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錯覚
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葵視点
性悪マドックに騎士団の練習場に連れて行かれた。
騎士団って、どんなマッチョ集団だよと後ろをついていくと、だだっ広いグラウンドでは白と赤の軍服を翻しながらマッチョな男達が剣を振りかざし実践さながらの殺気を放って練習していた。
軍馬を見事な手さばきで操り、剣を交える白の集団は皆身体が大きく、剣の一振り一振りにブォン、ブォンと重そうな音を立て振り回している。その剣を振り回す各々の面構えと言ったら、彫りの深い彫刻みたいな美形集団。
そして、白とは反対のグラウンドには赤い軍服を着たイケメン集団。皆厳しい顔で相手の隙を突くべく、砂埃を上げ立ち位置を変えながらカキン、カキンと剣を交え、交えた剣越しに力を込めてはどちらも引かぬとイケメン同士が睨み合う。
美形とイケメンどう違うかって?
白はなんか人外的で神秘的。赤は禁欲的な健康男子、と言ったところだろうか。
ああ、どちらも捨てがたい。。
マドックの後ろで25才女子としてはいたって普通に?じゅるりと内心悶えていたら、急に止まったマドックの背中に激突した。
「っす、すみません。」
「バカな上に鈍臭いのか。」
カッチーン!と蔑むような顔をしたマドックを睨んだら、
「ん?なんだマドック、可愛らしいのを連れて。まさかお前の隠し子か?」
「まじかよっ!」
「あ、なんかマドックの魔力に似てる?」
「っ!お前ちげーよ!あれ見ろっ!」
「緑色のコントスっ!?って、まさかっ!」
ガハハと豪快に笑うのは、褐色な肌のガチマッチョなおじ様。めっちゃ強そうだけれでも、どうしても目がいってしまうのは、軍服の左腕。
風にはためいて翻っている。。肘から先はおそらくないんだろうことが予想できる。
そしてその後ろでたむろし騒ぐ青の軍服集団。
・・おかしいな。白と赤の軍服さん達は素晴らしく眼福であったのに、青の集団は。。
詰襟の前ボタンを全開で、インナーの白シャツを見せ、うんこ座りをする者、やたら長い剣をかったるそうに地面にぶっ刺してる者、〔誰だてめえ〕な視線でこっちを睨む者・・。
ヤンキーか、いや今時半グレ?ものすごくガラの悪い集団。
「副団長、他の大陸から来たアオイです。団長の判断で第三騎士団に今日から配属となりました。」
「・・へえ?あいつが?」
にやっと笑った副団長がこちらに近づいてくる。
ぐいっと大きな右手であごを持ち上げられると至近距離で真っ青な瞳に凝視される。
おおううっ。い、威圧感半端ないっす。。
と固まり取り合えず見つめ返すと、
しいぃんと静まる周囲。
さっきまで誰だアイツ、とガヤガヤ騒いでいた外野が静まったのが気になって、ちらっと横目で様子を伺うと、どうしたのか皆一様に眉間にしわを寄せ、歯を食いしばっている。
「え?」
どうした?みんなお腹痛いみたいな??
「・・なるほど。変わりモンだなあ。」
ぽいっと副団長さんの手が顎から外された。
「なるほどってなんですか?」
ぐいっと上げられて痛んだ首をさすりながら聞くと、
「俺の魔力に動じないからだ。さっき、割と本気で魔力を放出したんだ。だから周りのモンには威圧を与えちまったが、お前はピンピンしてんな。しかも、団長に魔力を管理されてるんだろ?外したら、どんだけの魔力があるのか興味があるね。」
と、私の首にかかる緑色のネックレスに手がかかる。
っ!まっまずいよ。取られちゃったら、魔力ないってバレちゃうっ!
