鬼の乙女ゲーム世界で裏チートで生き残りたいだけなのに

See.

文字の大きさ
103 / 124
シナリオの再編

引かれた一線

「大丈夫?」

「何が?」

「何がって…あまり眠れてないみたいだけど?」

「誰のせいだと思って…」

「…?」

 瞑色の無地の着物に黒の帯をし羽織を着た私は深緋色の無地の着物に紅色の帯をし灰色の羽織を着た暁の目元に薄らあるくまを見るなり心配そうな顔で覗き込むが、何故か呆れた顔で見返され首を傾げる。

「俺の事はいいから集中しろ」

「うん…」

 金取り事件が起きた後、私達は丸一日を使い街中を歩き回り情報を集めた。それで得た情報は金取り事件が起きた場所には必ず夜ノの夫である吉郎がいる事。そして、殺害された遺体は全て斬り方が同じで狙われる時間帯は深夜でありながら遺体が見つかるのは日が昇る前だという事。それを踏まえ、翌日亥の刻…二十二時半頃に私達は吉郎の後をつけていた。

ザッ…

「っ…!?」

 警戒する様に振り向いた青朽葉あおくちば色の無地の着物に灰色の帯と羽織を着た吉郎に直ぐさま建物に身を隠す。

‥ザッ…ザッ…

ふぅ…

ザッザッザッ…

「見つけたよ!」

子供の声?

「そうか、お知らせしたか?」

「うん!」

「じゃあ、家に戻っていいぞ」

「分かった!」

ザッザッザッザッ…

 遠ざかって行く子供の足音の後、再度吉郎が歩き出した。

ザッ…ザッ…ザッ…

「行くぞ」

「うん」

 暁の声に頷き足音を立てずに吉郎の後を追った。

 ❋

ザッ…ザッ…

「おい、あれ…」

 吉郎の後をつけながら路地裏から現れた竜胆色の髪に薄茶色の瞳と右目に泣きぼくろを持ちかすみ色の無地の着物に黒の帯をし羽織を着た冷と腰まである鶯色の長い髪と金色の瞳を持ち青漆せいしつ色の無地の着物に黒の帯をし羽織を着た風彰に目を見開く。

まさか…

ザッ‥

「なっ!?」

 嫌な予感がした。吉郎の背後から物音を立てずに現れた冷と風彰にゲームで冷が間違えて手にかけた人物…それが、吉郎だったとしたら?そう思うなりゲームの内容で書かれていた”子供が泣き叫んでいた”という台詞が脳裏を過ぎり答えは直ぐに出た。冷が間違えて手にかけた人物…それは、吉郎なのだと…

ザッザッザッ…スー…

「何の真似だ?」

 駆け寄るなり冷の背後から刃ノ葉を突き当てる。

「その人は目的の奴じゃない」

ザッ‥

「っ‥!?誰だ!?」

 背後に立つ冷と風彰に気づいた吉郎の驚く声が上げられるなり冷の隣にいた風彰が動いた。

ザッザッザッ‥ドサッ‥グイッ!

「く‥っ!?」

「逃げたらあかんよ」

 雪の上で吉郎を押さえ込む風彰を他所に、冷の背中に突き当てた刃ノ葉が凍りつく。

「っ‥!?」

‥ポトッ…

「どこまで知っているんだ?」

 あまりの冷たさに刃ノ葉を雪の上に落とすなり冷ややかな声と共に振り向いた冷に薄茶色の瞳を真っ直ぐに見つめ口を開く。

「雪羅の金取り事件…あなた達はその犯人を始末しようとしている」

「…‥」

「でも、その人は犯人じゃない」

「何故、断言出来る?」

「その人の名前は吉郎。孤児の子供達の面倒を見ている人。でも、その子供達に裕福な人を探させて見つけたらその情報を売りそれを受け取った奴がその裕福な人達を手にかけていた。だから、そこにいる吉郎は事件に無関係とは言えないけど犯人ではない」

ザッ‥

「っ‥!?」

 その瞬間、冷の手足が動き背中に回された両腕を掴まれた。

「その話を信じろと?」

 顔を上げると冷ややかな薄茶色の瞳と目が合い眉を寄せる。

スッ…

「っ‥!?」

 薄茶色の瞳を真っ直ぐに見つめながら右手の袖から針を出すなり言い返す。

「信じるか信じないかはあなた次第。それと、あまり甘く見ないで」

「そうか…」

「っ‥!?」

 突然、両手にまとわりつく冷気に思わず掴まれた手を外そうとするが力が強く微動だにしない。

まずい…っ!このままじゃ‥

‥ザッ…‥スー…

「その手を離せ」

「…‥」

暁‥っ!?

