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繁火への旅
双子の護衛は前途多難
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「何かあれば直ぐに帰って来るんだぞ」
「危険だと判断したら直ぐに戻って来て下さい」
城の正門前にて、編笠を被せながら心配そうな顔で言う黒道とその隣で頷く時雨を前に小さく頷く。
「はい」
「彼奴らに虐められたら倍返しにしろ。そして、帰ったら俺に言え。いいな?」
「えっと…」
黒道と時雨の前に割り込むなり近くにいる双子をチラ見しながら真剣な顔で言う暁に戸惑っていると、同意する声と共に暁を退かすように朱夏が割って入ってきた。
ドンッ!
「痛っ!?」
「そうよ、月華!虐められたら私に言いなさい!」
「何するんだ!?」
「今は私と月華が話してるの!暁は邪魔だから中に戻ってなさい」
「何だとっ!?」
パチンッ!
「はい、そこまでです」
「いい加減にしろ、お前ら!せっかくの見送りが台無しじゃねぇか」
時雨と黒道の声にいがみ合っていた二人は直ぐに大人しくなり小さく呟いた。
「…すみませんでした」
「…悪かった」
「酷いよ、皆!何で、僕達の見送りなのに僕達には何も言わないの?」
「そうだよ!その子にばっかり構って僕達は無視とか酷いよ!」
同じ様に編笠を被り背中に荷物の入った茶色の風呂敷を背負い朝顔柄の黄色の着物に黄色の帯をし檸檬色の髪に茶色の瞳を持ち右耳に桃色の小さな桃の花のピアスをつけた黄桃と左耳に白色の小さな蘭の花のピアスをつけた黄蘭に皆の視線が向けられた。
「その子ではなく月華です。これからあなた達の護衛役になるのですから覚えて下さい」
低い声で注意する時雨に二人は頬を膨らませた。
「呼び方なんてなんでもいいじゃん!」
「護衛だなんて僕達には必要ないもん!」
「はぁ…あなた達二人だけだと他に被害が出るから月華を同行させるのです。昨日も話した筈ですが…?」
「覚えてな~い」
「知らな~い」
「はぁ…旅路が不安になってきました」
受け入れる気のない二人に時雨は頭を抱えた。
「お前ら、月華を虐めるなよ?」
双子の前に腕を組んで仁王立ちで睨みつける暁に二人は痛くも痒くもないと言わんばかりに口を開いた。
「何で、僕達があ~くんの言う通りにしなきゃならないの?」
「あ~くんに関係ないじゃん!早く中に戻りなよ」
「この…っ!言いたい放題言いやがって!大体、あ~くんって言うな!俺は暁だ!」
「あ~くんの怒りん坊」
「あ~くんのわからず屋」
怒る暁に対し、舌を出して馬鹿にする双子に傍で見ていた朱夏と私はお互いに顔を見合わせながら呆れた顔で頷いた。
‥ザッ‥ザッザッザッザッ‥
「待って下さい‥っ!!!」
「…?」
城の中からこちらに向かって走って来る二人の足音に視線を向けると腰まである橙色の長い髪に檸檬色の瞳を持った李と、肩まである橙色の髪に檸檬色の瞳を持った李と瓜二つの少女が現れた。
あれって、李と…妹の灯…?