「副団長、危険なのでやめて下さい。彼は魔力を暴走させたった一人でモーボ(紫のくっさい魔物)を倒したんです。」
「「なっ、なんだと!!本当か!?」」
ざっと、驚愕の目でヤンキー集団に見つめられる。あの魔物ってそんなにやばいの?と再確認する。
「・・まあ、そうです。」
へへっと笑うしかない。
「その際、団長が切り倒すのを止めようとしたのですが、一歩届かず団長共々奴の体液を浴びて保護した事もあり、その力を騎士団で使うように団長が勧めたのです。」
おお、そんなストーリーになったのね。
「・・ふうん。まあ、腑に落ちない点はあるが、アイツがそれでいいなら問題ないだろう。
よし、アオイ。歓迎も兼ねて、第3恒例の川遊びに招待してやる!」
とワイルドダンディなおじ様は笑った。
へ?川遊び?
「「まじかよっ!!死ぬっっ!!」」と騒ぐヤンキー達。
へ?川遊びなのに、死ぬってどゆうこと!?
ーーーそして、今
「こ、この山道どこまで続くんですかっ!!」とキレながら隣を走るフレッドに聞くと、
「あと、5キロぐらいか?」としれっと言われた。
5キロ。。
ここまですでに20キロは走っているっていうのに。
副団長さんが言った川遊びとは、練習場から遠くに見えた山まで登り、そこに流れる綺麗な川で水遊びをしよう!という地獄のマラソンだった。
ヤンキーの皆さんはぶうぶう言いながらも、きっともう着いているに違いない。
私の横を走るフレッドは、副団長さんから新人の面倒はお前が見ろと命令されたため横で並走している。
そんなめんどくさい事を頼まれて嫌なのは分かるが、、
「遅えよ、本気出せ。」
「それでも団長のコントスか?」
「お前、まだ走れんだろ!?」
など、叱咤が飛ぶ。
なぜ、彼がそういうか多少は分かる。
なぜって、最初の10キロまでは余裕でぶっちぎり先頭だったから。まあ、チートのおかげなんだけど。
しかし、私のチートは限界10キロまでだったようでもうそこからは・・。
決して怠けてるわけじゃないんだけど、最初とのギャップが彼をスパルタにしている気がしてならない。
くそ、あのチャラ男天使!半端なチート寄越しやがってっ!今度会ったらぶっ飛ばすっ!とハアハアしながら山を登ると、ざあざあと流れる水の音。
「おー、来た来た。」
「ふーん、初めてにしちゃ速いか?」
草むらをかき分けた先にあったのは、大きな木々と白い花々囲まれた綺麗な川。
川上の方に目を向ければ、水しぶきを上げる滝つぼが見え太陽の光に反射し虹ができていた。
そこを蔦を使い滝つぼにジャンプするヤンキー達。
おおっ。めっちゃファンタジー!
はあ、はあと息が上がったままその景色の美しさに見とれていると、
「よし、じゃあやるかっ!」
「おう、そうだなっ!」
ヤンキー達がぞろぞろ取り囲んで来た。
な、なんだ何やるの!?と思った瞬間、私の身体はヤンキー達によって軽々とお空までビョーンと飛んで滝つぼにザブンとダイブした。
バッシャーンという音を聞きつつ、ハードモードはやっぱり辛いなんて水の中に沈みながら心の中で泣いた。
元々、泳ぐのは得意だったのでどうにか水面まで上昇すると、
「おお、気持ちいいだろ!?」
とヤンキー達がギャハギャハと笑う。
なんなんだ、男子高校生か?
男って幾つになってもバカだなあ。。とずぶ濡れになった髪の毛をぎゅうっと縛っていると、
川の流れに逆らって、競争して泳いだり、滝つぼにジャンプしたり、みんなこっちのことなど気にせずに遊びだした。それらを横目で見ながら川辺に腰をかけると、
「これ、新入りの歓迎イベントなんだ。お前良かったな。」とフレッドが笑顔で話しかけてきた。
なにフレッド、お前いい奴?
