物言いに棘があるような…

 時雨の含みのある言い方に内心モヤモヤとした気持ちになる。

「それで、黒道の用事と言うのは何ですか?」

「あ、そうだった…月華」

「はい」

 それまで黙って聞いていた月華に視線を移し本題を切り出す。

「これから俺と日華と一緒に街に出かけねぇか?」

「え…私もですか?」

「あー…嫌ならいいんだが…」

 驚く月華に頭を掻きながら困った様な顔を浮かべる。

「いえ、嫌と言うわけではないのですが…私でいいのかと思いまして…」

「俺が月華と一緒に行きてぇって思ったんだからいいんだよ。それに、日華も月華と一緒の方が喜ぶと思うしな」

「そう仰るのなら…」

「いいのか?」

「はい」

 コクンと小さく頷く月華に笑みを浮かべ笑うと話を続ける。

「んじゃ、支度が終わったら俺の部屋に来い。日華と一緒に待ってる」

「はい」

「時雨も朝から悪かったな」

「今更ですよ」

「ああ、そうだな…話は帰ってから聞く」

「ええ、覚悟しておいて下さい」

 冷たく刺すような藍色の瞳と見つめ合い戸に手を掛けるとその場から出て行った。

‥パタッ…

嵐の様だったな…

「コホンッ‥!」

「っ…」

 わざとらしい咳に我に返り時雨に向き直る。

「先程の話ですが、また後で話をする事にします」

「分かりました」

 良かったぁ…問題が先延ばしになっただけだけど…

「それと、黒道達と出かける前にこれを返しておかなければいけませんね」

「…?」

…スー…

 時雨は立ち上がるなり押し入れの方へと歩き出すと戸に手を掛け中に入れていた黒い風呂敷を取り出した。

‥パタン…

「昨晩、冷はあなたと共にこれも置いて行ったので…」

 黒い風呂敷を手に戻って来た時雨は持っていた黒い風呂敷を目の前に差し出した。

「これ、私のです」

「やはりそうでしたか」

 差し出された黒い風呂敷を開き中身を確認する。

良かった!ちゃんとある…!

 着替えと咲羅から貰った簪と貯め込んだお金が入った貯金箱を前に内心安堵する。

「髪は私がしましょう。街に出かけるのならば身だしなみくらいは必要ですからね」

 柔らかな笑みを浮かべながら言う時雨に戸惑いの声が漏れる。

「そこまでして頂くわけには…」

「既に二度も拒否されているのに、これくらいの事も駄目なのですか?」

うっ…そんな風に言われたら断れない

「じゃあ、その…お願いします」

 目尻を下げて言う時雨の姿に渋々頷くと柔らかな笑みが返ってきた。

「喜んで」

 時雨は正面に座布団を敷くと背後にある机の引き出しから鼈甲櫛べっこうぐしを取り出した。

 そう言えば、時雨ってこういうの得意だったけ…?

 促されるがまま敷かれた座布団の上に座ると、時雨は寝癖でボサボサな黒髪に綺麗な指先通しながら櫛を使いゆっくりと梳いていく。

 こうしてると咲羅に梳いてもらった時の事を思い出すなぁ…

 ふと、桜の宴の前の咲羅との出来事を思い出し少し悲しくなった。



















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