橙色と黄色の混じった向日葵の着物に橙色の帯をし荷物の入った黄色の風呂敷を背中に背負い右手に編笠を持つ二人の姿にその場にいた全員が目を丸くする。
「はぁ…はぁ…私達も同行させて下さい!」
「それは、出来ねぇよ」
息を整え顔を上げて懇願する李に黒道は近寄るなり身を屈めて視線を合わせると真剣な顔で話し始めた。
「これはただの旅じゃないんだ。危険な目に遭うかもしれねぇのに側室のお前達を同行させるわけにはいかねぇよ」
「でも…」
黒道の言葉に李は肩越しにいた黄桃に視線を移した。
「黄桃様!この前、私に繁火で髪飾りを買ってくれるって約束して下さいましたよね?」
李の叫び声に黄桃は戸惑いの声を漏らした。
「それはそうだけど…」
「私、実際に見て買って頂きたいです!黒道様、絶対に黄桃様と黄蘭様の邪魔は致しませんのでどうか同行の許可を頂けませんか?」
「灯も同じ気持ちなのか?」
「私は…‥」
黒道は渋い顔をしながら李の隣にいた灯に声を掛けると、灯は隣にいる李の顔を見ながら恐る恐る口を開いた。
「…お姉様が行くなら」
「…そうか」
灯の言葉に黒道はどうしていいか分からず黙り込むとその会話を黙って聞いていた時雨が口を開いた。
「李と灯、繁火に着いたら黄桃と黄蘭と月華の邪魔にならないように安全な場所で待機する事が出来ますか?」
「出来ます」
「…はい」
時雨は二人の返事を聞くと今度は私の方に視線を移した。
「月華、負担になるでしょうが黄桃と黄蘭を含め李と灯の事もお願い出来ますか?」
その言葉にチラッと四人の顔を見ると灯以外の目からは敵意しか感じられなかった。
四人中三人が敵意丸出しなのにどう守れと…?だけど、今更無理ですだなんて言えないしこうなったら受け入れるしかないか…
一株の不安を感じつつも渋々頷いた。
「かしこまりました」
「気をつけてね…月華」
「朱夏様…」
終始心配そうに見つめる朱夏に小さく頷く。
「戻って来たら沢山遊ぼうね!日華と一緒に!」
「はい。では…‥‥」
朱夏と暁、黒道と時雨を見渡しながら意を決して四人で繁火へと歩き出した。
「…‥月華、大丈夫かな?」
去って行く月華の背中を見ながらぽつりと小さく呟いた朱夏に黒道は視線を巡らせながら口を開いた。
「心配性が三人…いや、四人か…‥」
その言葉に暁は黒道の視線の先を見ると屋根の上で去って行く月華の様子を見つめる銀色の髪の少年がいた。
「彼奴って…‥?」
「危険だと判断したら直ぐに戻って来て下さい」
城の正門前にて、編笠を被せながら心配そうな顔で言う黒道とその隣で頷く時雨を前に小さく頷く。
「はい」
「彼奴らに虐められたら倍返しにしろ。そして、帰ったら俺に言え。いいな?」
「えっと…」
黒道と時雨の前に割り込むなり近くにいる双子をチラ見しながら真剣な顔で言う暁に戸惑っていると、同意する声と共に暁を退かすように朱夏が割って入ってきた。
ドンッ!
「痛っ!?」
「そうよ、月華!虐められたら私に言いなさい!」
「何するんだ!?」
「今は私と月華が話してるの!暁は邪魔だから中に戻ってなさい」
「何だとっ!?」
パチンッ!