「だが俺は認めねえ。」
あ、メンドクサイ男がここに・・。
「だいたいなあっ、なんでお前団長のことをハーフ呼ばわりすんだよっ!」
だって、ノアさんがそう言ったんだもん。
「しかもモーブに切ってかかって、団長までとばっちりじゃねえかっ!」
あの魔物切っちゃいけないなんて、そんなん知らないし。
「しかもなんでコントスっ!団長とっ!!」
・・・。
パシャっと水の中に入れた脚をばたつかせると、なんとも疲れが取れて気持ちいい。
「おい、聞いてんのかっ!?」
「うるさいなあ。フレッドが団長大好きなのはよく分かったよ。」
「なっ、、そうじゃなくてだなあっ!「おい、まとめて浄化魔法かけるからお前達もこの辺にシャツ脱いでおけよ。」
図星を突かれてあわあわしてるフレッドをおそらく年下だろう、お前の愛は全く団長に届いていないと愛でていると、性悪マドックがシャツを脱げと言ってきた。
皆、汗だくで走り込んで疲れたところ魔術師に綺麗にしてもらえるので喜んでシャツを脱ぎ捨てていき、その素敵な筋肉を惜しみなく披露していらっしゃる。
まあ、今男だし?
いつまでも濡れたシャツでいるのもおかしい・・けど。
でも・・。
「何してんだよ、さっさと脱げ!」と男らしくシャツを脱ぎ捨てるフレッド。
・・ほうほう。
ガチマッチョとまではいかないが、日本(あっち)じゃ、「バキバキ~!なんかスポーツやってるの?水泳?」みたいな筋肉。
そんな私のいかがわしい目線にも気付かず、フレッドは半裸になると川へとすいっと気持ちよさそうに泳ぎに行った。
川底まで見えそうなほど澄み切った綺麗な水は適度に冷たくて気持ちいい。
ここで女子ならば半裸で川に飛び込む男子をバカだねえと笑っているところだが、、。
今は男だしっ!!
ばさっとシャツを脱いで川へとダイブした。
素肌に感じる水の感触。
久しぶりの水をかき分け進む心地よさ。
泳ぎ切りざばっと水面から顔を出すと、深さはみぞおちぐらい。
・・うん。私の細マッチョな身体は健在だわ。
ガチガチすぎるのは私の好みじゃないのよねえなんて自分の胸筋をペタペタと触っていると、何やら視線を感じる。
??と顔を上げると、ヤンキー集団がこちらを凝視していた。
え?なに、魔法解けちゃってるとかないですよね!?
焦って自分の身体を見るが特に変化はないように見える。
「なんか・・エロくねえか?」
「ああ、おかしいな。あの細っこい身体が妙に・・。」
「肌が白いからか?・・乳首がピンクだからか?」
えええっ!?お、男だよ!今男!!しかも乳首の色とか見るなっ!セクハラだぞっ!
「胸はねえし、男なのは間違いねえけど。」
そうそう。
「細っこいけど筋肉あるし、モーブ倒したって言うし。」
うんうん、チートのおかげだけどね。
「ちょっとちんこ付いてるか確認しようぜ。」
なぜっ!!
じりじりと近づく筋肉マッチョなヤンキー集団に嫌な汗をかく。
いや、まあ今あるけどさ、気がつきたくなかったけど、水の中で何やらぷらんぷらんと揺れるものを感じてるけどね?なんなら、朝ごはんの後、トイレでそおっと確認したよ。私のジュニアさんを(泣)
リ、リアル。
まあまあそこそこなジュニアさんがこんにちわと鎮座してました。
あのチャラ男天使、身体は作り変えられないってほんとだよね?と心配になるぐらいのやつ。
じりっと近づくヤンキー集団の影。
こ、これは、、どうするっ。。
バカ付いてるよほらっ!と豪快に脱ぐ?
いやそんなん、露出魔でしょう!?
「おい、お前・・。」
腕を掴まれ、これは、、ピーンチと思った瞬間、
ざあっと川の水が大きく飛沫をあげた。
飛沫によって頭の上から水を被った私が次に見たのは、青の軍服を着た広い背中。
銀色の髪が光を浴びて白く光る。
ノアさんだ。
「お前たち、何をしている?」
地面に轟ような低い声。
背中越しにでも魔力の感じない私でも感じることの出来るほどの威圧感。
近づいていたヤンキー集団達が、ぴしりと固まるのが分かる。
「何をしたのかと聞いている。」
低い声でさらに問いただすノアさん。
威圧を受けたヤンキー集団は答えようにも威圧感に耐えられず今にも倒れてしまいそうだ。
「あ、あの、遊んでいただけ、ですから。ね?」
とノアさんの背中に手を置き話しかけるとピクッと背中が動き、ヤンキー集団達が「ふうっ・・。」と脱力した。
どうやら威圧感が薄れた?
