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赤月の桜
お前らと一緒にするなよ
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夕食が終わり城の中の殆どの人が寝静まった頃、青の間の地下では時雨を中心にその侍従である六歳から十七歳までの少年達が訓練に勤しんでいた。
「月華、まずは試しに刃ノ葉をあの藁に向かって投げてみて下さい」
「はい」
訓練用の服として渡された丈の短い黒の半着に黒色の帯をし下には黒の半股引を履き太腿に刃ノ葉のホルダーケースを着け手には手甲をつけた私は時雨の言葉に手の中にある刃ノ葉を持ち直し離れた場所にある目の前の藁で作られた棒を見据える。
‥ビュンッ!‥ドスッ…
「…すげぇ…!」
「ど真ん中的中だ…!」
投げた刃ノ葉は藁の中心に刺さり周りで見ていた侍従達は感嘆の声を漏らした。
何か久しぶりかも…服もそうだけど刃ノ葉を投げるのも久しぶりだ
「ふむ…月華、他の者と対戦出来ますか?」
他の者って事はここにいる侍従達の誰かとって事か…
時雨の言葉に周りの侍従達を見つめる。
ここに居る侍従達は全員じゃないんだっけ?確か、半分は咲羅の件で夜間の警備と偵察をしてるって言ってたよね。でも、冷はともかく他の侍従達と対戦するのはあんまりしたくないかも…
「どうしました?」
「えっと…出来れば冷との対戦がいいと思いまして…」
「他の者も十分強いですよ。試しに対戦してみるのもいい経験になると思うのですが…」
「時雨様、月華は人を傷つける事が出来ないんです。なので、他の奴らと戦う事を躊躇っているんだと思います」
「冷…」
背後で見ていた冷が話に割って代弁すると、時雨は少し考え込んだ末に口を開いた。
「…では、私と対戦してみるのはどうですか?」
「え…?」
「私となら怪我をさせる心配はありませんし、手加減なく出来るでしょう」
確かに、時雨となら怪我をさせる心配はなく寧ろ逆に私自身が怪我しないか心配になる程だ
「分かりました。時雨様、手合わせよろしくお願いします」
そう言うと時雨の口角が僅かに上がった。
「手加減せず本気で来て下さい」
「…‥…‥」
静かな沈黙が流れる中、離れた距離でお互いに向かい合う時雨を前に唇をぎゅっと結ぶ。
「私は木刀でしましょう」
「いえ、刃ノ葉を使って下さい。手加減なく本気でと仰ったのは時雨様ですから、木刀では本気にはなれません」
「ふむ…なら、お言葉に甘えて」
時雨は太腿に刃ノ葉の入ったケースを装着すると手に刃ノ葉を一つ持ち身構える。
「いつでもどうぞ」
ダンッ!‥シュッ…
その言葉を合図に足を踏み出し時雨の喉に向かって飛び込む。
‥キンッ!
「っ‥」
喉に突き立て様とした刃ノ葉は時雨の刃ノ葉によって受け止められ空いている手で太腿のケースにある刃ノ葉を二本取り出すと隙を見て投げる。
ビュンッ!ビュンッ!
「遅い」
ビュンッ!ビュンッ!‥カンッ!カンッ!
時雨は空いている手で同じく刃ノ葉を投げると向かって来た刃ノ葉を弾いた。
ビュンッ!‥ボトッ‥ボトッ…
「っ…」
刃ノ葉が弾き落ちる音が耳に届く間にまだ残されていた時雨の刃ノ葉が下から投げられた。
‥ドスッ!…ダンッ!‥ダンッ!ダンッ!
体を反らし避けるとそのままバク転し距離をとる。
「よく避けましたね」
「人を怪我させるのも嫌ですが、自分自身が怪我するのも嫌なので」
「いい心構えです」
タンッ…シュッ…
藍色の瞳が細められると次の瞬間、刃ノ葉を持った時雨が目の前に迫って来た。
「っ…」
藍色の瞳が交差し喉に向かって刃ノ葉が伸ばされた瞬間、反射的に足が一歩後ろのに下がり手に持つ刃ノ葉で受け止める。
キー…
直じゃなくてわざと反らす様に刃ノ葉を受け止めると懐に入って来た時雨の肩を利用し力一杯ジャンプする。
ダンッ!
