からだからでもいい？

＜からだからでもいい♡＞

からだからでもいい♡

誠とはお互いの部屋に行ったこともないし、誠とつながる通信はブロックしたから、あれから誠に会うことはない。
あんなに必死につながりたいと思っていたのが嘘みたいにどうでもよくなった。

自分のデスクに座って、ラブイボMAXを見つめる。

誠は自分はあまり気持ちよくないと言っていたけど、俺は気持ちよかったな・・・
てか、相手がゴウさんだったから？

あ～あ、連絡先を聞いておくんだった
ゴウさんの恋人にはなれないと思うけどセフレくらいはなれないかな～
って、そんなこと言ってもゴウさんにその気がなければだめだと思うし、なにより恋人に裏切られて惨めなところを見られていて、たまたまあの時は誘ってくれたけど、もうないな・・・

あんなにエッチが上手いひと・・相手には困ってないよね

てか

俺って、誠の時もエッチが先で付き合って失敗したばかりじゃん。



はぁ・・・・
帰りにグラントに行こう。





いくつもの小さいお店が並んでいるうちの一つ、黒と白のツートンでまとめられた扉に【グラント】と大きくもなく小さくもないサイズで書かれたプレートをライトで照らしただけの外観で知らなければ入りずらい。
隠れ家的なバー。

グラントの扉を押し入店すると「「いらっしゃいませ」」とバーテンダーの声が綺麗にかさなる。
カウンターにはいつも二人のバーテンダーがいて、今夜は二十代後半の背の高い色素が薄そうだが、感じのいい男性と黒髪を後ろに流して、黒縁の眼鏡が野暮ったくなくむしろスタイリッシュに見える、こちらも背の高い三十代だろうと思われる男性の二人がカウンターに入っていた。

店内は黒を基調としたシックなつくりで落ち着く。

悠歩はグラントで飲むときは、目立たないカウンターの端の席に座わっていた、むしろそこが指定席でもあるかのように地味な悠歩には似合っていた。

いつもカウンターで一人で２杯～３杯くらい飲んで、バーテンダーと少し話をして帰るというのが週末の楽しみだったりする。

特に、誠と別れた今となっては・・・・といっても、誠とはいつも休憩でヤッたら帰るだけだったので、それほど大きな変化もないのだが




「ジントニックを」




黒眼鏡が「わかりました」と言ってカクテルを作り始める

悠歩がカウンターに座るのは、一人だということもあるが、バーテンダーがカクテルを作る姿を見ていたいというのが大きな理由だ。

グラスに氷を入れ、ライムを絞る
長くて細い指先がライムを絞る姿はとてもセクシーに見える
マドラーで優しく氷を回す指に、先日の甘い時間を思い出させる。


あの指で触れられたらどんな感じだろう、強すぎず、弱すぎず緩急をつけて弄られたらそれだけでイっちゃいそうな気がする。　

などと、馬鹿なことを妄想する。
欲求不満かな・・誠の稚拙なセックスに慣れてたところに、ゴウさんの濃厚なのを喰らって思いだしただけでも身体が熱くなりそうだ。

「おまたせしました、ジントニックです」

妄想の世界から思考が戻ってくると、黒眼鏡のバーテンダーが、目の前にコースターの上にのせられたジントニックをスライドさせてきたところだった。
手が離れていくとそこには一万円札が四つ折りにされコースターの端に挟まれていた。

はっとして顔をあげると、
バーテンダーは眼鏡をはずして微笑みながら
「今夜、この後、会えませんか？」





もちろん俺の答えはYESだ






鷹岡郷（タカオカ　ゴウ）のマンション


朝日がカーテンを透して窓際を照らす。
郷の腕の中で悠歩は目を覚ますと、部屋をぐるりと見渡す。

これは、あきらかにバーテンダーだけの給料では住めないマンションだよな

昨夜、郷につれられてこの部屋で夜が明けるほどまで穿たれ何度も絶頂をあたえられ、気づくと郷の腕の中で朝を迎えていた。

だれかと朝を迎えるってどれくらいぶりだろう？

「わたしの腕の中でまた誰かのことを考えてる？」

「まさか」

「なら、この先はわたし以外の男のことを考えることを禁止したら？」

「浮気をしないなら」

「それなら問題ない」



そう言うと、キスをしながらベッドの海に沈み込んでいった。