「皆さん、歓迎してくれてたみたいなんで、、大丈夫ですよ。」
そう言うと、ノアさんはふうとため息をついてこちらを振り返った。
が、ぴしりっ固まった。
え?何?そう思いノアさんの緑の瞳を見つめると縦長な瞳孔が開くのを見て、本能がなんかやばい?を感じた瞬間、ばさっと布で包まれる。
身体を包むのは、さっきまでノアさんが着てた青い軍服。
「・・新人いじめなど、恥を知れ。コイツは連れて帰る。」
え、帰るの?っと思うや否や、ノアさんの軍服で包まれた私はノアさんに軽々片手で縦抱っこされ、ノアさんが乗ってきたであろうお馬さんで山道をものすごいスピードで下っていく。
「あ、わっ、、。ノ、、団長さん!あ、危なくないですかっ!?」
「・・ノアだ。」
は?ノア?知ってるがな。今それどころじゃっ、、。
「わっ、目の前、崖、崖ですっってぇぇ!」
目の前には真っ逆さまに落ちそうな崖。落ちたら死ぬと思われる20メートルぐらいある崖。対岸まではざっと10メートル弱、こんなハイスピードで止まれる気がしない。この馬飛べるような羽はついてないけどっ!?
「掴まれ。」
お腹に響く低い声が耳元で囁かれる。
こ、こんな時にときめいてる場合じゃないのにい!!
タンッという音とともにお馬さんは止まらず飛んでしまった。
顔に感じる風とスピード。
お、落ちたら死ぬっとぎゅうっとノアさんの分厚い胴回りに抱きつく。時間にすればきっと5秒もないようなほんの短い時間。ザッとお馬さんが着地する音が聞こえた。目を開ければ、森の中をお馬さんが何事もなかったかのようにパッカパッカと走っていく。
「よ、良かった。」
はああと身体中の力が抜けると、
「飛ぶのは気持ち良かったか?」
と落ちそうになる腰を支えてノアさんが言った。
「気持ちいいわけないでしょう!?めっちゃドキドキしましたよ!普通の道で帰ってくださいよ!」
思わず怒鳴って、顔を見上げると、思いのほか顔の近さに驚く。私の髪の毛がノアさんのあごに触れている。
「一刻も早く連れ帰りたくてな。」
!!な、なんて言う甘い声。。
身体中がその甘さにぞくりと鳥肌を立てる。
「あ、・・の、ほんと、いじめられてたとかじゃないですよ?」
なんとなく瞳を右往左往させて答える。
「・・相手の性器を見せろと言うのはいじめではないのか。」
「せっ・・!!」
なんてストレートにっ!
その切れ長で彫刻みたいな顔から『性器』という言葉の暴力が私を襲う。
「俺はハーフだが竜人はとても耳がいいんだ。新人歓迎として川に行くことを思い出して、心配してきてみれば性器を見せろと凄む声が聞こえたんだ。いじめでなければなんだと言うんだ。」
まあ、、そうですよね。なんだったんでしょう?
「でも、アオイを見たら分かってしまった。」
「えっ?」
なに、まさかっ、、女だって!?ヒヤリと汗を背中が伝う。
「アオイは・・。」
何、なに!?
「とても・・美しい。」
「へ?」
どこか恥ずかしげにこちらを見つめたノアさんは、すぐにすっと目線を前へと向けた。
驚きのあまりノアさんを唖然と見つめていると、ノアさんの顔がじわじわとほんのり赤く染まっていく。
・・やっばい。
自分の心音の大きさと顔の熱を隠すために俯くしかなかった。
性悪マドックに騎士団の練習場に連れて行かれた。
騎士団って、どんなマッチョ集団だよと後ろをついていくと、だだっ広いグラウンドでは白と赤の軍服を翻しながらマッチョな男達が剣を振りかざし実践さながらの殺気を放って練習していた。
軍馬を見事な手さばきで操り、剣を交える白の集団は皆身体が大きく、剣の一振り一振りにブォン、ブォンと重そうな音を立て振り回している。その剣を振り回す各々の面構えと言ったら、彫りの深い彫刻みたいな美形集団。
そして、白とは反対のグラウンドには赤い軍服を着たイケメン集団。皆厳しい顔で相手の隙を突くべく、砂埃を上げ立ち位置を変えながらカキン、カキンと剣を交え、交えた剣越しに力を込めてはどちらも引かぬとイケメン同士が睨み合う。
美形とイケメンどう違うかって?