「っ…!?」
宙に舞うなり上を向いた時雨を目掛けて刃ノ葉を投げる。
ビュンッ!ビュンッ!ビュンッ!
「っ…」
ビュンッ!ビュンッ!‥カンッ!カンッ!‥ボトッ‥ボトッ‥
投げられた刃ノ葉に瞬時に反応した時雨は自身の刃ノ葉を投げつけ弾くと残りの一本だけ宙に舞う私に目掛けて飛んで来た。
「っ‥!?」
動け…っ!
宙に舞う体をくねらせ刃ノ葉を避けるとそのまま回転し床に着地する。
ダンッ!
はぁ…危なかった…でも‥
「まだですよ」
シュッ!
「っ‥」
ダンッ!ダンッ!ダンッ!
着地した瞬間、息付く間もなく時雨の回し蹴りが向かって来るなり反射的後ろにバク転し避け距離をとる。
…楽しい
圧倒的な力を持つ時雨を前に今まで感じた事のない高揚感が湧き上がるのを感じた。それは、初めて戦う事を楽しいと思った瞬間だった。
「うわぁ…‥あいつもそうかよ」
「何が?」
時雨と月華の戦いを離れた場所で見ていた蒼は苦笑いを浮かべながら呟くと、隣にいた冷が疑問の声を投げ掛けた。
「化け物って事だよ」
「それを言うならお前もそうだろ?」
「馬鹿、お前らと一緒にするなよ。俺は、時雨様と戦って笑うとか出来ねぇよ」
「…?」
「あのな、普通は自分より圧倒的な相手と戦うと内心怖くて仕方ねぇの!」
「そうなのか?」
意味が分からないと言わんばかりに首を傾げる冷に蒼は呆れた様に溜息を吐いた。
「はぁ…‥分かんねぇならいいや」
「月華、まずは試しに刃ノ葉をあの藁に向かって投げてみて下さい」
「はい」
訓練用の服として渡された丈の短い黒の半着に黒色の帯をし下には黒の半股引を履き太腿に刃ノ葉のホルダーケースを着け手には手甲をつけた私は時雨の言葉に手の中にある刃ノ葉を持ち直し離れた場所にある目の前の藁で作られた棒を見据える。
‥ビュンッ!‥ドスッ…
「…すげぇ…!」
「ど真ん中的中だ…!」
投げた刃ノ葉は藁の中心に刺さり周りで見ていた侍従達は感嘆の声を漏らした。
何か久しぶりかも…服もそうだけど刃ノ葉を投げるのも久しぶりだ
「ふむ…月華、他の者と対戦出来ますか?」
他の者って事はここにいる侍従達の誰かとって事か…
時雨の言葉に周りの侍従達を見つめる。
ここに居る侍従達は全員じゃないんだっけ?確か、半分は咲羅の件で夜間の警備と偵察をしてるって言ってたよね。でも、冷はともかく他の侍従達と対戦するのはあんまりしたくないかも…
「どうしました?」
「えっと…出来れば冷との対戦がいいと思いまして…」
「他の者も十分強いですよ。試しに対戦してみるのもいい経験になると思うのですが…」
「時雨様、月華は人を傷つける事が出来ないんです。なので、他の奴らと戦う事を躊躇っているんだと思います」
「冷…」
背後で見ていた冷が話に割って代弁すると、時雨は少し考え込んだ末に口を開いた。
「…では、私と対戦してみるのはどうですか?」
「え…?」
「私となら怪我をさせる心配はありませんし、手加減なく出来るでしょう」
確かに、時雨となら怪我をさせる心配はなく寧ろ逆に私自身が怪我しないか心配になる程だ
「分かりました。時雨様、手合わせよろしくお願いします」
そう言うと時雨の口角が僅かに上がった。
「手加減せず本気で来て下さい」
「…‥…‥」
静かな沈黙が流れる中、離れた距離でお互いに向かい合う時雨を前に唇をぎゅっと結ぶ。
「私は木刀でしましょう」
「いえ、刃ノ葉を使って下さい。手加減なく本気でと仰ったのは時雨様ですから、木刀では本気にはなれません」
「ふむ…なら、お言葉に甘えて」
時雨は太腿に刃ノ葉の入ったケースを装着すると手に刃ノ葉を一つ持ち身構える。
「いつでもどうぞ」
ダンッ!‥シュッ…
その言葉を合図に足を踏み出し時雨の喉に向かって飛び込む。
‥キンッ!