「はい、そこまでです」
「いい加減にしろ、お前ら!せっかくの見送りが台無しじゃねぇか」
時雨と黒道の声にいがみ合っていた二人は直ぐに大人しくなり小さく呟いた。
「…すみませんでした」
「…悪かった」
「酷いよ、皆!何で、僕達の見送りなのに僕達には何も言わないの?」
「そうだよ!その子にばっかり構って僕達は無視とか酷いよ!」
同じ様に編笠を被り背中に荷物の入った茶色の風呂敷を背負い朝顔柄の黄色の着物に黄色の帯をし檸檬色の髪に茶色の瞳を持ち右耳に桃色の小さな桃の花のピアスをつけた黄桃と左耳に白色の小さな蘭の花のピアスをつけた黄蘭に皆の視線が向けられた。
「その子ではなく月華です。これからあなた達の護衛役になるのですから覚えて下さい」
低い声で注意する時雨に二人は頬を膨らませた。
「呼び方なんてなんでもいいじゃん!」
「護衛だなんて僕達には必要ないもん!」
「はぁ…あなた達二人だけだと他に被害が出るから月華を同行させるのです。昨日も話した筈ですが…?」
「覚えてな~い」
「知らな~い」
「はぁ…旅路が不安になってきました」
受け入れる気のない二人に時雨は頭を抱えた。
「お前ら、月華を虐めるなよ?」
双子の前に腕を組んで仁王立ちで睨みつける暁に二人は痛くも痒くもないと言わんばかりに口を開いた。
「何で、僕達があ~くんの言う通りにしなきゃならないの?」
「あ~くんに関係ないじゃん!早く中に戻りなよ」
「この…っ!言いたい放題言いやがって!大体、あ~くんって言うな!俺は暁だ!」
「あ~くんの怒りん坊」
「あ~くんのわからず屋」
怒る暁に対し、舌を出して馬鹿にする双子に傍で見ていた朱夏と私はお互いに顔を見合わせながら呆れた顔で頷いた。
‥ザッ‥ザッザッザッザッ‥
「待って下さい‥っ!!!」
「…?」
城の中からこちらに向かって走って来る二人の足音に視線を向けると腰まである橙色の長い髪に檸檬色の瞳を持った李と、肩まである橙色の髪に檸檬色の瞳を持った李と瓜二つの少女が現れた。
あれって、李と…妹の灯…?
橙色と黄色の混じった向日葵の着物に橙色の帯をし荷物の入った黄色の風呂敷を背中に背負い右手に編笠を持つ二人の姿にその場にいた全員が目を丸くする。
「はぁ…はぁ…私達も同行させて下さい!」
「それは、出来ねぇよ」
息を整え顔を上げて懇願する李に黒道は近寄るなり身を屈めて視線を合わせると真剣な顔で話し始めた。
「これはただの旅じゃないんだ。危険な目に遭うかもしれねぇのに側室のお前達を同行させるわけにはいかねぇよ」
「でも…」
黒道の言葉に李は肩越しにいた黄桃に視線を移した。
「黄桃様!この前、私に繁火で髪飾りを買ってくれるって約束して下さいましたよね?」
李の叫び声に黄桃は戸惑いの声を漏らした。
「それはそうだけど…」
「私、実際に見て買って頂きたいです!黒道様、絶対に黄桃様と黄蘭様の邪魔は致しませんのでどうか同行の許可を頂けませんか?」
「灯も同じ気持ちなのか?」
「私は…‥」
黒道は渋い顔をしながら李の隣にいた灯に声を掛けると、灯は隣にいる李の顔を見ながら恐る恐る口を開いた。
「…お姉様が行くなら」
「…そうか」
灯の言葉に黒道はどうしていいか分からず黙り込むとその会話を黙って聞いていた時雨が口を開いた。
「李と灯、繁火に着いたら黄桃と黄蘭と月華の邪魔にならないように安全な場所で待機する事が出来ますか?」
「出来ます」
「…はい」
時雨は二人の返事を聞くと今度は私の方に視線を移した。
「月華、負担になるでしょうが黄桃と黄蘭を含め李と灯の事もお願い出来ますか?」
その言葉にチラッと四人の顔を見ると灯以外の目からは敵意しか感じられなかった。
四人中三人が敵意丸出しなのにどう守れと…?だけど、今更無理ですだなんて言えないしこうなったら受け入れるしかないか…
一株の不安を感じつつも渋々頷いた。
「かしこまりました」
「気をつけてね…月華」
「朱夏様…」
終始心配そうに見つめる朱夏に小さく頷く。
「戻って来たら沢山遊ぼうね!日華と一緒に!」
「はい。では…‥‥」
朱夏と暁、黒道と時雨を見渡しながら意を決して四人で繁火へと歩き出した。
「…‥月華、大丈夫かな?」
去って行く月華の背中を見ながらぽつりと小さく呟いた朱夏に黒道は視線を巡らせながら口を開いた。
「心配性が三人…いや、四人か…‥」
その言葉に暁は黒道の視線の先を見ると屋根の上で去って行く月華の様子を見つめる銀色の髪の少年がいた。
「彼奴って…‥?」
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