白はなんか人外的で神秘的。赤は禁欲的な健康男子、と言ったところだろうか。
ああ、どちらも捨てがたい。。
マドックの後ろで25才女子としてはいたって普通に?じゅるりと内心悶えていたら、急に止まったマドックの背中に激突した。
「っす、すみません。」
「バカな上に鈍臭いのか。」
カッチーン!と蔑むような顔をしたマドックを睨んだら、
「ん?なんだマドック、可愛らしいのを連れて。まさかお前の隠し子か?」
「まじかよっ!」
「あ、なんかマドックの魔力に似てる?」
「っ!お前ちげーよ!あれ見ろっ!」
「緑色のコントスっ!?って、まさかっ!」
ガハハと豪快に笑うのは、褐色な肌のガチマッチョなおじ様。めっちゃ強そうだけれでも、どうしても目がいってしまうのは、軍服の左腕。
風にはためいて翻っている。。肘から先はおそらくないんだろうことが予想できる。
そしてその後ろでたむろし騒ぐ青の軍服集団。
・・おかしいな。白と赤の軍服さん達は素晴らしく眼福であったのに、青の集団は。。
詰襟の前ボタンを全開で、インナーの白シャツを見せ、うんこ座りをする者、やたら長い剣をかったるそうに地面にぶっ刺してる者、〔誰だてめえ〕な視線でこっちを睨む者・・。
ヤンキーか、いや今時半グレ?ものすごくガラの悪い集団。
「副団長、他の大陸から来たアオイです。団長の判断で第三騎士団に今日から配属となりました。」
「・・へえ?あいつが?」
にやっと笑った副団長がこちらに近づいてくる。
ぐいっと大きな右手であごを持ち上げられると至近距離で真っ青な瞳に凝視される。
おおううっ。い、威圧感半端ないっす。。
と固まり取り合えず見つめ返すと、
しいぃんと静まる周囲。
さっきまで誰だアイツ、とガヤガヤ騒いでいた外野が静まったのが気になって、ちらっと横目で様子を伺うと、どうしたのか皆一様に眉間にしわを寄せ、歯を食いしばっている。
「え?」
どうした?みんなお腹痛いみたいな??
「・・なるほど。変わりモンだなあ。」
ぽいっと副団長さんの手が顎から外された。
「なるほどってなんですか?」
ぐいっと上げられて痛んだ首をさすりながら聞くと、
「俺の魔力に動じないからだ。さっき、割と本気で魔力を放出したんだ。だから周りのモンには威圧を与えちまったが、お前はピンピンしてんな。しかも、団長に魔力を管理されてるんだろ?外したら、どんだけの魔力があるのか興味があるね。」
と、私の首にかかる緑色のネックレスに手がかかる。
っ!まっまずいよ。取られちゃったら、魔力ないってバレちゃうっ!
「副団長、危険なのでやめて下さい。彼は魔力を暴走させたった一人でモーボ(紫のくっさい魔物)を倒したんです。」
「「なっ、なんだと!!本当か!?」」
ざっと、驚愕の目でヤンキー集団に見つめられる。あの魔物ってそんなにやばいの?と再確認する。
「・・まあ、そうです。」
へへっと笑うしかない。
「その際、団長が切り倒すのを止めようとしたのですが、一歩届かず団長共々奴の体液を浴びて保護した事もあり、その力を騎士団で使うように団長が勧めたのです。」
おお、そんなストーリーになったのね。
「・・ふうん。まあ、腑に落ちない点はあるが、アイツがそれでいいなら問題ないだろう。
よし、アオイ。歓迎も兼ねて、第3恒例の川遊びに招待してやる!」
とワイルドダンディなおじ様は笑った。
へ?川遊び?