 冷の背後に回り込み長刀を冷の首元に当てる暁に目を見開く。

「月華を傷つける奴は俺が許さない」

「…‥」

パチッ‥

…?

 不意に、弾く音が聞こえ内心首を傾げると雪が舞う程の強い風が吹いた。

ビュウゥゥッ!!!

「っ…!?」

 その風に拘束していた冷の手が外され暁も長刀を下ろし片目を瞑る。

「そこまでや」

「っ…」

 吉郎を押さえ込みながらポツリと呟いた風彰に瞼を開け呆然と見つめる。

くん…取り敢えず、この子達の話の通りか本人に聞いてみようや」

 押さえ込む吉郎を見下ろしそう言う風彰に、吉郎は顔を顰めながらも重い口を開いた。

「…その子の言う通りだ」

「っ‥!?」

「子供達に裕福な人を探させ見つけたらその情報を売って金を得ていた。だが、その金は子供達を養う為のものだ。言い訳にしか聞こえないだろうがな…」

「…‥」

ザッ…ザッ…ザッ…

 風彰に押さえ込まれている吉郎に駆け寄るなり目の前に回り込み片膝を着き見下ろす。

「お金が必要だとしても悪い事を子供達にさせるのは許されない事です」

「…ああ」

「もう二度とこの様な事はしないと約束して下さい。子供達の為にも、夜ノの為にも…」

「…約束する、もうしない」

 真剣な顔で頷く吉郎に複雑な表情を浮かべながらも再度口を開く。

「それで、情報の受取人は何処ですか?」

「この先を真っ直ぐ行くと呉服屋がある。その周辺にいる筈だ」

「…‥」

手遅れになる前に急いで行かないと…っ

 吉郎の言葉に立ち上がり風彰と冷と暁を見渡すなり雪道を走り出した。

ザッザッザッザッザッ…

 ❋

‥ザッ…ザッ…ザッ…‥ドサッ…

「っ…!?」

 呉服屋に向かう通り道を歩く四十代ぐらいの男に静かに近づく黒髪に濃藍色の瞳を持ち藍鉄色の無地の着物に黒の帯をし羽織を着た男を見つけるなり雪を蹴り飛びかかり取り押さえる。

「雪羅で騒がせている裕福な者達を狙った金取り事件の犯人はお前だな?」

ザッザッザッ‥

「月華!離れろっ!」

「え…」

 追いついて来た暁の叫び声に驚くと同時に雪の上に転がった五個の凍りついた小さな火薬の玉に唖然とする。

「な…っ!?」

「無駄だ」

「っ‥!?」

 驚く男の声に冷たく言い放った冷の声に振り向くと同じく追いついて来た冷と風彰が立っていた。

ザッザッザッ‥

「大丈夫か?」

「うん」

ドンッ!

「ぐ‥っ!?」

 駆け寄るなり心配そうな顔で問いかける暁に男の背中を足で押さえ込みながらゆっくりと立ち上がる。

「月華、離れろ」

「…?」

 首を傾げながらも暁の言う通りに大人しく背中を踏む足を外すとその瞬間、暁が冷と風彰に向け男を蹴り飛ばした。

ドンッ!!!‥ドサッ…

「ぐはっ‥!?ゴホッ!ゴホッ!」

 蹴り飛ばされた男は雪の上で腹部を押さえ僅かに血を吐くとそれを見下ろしていた冷の瞳が細められた。

スッ…

「暁…?」

 蹲る男と冷と風彰を見ていた私の両目を背後から隠す様に暁の大きな手が覆われ戸惑いの声を漏らす。

「お前は見るな」

「っ…」

 両目を覆う暁の大きな手の温もりを感じつつも男の叫び声が耳に届く。

「うっ…わぁぁぁっ!?ぐはっ…!?」

ピキピキッ…パリンッ!!!