「っ‥」
喉に突き立て様とした刃ノ葉は時雨の刃ノ葉によって受け止められ空いている手で太腿のケースにある刃ノ葉を二本取り出すと隙を見て投げる。
ビュンッ!ビュンッ!
「遅い」
ビュンッ!ビュンッ!‥カンッ!カンッ!
時雨は空いている手で同じく刃ノ葉を投げると向かって来た刃ノ葉を弾いた。
ビュンッ!‥ボトッ‥ボトッ…
「っ…」
刃ノ葉が弾き落ちる音が耳に届く間にまだ残されていた時雨の刃ノ葉が下から投げられた。
‥ドスッ!…ダンッ!‥ダンッ!ダンッ!
体を反らし避けるとそのままバク転し距離をとる。
「よく避けましたね」
「人を怪我させるのも嫌ですが、自分自身が怪我するのも嫌なので」
「いい心構えです」
タンッ…シュッ…
藍色の瞳が細められると次の瞬間、刃ノ葉を持った時雨が目の前に迫って来た。
「っ…」
藍色の瞳が交差し喉に向かって刃ノ葉が伸ばされた瞬間、反射的に足が一歩後ろのに下がり手に持つ刃ノ葉で受け止める。
キー…
直じゃなくてわざと反らす様に刃ノ葉を受け止めると懐に入って来た時雨の肩を利用し力一杯ジャンプする。
ダンッ!
「っ…!?」
宙に舞うなり上を向いた時雨を目掛けて刃ノ葉を投げる。
ビュンッ!ビュンッ!ビュンッ!
「っ…」
ビュンッ!ビュンッ!‥カンッ!カンッ!‥ボトッ‥ボトッ‥
投げられた刃ノ葉に瞬時に反応した時雨は自身の刃ノ葉を投げつけ弾くと残りの一本だけ宙に舞う私に目掛けて飛んで来た。
「っ‥!?」
動け…っ!
宙に舞う体をくねらせ刃ノ葉を避けるとそのまま回転し床に着地する。
ダンッ!
はぁ…危なかった…でも‥
「まだですよ」
シュッ!
「っ‥」
ダンッ!ダンッ!ダンッ!
着地した瞬間、息付く間もなく時雨の回し蹴りが向かって来るなり反射的後ろにバク転し避け距離をとる。
…楽しい
圧倒的な力を持つ時雨を前に今まで感じた事のない高揚感が湧き上がるのを感じた。それは、初めて戦う事を楽しいと思った瞬間だった。
「うわぁ…‥あいつもそうかよ」
「何が?」
時雨と月華の戦いを離れた場所で見ていた蒼は苦笑いを浮かべながら呟くと、隣にいた冷が疑問の声を投げ掛けた。
「化け物って事だよ」
「それを言うならお前もそうだろ?」
「馬鹿、お前らと一緒にするなよ。俺は、時雨様と戦って笑うとか出来ねぇよ」
「…?」
「あのな、普通は自分より圧倒的な相手と戦うと内心怖くて仕方ねぇの!」
「そうなのか?」
意味が分からないと言わんばかりに首を傾げる冷に蒼は呆れた様に溜息を吐いた。
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