「「まじかよっ!!死ぬっっ!!」」と騒ぐヤンキー達。
へ?川遊びなのに、死ぬってどゆうこと!?
ーーーそして、今
「こ、この山道どこまで続くんですかっ!!」とキレながら隣を走るフレッドに聞くと、
「あと、5キロぐらいか?」としれっと言われた。
5キロ。。
ここまですでに20キロは走っているっていうのに。
副団長さんが言った川遊びとは、練習場から遠くに見えた山まで登り、そこに流れる綺麗な川で水遊びをしよう!という地獄のマラソンだった。
ヤンキーの皆さんはぶうぶう言いながらも、きっともう着いているに違いない。
私の横を走るフレッドは、副団長さんから新人の面倒はお前が見ろと命令されたため横で並走している。
そんなめんどくさい事を頼まれて嫌なのは分かるが、、
「遅えよ、本気出せ。」
「それでも団長のコントスか?」
「お前、まだ走れんだろ!?」
など、叱咤が飛ぶ。
なぜ、彼がそういうか多少は分かる。
なぜって、最初の10キロまでは余裕でぶっちぎり先頭だったから。まあ、チートのおかげなんだけど。
しかし、私のチートは限界10キロまでだったようでもうそこからは・・。
決して怠けてるわけじゃないんだけど、最初とのギャップが彼をスパルタにしている気がしてならない。
くそ、あのチャラ男天使!半端なチート寄越しやがってっ!今度会ったらぶっ飛ばすっ!とハアハアしながら山を登ると、ざあざあと流れる水の音。
「おー、来た来た。」
「ふーん、初めてにしちゃ速いか?」
草むらをかき分けた先にあったのは、大きな木々と白い花々囲まれた綺麗な川。
川上の方に目を向ければ、水しぶきを上げる滝つぼが見え太陽の光に反射し虹ができていた。
そこを蔦を使い滝つぼにジャンプするヤンキー達。
おおっ。めっちゃファンタジー!
はあ、はあと息が上がったままその景色の美しさに見とれていると、
「よし、じゃあやるかっ!」
「おう、そうだなっ!」
ヤンキー達がぞろぞろ取り囲んで来た。
な、なんだ何やるの!?と思った瞬間、私の身体はヤンキー達によって軽々とお空までビョーンと飛んで滝つぼにザブンとダイブした。
バッシャーンという音を聞きつつ、ハードモードはやっぱり辛いなんて水の中に沈みながら心の中で泣いた。
元々、泳ぐのは得意だったのでどうにか水面まで上昇すると、
「おお、気持ちいいだろ!?」
とヤンキー達がギャハギャハと笑う。
なんなんだ、男子高校生か?
男って幾つになってもバカだなあ。。とずぶ濡れになった髪の毛をぎゅうっと縛っていると、
川の流れに逆らって、競争して泳いだり、滝つぼにジャンプしたり、みんなこっちのことなど気にせずに遊びだした。それらを横目で見ながら川辺に腰をかけると、
「これ、新入りの歓迎イベントなんだ。お前良かったな。」とフレッドが笑顔で話しかけてきた。
なにフレッド、お前いい奴?
「だが俺は認めねえ。」
あ、メンドクサイ男がここに・・。
「だいたいなあっ、なんでお前団長のことをハーフ呼ばわりすんだよっ!」
だって、ノアさんがそう言ったんだもん。
「しかもモーブに切ってかかって、団長までとばっちりじゃねえかっ!」
あの魔物切っちゃいけないなんて、そんなん知らないし。
「しかもなんでコントスっ!団長とっ!!」
・・・。
パシャっと水の中に入れた脚をばたつかせると、なんとも疲れが取れて気持ちいい。
「おい、聞いてんのかっ!?」
「うるさいなあ。フレッドが団長大好きなのはよく分かったよ。」
「なっ、、そうじゃなくてだなあっ!「おい、まとめて浄化魔法かけるからお前達もこの辺にシャツ脱いでおけよ。」
図星を突かれてあわあわしてるフレッドをおそらく年下だろう、お前の愛は全く団長に届いていないと愛でていると、性悪マドックがシャツを脱げと言ってきた。
皆、汗だくで走り込んで疲れたところ魔術師に綺麗にしてもらえるので喜んでシャツを脱ぎ捨てていき、その素敵な筋肉を惜しみなく披露していらっしゃる。
まあ、今男だし?
