からだからでもいい?

長月〜kugatu〜

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<実家からの電話>

実家からの電話

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こんな時間であるが、会社の上司に電話をしてみる。
事情を話すと休みをとっていいということでスマホから航空会社のサイトに行き朝一番の航空券を予約した。
部屋に帰ってからは、勝手に身体がうごいて荷造りをしていた。


悠歩は一番早い飛行機に乗り込み自分が生まれ育った大地に向かった。

母親からの深夜の電話は父親が倒れて緊急搬送され、ICUで治療を受けていると言うことだった。
高校生まで住んでいた町、初恋の人がいた町。まだ住んでいるんだろうか。
新千歳空港からは快速に乗って1時間とちょっとで小樽に到着する。
家はそこからまだかかるが父親が搬送されたのは小樽市内の病院であることから駅に到着後はまずは病院に向かう予定である。



高校時代に仲の良かったクラスメイトがいた。
明るく活動的でクラスの中心的生徒で引っ込み思案の悠歩にも優しく楽しく接してくれていた。
そんな彼に憧れていたがもちろんそんな気持ちは仕舞い込んでおくつもりだった。
悠歩が自分の性癖に気がついたのは高校に入学して友達との会話で好きな人の話になっても、女子に対してドキドキするという感情が湧かず、クラスの男子で共有するようなエッチな雑誌やDVDなども付合いで借りることはあるがそれを見て自分のモノが反応することはなかった。
唯一、ドキドキする対象が”彼”だった。

女子にも人気があり男の自分が彼に告白するとか全く考えていなかった。
ただ、友人のひとりとして隣にいられるだけで十分に楽しかったし、これからもそうするつもりで大学も”彼”や友人達と一緒に札幌に行く予定だった。


3年なった春、クラス替えがあり”彼”と離れることになった。
1年、2年といつも同じだったからすこし寂しいという気持ちがあり、放課後はよく”彼”のクラスに行って話しをしていた。
ある時急に”彼”が「椎崎って俺のこと好きだろ」と言われ冗談として笑い飛ばせばよかったのだが、うまくごまかすことが出来なかった。
「ごめん」とだけ言って走って帰ったが、翌日友人だと思っていた人たちが距離を置くようになった。
”彼”も悠歩を避けるようになり”椎崎は男が好き”という噂が広がっていった。

小さな町ではあっという間に噂がながれて父親に絶望され母親は泣いていた。
札幌の大学から東京の大学へ進路を変え、この町に帰ることはなくなり今日、高校卒業以来初めて小樽の駅に降り立った。




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