夢で逢えたら・・私の理想は細マッチョ

月夜(つきよ)

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ハードモードは辛い

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ヒロイン視点
「お前は何者だ?」
と、異世界感たっぷりの銀髪イケメンに聞かれたところで、
〈田中 葵、25才!職業は雑誌編集者。入稿と取材に追われ彼氏いない歴3年。交通事故で吹っ飛ばされたら、異世界?まで飛んできちゃいましたっ!!しかもっなぜか男性になってしまったんですぅ(泣)〉
と言ったとして・・。

うん、どこかに隔離されてしまいそうだ。

どう切り抜けるかとしても情報が必要だし迂闊には何も言えないな。
「はじめまして?ハーフさん。」
という無難な挨拶をしたら、
「「!」」
室内の空気が固まった。
ハーフさんの後ろにいる黒の長髪を三つ編みにしている魔法使いみたいなローブを着た中性的な男性?と背の高い軍服を着た茶髪の若い男の表情が消える。
ん?何か私、まずい事を・・?

その時、ローブを着た男性の瞳から目が離せなくなる。
キィィンという耳鳴りとともに、まるで脳を直接手でかき混ぜられているような強烈な吐き気が私を襲う。
「うあっ!!?」
何か声を出そうとすると、「かはっ」としか息ができない。
頭が死にそうなほど痛い。
気持ち悪いっ、もう死ぬっ・・!

その時、ふわりと抱きしめられた。

私を皆の視界から消すようにすっぽりと包んだのは・・ハーフさんだった。
「やめろ、マドック。コイツは怪しい者ではない。・・俺が保証する。」
こんな時だっていうのに、ハーフさんのお腹に響くいい声が朦朧とする意識に聞こえてきた。
さっきまでの吐き気が幾分か治り、閉じていた目を開けると濃紺の軍服が目の前にあり、ハーフさんの手は私の両肩に置かれていた。
気持ち悪いのに・・。
「ナ、ナイス妄想・・。」と私はボソッと口走った。
「保証って。お前は団長の顔見知りなのか?」
黒い長髪の男の声だろうか?ハーフさん越しでは誰かは分からない。
だけど、なんだろう、この人の声は怖い・・。
「あの人・・怖いな。ああ・・包帯巻いてあげた。血だらけだった・・から。」
「「!?」」
「あ、れ・・?今」
朦朧として息切れする頭ではなぜ自分が意図せず話しているのか分からない。
「マドックがお前に自白を強要する魔術をかけたんだ。・・すまない。」
ハーフさんの声が聞こえてきた。
「自白?・・私、何も悪いことしてない。。はあ、目の前、子供が・・死ぬと思って、私が代わりにっ、、ふううっ!い、痛い、痛くて、死ぬって思ったら、森にっ・・。」
朦朧としながら、事故の時の痛みや恐怖心がリアルに襲ってきた。
ぶつかった衝撃と、死ぬと思った瞬間の怖さと痛さの感覚だけに身体中が支配される。
身体中が震えてぼろぼろと涙がこぼれ落ちた。

「フィニス。」

私の身体をぎゅっと抱きしめたハーフさんがそう呟くと、体を襲っていた痛みと苦しみがふっと溶けていき、全身の力が抜けた。

ぐらんぐらんと視界が回り、もう目を開けていられないほどの疲労感に私の意識はそこで途絶えた。


ノア視点

気を失ってしまった彼をベッドに横たえると、
「顔見知りとはいえ甘すぎるでしょう。まだ名前も、どこから来たのかさえ聞いていないのに。」
そう不満げに言うマドック。
「そうですよ。あの魔物から逃げ延びて、一人で切り倒したんですよ!?あんな大物、普通は騎士団全員でやっと
戦えるレベルです。それなのに、、こんなに近くにいるのに魔力を感じないって、怪しすぎるでしょう!」
と、第3騎士団では若手のフレッドが言う。
「彼の名前も、どこの者かは俺も知らない。だが、彼が善人である事は知っている。」
夢の中で会っていたと言って、信じてもらえるとは思わない。だが夢の中で会った彼は怪我人を放っておけない人間だ。
「善人がハーフ、なんていいます!?」
フレッドが言う。
ハーフとは、ラトドラでは中途半端なという意味で使われる。
竜人にもなりきれず、人間にもなりきれない俺を指す言葉。
「俺が彼に言ったんだ。彼に悪気はない。・・それに、彼は魔力を操作しているのではなく、魔力を持っていないんだ。」
「!」
「そんなっ!そんな人間いるはずないでしょう!」
驚く二人に不思議はない。
この世界の人間なら誰しもが持っている魔力。
それを持たないということは・・