いつまでも濡れたシャツでいるのもおかしい・・けど。
でも・・。
「何してんだよ、さっさと脱げ!」と男らしくシャツを脱ぎ捨てるフレッド。
・・ほうほう。
ガチマッチョとまではいかないが、日本(あっち)じゃ、「バキバキ~!なんかスポーツやってるの?水泳?」みたいな筋肉。
そんな私のいかがわしい目線にも気付かず、フレッドは半裸になると川へとすいっと気持ちよさそうに泳ぎに行った。
川底まで見えそうなほど澄み切った綺麗な水は適度に冷たくて気持ちいい。
ここで女子ならば半裸で川に飛び込む男子をバカだねえと笑っているところだが、、。
今は男だしっ!!
ばさっとシャツを脱いで川へとダイブした。
素肌に感じる水の感触。
久しぶりの水をかき分け進む心地よさ。
泳ぎ切りざばっと水面から顔を出すと、深さはみぞおちぐらい。
・・うん。私の細マッチョな身体は健在だわ。
ガチガチすぎるのは私の好みじゃないのよねえなんて自分の胸筋をペタペタと触っていると、何やら視線を感じる。
??と顔を上げると、ヤンキー集団がこちらを凝視していた。
え?なに、魔法解けちゃってるとかないですよね!?
焦って自分の身体を見るが特に変化はないように見える。
「なんか・・エロくねえか?」
「ああ、おかしいな。あの細っこい身体が妙に・・。」
「肌が白いからか?・・乳首がピンクだからか?」
えええっ!?お、男だよ!今男!!しかも乳首の色とか見るなっ!セクハラだぞっ!
「胸はねえし、男なのは間違いねえけど。」
そうそう。
「細っこいけど筋肉あるし、モーブ倒したって言うし。」
うんうん、チートのおかげだけどね。
「ちょっとちんこ付いてるか確認しようぜ。」
なぜっ!!
じりじりと近づく筋肉マッチョなヤンキー集団に嫌な汗をかく。
いや、まあ今あるけどさ、気がつきたくなかったけど、水の中で何やらぷらんぷらんと揺れるものを感じてるけどね?なんなら、朝ごはんの後、トイレでそおっと確認したよ。私のジュニアさんを(泣)
リ、リアル。
まあまあそこそこなジュニアさんがこんにちわと鎮座してました。
あのチャラ男天使、身体は作り変えられないってほんとだよね?と心配になるぐらいのやつ。
じりっと近づくヤンキー集団の影。
こ、これは、、どうするっ。。
バカ付いてるよほらっ!と豪快に脱ぐ?
いやそんなん、露出魔でしょう!?
「おい、お前・・。」
腕を掴まれ、これは、、ピーンチと思った瞬間、
ざあっと川の水が大きく飛沫をあげた。
飛沫によって頭の上から水を被った私が次に見たのは、青の軍服を着た広い背中。
銀色の髪が光を浴びて白く光る。
ノアさんだ。
「お前たち、何をしている?」
地面に轟ような低い声。
背中越しにでも魔力の感じない私でも感じることの出来るほどの威圧感。
近づいていたヤンキー集団達が、ぴしりと固まるのが分かる。
「何をしたのかと聞いている。」
低い声でさらに問いただすノアさん。
威圧を受けたヤンキー集団は答えようにも威圧感に耐えられず今にも倒れてしまいそうだ。
「あ、あの、遊んでいただけ、ですから。ね?」
とノアさんの背中に手を置き話しかけるとピクッと背中が動き、ヤンキー集団達が「ふうっ・・。」と脱力した。
どうやら威圧感が薄れた?