 何かが割れる音が響き渡るなりその場に沈黙が流れ込みゆっくりと暁の手が外された。

「あ…‥」

 そこに男の姿はなく真っ白な雪が赤い液体で染まり冷の頬に数滴の血が伝っていた。

ザッ…

「待って‥っ!」

 背を向け歩き出そうした冷に慌てて声を上げる。

「冷、私‥」

「俺にもう関わるな」

「っ…」

 冷たく突き放す様に呟かれた言葉に唇をぎゅっと結ぶ。

ああ…もう昔の冷じゃないんだ…

 そう思うなり眼帯を着けていない右目から涙が零れ落ちた。

ザッ…

「冷!」

「っ‥!?」

 隣に立つ暁の叫び声に目を見開くなり視線を移す。

「お前…月華を傷つけた事を引きずってるみてぇだけど、お前が月華を突き放す事で月華の心が傷ついている事は分かってるのかよ?」

「っ…」

 その言葉に背を向けた冷の指先が僅かに動いた。

「…ほんと、馬鹿だな」

「…‥」

ザッ…ザッ…ザッ…

 そのまま無言で遠ざかって行く冷と風彰を見ながら頬を伝った涙の跡が冷たさを感じたのだった。












































感想 0

あなたにおすすめの小説

転生したら4人のヤンデレ彼氏に溺愛される日々が待っていた。

aika
恋愛
主人公まゆは冴えないOL。 ある日ちょっとした事故で命を落とし転生したら・・・ 4人のイケメン俳優たちと同棲するという神展開が待っていた。 それぞれタイプの違うイケメンたちに囲まれながら、 生活することになったまゆだが、彼らはまゆを溺愛するあまり どんどんヤンデレ男になっていき・・・・ ヤンデレ、溺愛、執着、取り合い・・・♡ 何でもありのドタバタ恋愛逆ハーレムコメディです。

お兄ちゃんはお兄ちゃんだけど、お兄ちゃんなのにお兄ちゃんじゃない!?

すずなり。
恋愛
幼いころ、母に施設に預けられた鈴(すず)。 お母さん「病気を治して迎えにくるから待ってて?」 その母は・・迎えにくることは無かった。 代わりに迎えに来た『父』と『兄』。 私の引き取り先は『本当の家』だった。 お父さん「鈴の家だよ?」 鈴「私・・一緒に暮らしていいんでしょうか・・。」 新しい家で始まる生活。 でも私は・・・お母さんの病気の遺伝子を受け継いでる・・・。 鈴「うぁ・・・・。」 兄「鈴!?」 倒れることが多くなっていく日々・・・。 そんな中でも『恋』は私の都合なんて考えてくれない。 『もう・・妹にみれない・・・。』 『お兄ちゃん・・・。』 「お前のこと、施設にいたころから好きだった・・・!」 「ーーーーっ!」 ※本編には病名や治療法、薬などいろいろ出てきますが、全て想像の世界のお話です。現実世界とは一切関係ありません。 ※コメントや感想などは受け付けることはできません。メンタルが薄氷なもので・・・すみません。 ※孤児、脱字などチェックはしてますが漏れもあります。ご容赦ください。 ※表現不足なども重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけたら幸いです。(それはもう『へぇー・・』ぐらいに。)

女の子がほとんど産まれない国に転生しました。

さくらもち
恋愛
何番煎じかのお話です。 100人に3~5人しか産まれない女の子は大切にされ一妻多夫制の国に産まれたのは前世の記憶、日本で亭主関白の旦那に嫁いびりと男尊女卑な家に嫁いで挙句栄養失調と過労死と言う令和になってもまだ昭和な家庭!でありえない最後を迎えてしまった清水 理央、享年44歳 そんな彼女を不憫に思った女神が自身の世界の女性至上主義な国に転生させたお話。 当面は2日に1話更新予定!