「彼は、ここではない別の世界から来たと?魔力を持たぬ黒髪・・いや、でも、コイツは男で人間ですよ。」
マドックが言う。
「え?あ、あれですか?竜人の始祖の竜の番は魔力を持たない黒竜だったっていう言い伝え。魔力の強すぎた竜は暴走する魔力を抑えきれず、この土地を壊しかけたが、どこからか別の世界から現れた魔力を持たない黒竜と番う事でこの土地に平和と繁栄をもたらしたって言う。」
誰もが知るこの大陸の言い伝えだ。
魔力なしなど存在しないこの世界では、それはおとぎ話のような言い伝えだった。
しかし彼の存在は、この世界を揺るがすほどの衝撃を与える。
なぜなら・・。
「魔力を持たぬという事は、相手の魔力に染まるという事か。」
なるほど、魔力の高いマドックも気づいたようだ。
「そうだ。人間は魔力の相性で結婚相手を選ぶものが多い。竜人は番が見つかれば番う事ができるが、見つからない場合、やはり魔力の相性で相手を選ぶ。魔力がないということは・・「自分色に染められるって事ですか!」
と俺にかぶせてきたのは、興奮したフレッド。
「まあ、そうゆう事だ。彼が女だったら良かったな?」
「そうだ、コイツ男でしたよね。綺麗な顔してるけど・・。」
そう言って寝ている彼の顔を覗き込むフレッド。
「・・彼はここで寝かせるから、今日はもう部屋へ戻れ。」
「えっ!団長のベッドで!?」
「彼の知り合いは俺だけだ。目が覚めて、何か問題を起こしても困る。」
「ええ、でも・・。」
中々納得しないフレッドに苛立った時、
「フレッド、もうその辺で。団長?彼については明日また話を聞きますから。」
マドックはそう言うとフレッドを連れ部屋を出て行った。

部屋には彼の寝息だけが聞こえ、寝るには明るすぎる照明を少しばかり暗くし、ベッド横の椅子に座った。
薄暗い部屋の中、彼の肌は浮き上がるような白さで目が奪われる。
ただ、自白魔法の影響でなんとなく青白さと疲労を感じさせる。

怪しい者に自白魔法をかけるのは、騎士団としてなんら問題ない行為だ。
それなのに、彼が苦痛でもがく姿を見ていることは出来なかった。

それがなぜか分からないが、眠る彼の青白いそのほおにそっと触れてみると、あたたかさを感じほっとした。
人間は弱く脆い。
俺はきっと彼を死なせたくなかったんだろう、そう思うことにした。


葵視点

ふわふわとした意識の中、ほおに触れる感覚にふと目を覚ますと、そこにいたのは・・。

「あおいちゃーん!!大丈夫!?ごめんねっ、俺失敗しちゃってぇ!」
と泣きついてきたのは真っ白な服を着た金髪のチャラ男だった。その目にはウルウルと涙が浮かぶ。

・・すごい面倒な予感。もう一回寝たら、帰れますか。。

「だからさ、葵ちゃんが事故で死んじゃうってなった時、やばいと思ってさ、こっちの世界に飛ばしてあげたの。俺って超優しいでしょっ!」
金髪チャラ男は自慢げにそう言った。
「飛ばしたってどうゆう事?それに、飛ばした先はあんな森の中だし、でっかい魔物いるし、ここに来たら魔法かけられるしっ・・いい事一つもないっ!」
キレてそう言った私に、
「ごめん、目測誤っちゃって。葵ちゃん吹っ飛ばされちゃったからさ、そこんとこは大目に見てよ。あ、俺ね、神さまの使い。そっちの世界でいう天使!」
金髪に緑の目のチャラ男はにっこり言い、迫ってくる顔の距離はめっちゃ近い。
お綺麗なその顔を手のひらで押し返し、
「ねえ、これって夢じゃなくて現実?私は・・死んじゃったの?」
どう考えたってあの状況じゃ死んでるとしか思えない。
でも、この状況を現実とも受け入れられない。