「皆さん、歓迎してくれてたみたいなんで、、大丈夫ですよ。」
そう言うと、ノアさんはふうとため息をついてこちらを振り返った。
が、ぴしりっ固まった。
え?何?そう思いノアさんの緑の瞳を見つめると縦長な瞳孔が開くのを見て、本能がなんかやばい?を感じた瞬間、ばさっと布で包まれる。
身体を包むのは、さっきまでノアさんが着てた青い軍服。
「・・新人いじめなど、恥を知れ。コイツは連れて帰る。」
え、帰るの?っと思うや否や、ノアさんの軍服で包まれた私はノアさんに軽々片手で縦抱っこされ、ノアさんが乗ってきたであろうお馬さんで山道をものすごいスピードで下っていく。
「あ、わっ、、。ノ、、団長さん!あ、危なくないですかっ!?」
「・・ノアだ。」
は?ノア?知ってるがな。今それどころじゃっ、、。
「わっ、目の前、崖、崖ですっってぇぇ!」
目の前には真っ逆さまに落ちそうな崖。落ちたら死ぬと思われる20メートルぐらいある崖。対岸まではざっと10メートル弱、こんなハイスピードで止まれる気がしない。この馬飛べるような羽はついてないけどっ!?
「掴まれ。」
お腹に響く低い声が耳元で囁かれる。
こ、こんな時にときめいてる場合じゃないのにい!!
タンッという音とともにお馬さんは止まらず飛んでしまった。
顔に感じる風とスピード。
お、落ちたら死ぬっとぎゅうっとノアさんの分厚い胴回りに抱きつく。時間にすればきっと5秒もないようなほんの短い時間。ザッとお馬さんが着地する音が聞こえた。目を開ければ、森の中をお馬さんが何事もなかったかのようにパッカパッカと走っていく。
「よ、良かった。」
はああと身体中の力が抜けると、
「飛ぶのは気持ち良かったか?」
と落ちそうになる腰を支えてノアさんが言った。
「気持ちいいわけないでしょう!?めっちゃドキドキしましたよ!普通の道で帰ってくださいよ!」
思わず怒鳴って、顔を見上げると、思いのほか顔の近さに驚く。私の髪の毛がノアさんのあごに触れている。
「一刻も早く連れ帰りたくてな。」
!!な、なんて言う甘い声。。
身体中がその甘さにぞくりと鳥肌を立てる。
「あ、・・の、ほんと、いじめられてたとかじゃないですよ?」
なんとなく瞳を右往左往させて答える。
「・・相手の性器を見せろと言うのはいじめではないのか。」
「せっ・・!!」
なんてストレートにっ!
その切れ長で彫刻みたいな顔から『性器』という言葉の暴力が私を襲う。
「俺はハーフだが竜人はとても耳がいいんだ。新人歓迎として川に行くことを思い出して、心配してきてみれば性器を見せろと凄む声が聞こえたんだ。いじめでなければなんだと言うんだ。」
まあ、、そうですよね。なんだったんでしょう?
「でも、アオイを見たら分かってしまった。」
「えっ?」
なに、まさかっ、、女だって!?ヒヤリと汗を背中が伝う。
「アオイは・・。」
何、なに!?
「とても・・美しい。」
「へ?」
どこか恥ずかしげにこちらを見つめたノアさんは、すぐにすっと目線を前へと向けた。
驚きのあまりノアさんを唖然と見つめていると、ノアさんの顔がじわじわとほんのり赤く染まっていく。
・・やっばい。
自分の心音の大きさと顔の熱を隠すために俯くしかなかった。
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「夕鶴、こっちにおいで」
現役の高校生だけど。
「ずっと夕鶴とこうしていたい」
担任の先生と。
「夕鶴を誰にも渡したくない」
付き合っています。
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神城夕鶴(かみしろ ゆづる)
軽音楽部の絶対的エース
飛鷹隼理(ひだか しゅんり)
アイドル的存在の超イケメン先生
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彼の名前は飛鷹隼理くん。
隼理くんは。
「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」
そう言って……。
「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」
そして隼理くんは……。
……‼
しゅっ……隼理くん……っ。
そんなことをされたら……。
隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。
……だけど……。
え……。
誰……?
誰なの……?
その人はいったい誰なの、隼理くん。
ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。
その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。
でも。
でも訊けない。
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私にはできない。
私は。
私は、これから先、一体どうすればいいの……?
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