【美醜逆転】ポジティブおばけヒナの勘違い家政婦生活(住み込み)

猫田
恋愛
 『ここ、どこよ』 突然始まった宿なし、職なし、戸籍なし!?の異世界迷子生活!! 無いものじゃなく、有るものに目を向けるポジティブ地味子が選んだ生き方はーーーーまさかの、娼婦!? ひょんなことから知り合ったハイスペお兄さんに狙いを定め……なんだかんだで最終的に、家政婦として(夜のお世話アリという名目で)、ちゃっかり住み込む事に成功☆ ヤル気があれば何でもできる!!を地で行く前向き女子と文句無しのハイスペ醜男(異世界基準)との、思い込み、勘違い山盛りの異文化交流が今、始まる……

異世界は『一妻多夫制』!?溺愛にすら免疫がない私にたくさんの夫は無理です!?

すずなり。
恋愛
ひょんなことから異世界で赤ちゃんに生まれ変わった私。 一人の男の人に拾われて育ててもらうけど・・・成人するくらいから回りがなんだかおかしなことに・・・。 「俺とデートしない?」 「僕と一緒にいようよ。」 「俺だけがお前を守れる。」 (なんでそんなことを私にばっかり言うの!?) そんなことを思ってる時、父親である『シャガ』が口を開いた。 「何言ってんだ?この世界は男が多くて女が少ない。たくさん子供を産んでもらうために、何人とでも結婚していいんだぞ?」 「・・・・へ!?」 『一妻多夫制』の世界で私はどうなるの!? ※お話は全て想像の世界になります。現実世界とはなんの関係もありません。 ※誤字脱字・表現不足は重々承知しております。日々精進いたしますのでご容赦ください。 ただただ暇つぶしに楽しんでいただけると幸いです。すずなり。

甘い匂いの人間は、極上獰猛な獣たちに奪われる 〜居場所を求めた少女の転移譚〜

具なっしー
恋愛
「誰かを、全力で愛してみたい」 居場所のない、17歳の少女・鳴宮 桃(なるみや もも)。 幼い頃に両親を亡くし、叔父の家で家政婦のような日々を送る彼女は、誰にも言えない孤独を抱えていた。そんな桃が、願いをかけた神社の光に包まれ目覚めたのは、獣人たちが支配する異世界。 そこは、男女比50:1という極端な世界。女性は複数の夫に囲われて贅沢を享受するのが常識だった。 しかし、桃は異世界の女性が持つ傲慢さとは無縁で、控えめなまま。 そして彼女の身体から放たれる**"甘いフェロモン"は、野生の獣人たちにとって極上の獲物**でしかない。 盗賊に囚われかけたところを、美形で無口なホワイトタイガー獣人・ベンに救われた桃。孤独だった少女は、その純粋さゆえに、強く、一途で、そして獰猛な獣人たちに囲われていく――。 ※表紙はAIです

【完結】異世界に転移しましたら、四人の夫に溺愛されることになりました(笑)

かのん
恋愛
 気が付けば、喧騒など全く聞こえない、鳥のさえずりが穏やかに聞こえる森にいました。  わぁ、こんな静かなところ初めて~なんて、のんびりしていたら、目の前に麗しの美形達が現れて・・・  これは、女性が少ない世界に転移した二十九歳独身女性が、あれよあれよという間に精霊の愛し子として囲われ、いつのまにか四人の男性と結婚し、あれよあれよという間に溺愛される物語。 あっさりめのお話です。それでもよろしければどうぞ! 本日だけ、二話更新。毎日朝10時に更新します。 完結しておりますので、安心してお読みください。

わたしのヤンデレ吸引力が強すぎる件

こいなだ陽日
恋愛
病んだ男を引き寄せる凶相を持って生まれてしまったメーシャ。ある日、暴漢に襲われた彼女はアルと名乗る祭司の青年に助けられる。この事件と彼の言葉をきっかけにメーシャは祭司を目指した。そうして二年後、試験に合格した彼女は実家を離れ研修生活をはじめる。しかし、そこでも彼女はやはり病んだ麗しい青年たちに淫らに愛され、二人の恋人を持つことに……。しかも、そんな中でかつての恩人アルとも予想だにせぬ再会を果たして――!?