「現実だよ。」
チャラ男天使の顔から笑みが消えた。
ドクンと心臓が鳴る。
どこかで、そうかもしれないと思い始めていた事が現実になったからだ。
「・・一瞬の出来事だったから、魂だけをこっちに連れてきたんだ。葵ちゃんの身体は向こうにあるよ。今は意識不明の重体で病院にある。どうする戻りたい?」
「戻れるのっ?」
まさか戻れる選択肢があるとは思わなかった!!
「期待を持たせるような事を言って申し訳ないんだけど、今すぐは無理なんだ。魔力が満ちる時まで時間がかかる。その時までに葵ちゃんの身体がもってくれるか、というのもある。それと、、目が覚めたとして、あの身体で長く生きれるかどうかは分からない。」
「!!」
目の前が真っ暗になった。
私は、帰れたとしても日本じゃ生きられないかもしれない。
・・いや、本当なら死んでいたんだ。
「なんで、助けたの?っごめん、ほんとはお礼言わなきゃなんだろうけど、あっちに戻れる可能性があるなんて、、私田中葵の人生を簡単に捨てられないよ!向こうで待ってる人がいる。きっと親も、友達だって、仕事もっ!私、死にたくなかったっ!」
私のベッドに腰掛ける天使に泣きながら怒鳴りつけた。

死ぬような事をしたのは自分
目の前で誰かが死ぬなんてもう二度と見たくなかったから

「ごめんね、葵ちゃん。俺は天使だから嘘はつけないんだ。事実が残酷だと分かってても。」
チャラ男天使は私の背中を優しく撫でた。
悲しいし、悔しい、親に申し訳ないとか色んな気持ちが入り混じるのに、天使の手は優しく語りかける。
「俺はまだ力が足りないから、出来る事も多くはない。でも、葵ちゃんがこっちの世界でも幸せになれるよう手伝う事はできるよ。」
こっちの世界の幸せ?
「・・めっちゃハードモードとしか思えない。それになぜ男になってるの?こっちでは男の人生を生きろと?」
ズビッと鼻をすすりつつも、文句を言う。
拾ってもらった命でも、、天使ならもう少し配慮があっていいはずでは?
「ああ、男に見える様にしてるだけ。身体を作り変えるなんて高度な事俺には出来ないよ。こっちの世界はさ、みんな魔力持ってるの。持ってない子はいないんだ。そこに魔力のない女の子の葵ちゃんが行くと・・。」

行くと・・?嫌な予感がするんですが。

「俺色に染めたいっていう支配欲の強い男達に連れ去られて、孕まされちゃうかなあって。」
ヘラっと笑う天使の肩を持って全力で抗議する。
「!っ、わ、笑ってる場合じゃないよ!全然駄目じゃん!」
揺さぶられた天使は、
「だから、男に見えるようにしたじゃん。こっちの世界の17、18ぐらいかなあ?それで、ここからが俺の腕の見せ所!」
満面の笑みの天使にもう不安しかない。
「男の魔力をもらうと、女の子に戻れるんだよ!」
ドヤ顏の天使に恐る恐る聞いてみる。
「魔力って、一体どうやって?」

「セックス!!」

と言い切った天使のアホヅラを右ストレートで吹っ飛ばした。
「バカじゃないの!チャラチャラしてんのもいい加減にしなさいよね!?もっと真面目に考えろ!!」
パワーアップした私のストレートにベッドから転がり落ちた天使がよじ登って言うには、
「いったい、、もう、力与えすぎたかも。。だってセックスが一番効率がいいんだ。要は血液や体液に魔力が宿っていて、それが全身を循環してるんだ。だから、血を飲んだっていいけど・・それじゃサイコでしょう?あ、唾液・・でもいけるかな?」
へへっと笑う天使にどっと脱力する。
女に戻るには、キス、もしくはセックス?
日本に戻ったら意識不明?

・・こんなハードモードは辛すぎるっ!!




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