碌の塔

ゆか太郎

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終わりの星と巡る四季

最終章:春は巡る

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 年が変わり、正月も節分もバレンタインも存在しない冬が過ぎていった。壁にかけられた手製のカレンダーの日付にバツをつけていくことだけが時間の経過を実感する唯一の手段だった。カレンダーを一枚破る頃にはいつも余白が誰かの落書きで埋められていたのだけれど。正月休みを十分に堪能してからは以前と同じような生活に戻っていった。一度休んでしまったのでカフェ経営を再開できるか心配だったが、思っていたよりも自分はこの生活が好きだったらしい。会社で働いていた頃に、休みが終わってしまうのが嫌で皆で駄々を捏ねていたのがなんだか遠い昔のことのように感じた。営業を再開したカフェには以前と同じようにお客さんが来てくれた。他に残っている娯楽施設が集会所しかないこの町ではいつの間にかここが住民たちの憩いの場になっていたらしい。自分としても、ついこの秋に引っ越してきたばかりだとは思えないほど、この場所にも町の人たちにも愛着が湧いていた。のどかだが殺風景とは言い切れない景色。自然と生活が隣り合った町。優しくて親切な、特別でない普通の人たち。カフェに集う彼らをキッチンから眺め、時には呼ばれて一緒に席に座って談笑し、夜には二階の窓から町の灯りを見る。そんな生活がいつしか自分の当たり前になっていたのだと気づいた頃。たった三枚のカレンダーは、あっという間に残り一枚になってしまっていた。その最後の一枚には二週間分しか日付が書かれていない。残された時間の少なさに浸る間もなくカレンダーにはバツが増えていく。はたと手を止めた夜には、既に数字は残り二つになっていた。
  
 寒さも衰え始め、冬ごもりしていた生き物が目覚める頃。少しずつ暖かくなり、春らしさが感じられる様になってきた。『喫茶 コット』の最後の営業日はいつも以上に盛況だった。ランチもスイーツもすぐ完売してしまったのだが、少しだけでもと立ち寄ってくれるお客さんが後を絶たなかった。カフェを始めてすぐの頃から来てくれていた主婦の人たち。毎週末スイーツをテイクアウトしに来てくれた同い年くらいの女性。友人にいつの間にか懐いていた近所の子供たち。誰もが笑顔で顔を出し、少し残念そうな顔をしながら、しかし笑顔で帰っていった。感謝の気持ちだと言って食材や花束を持ってきてくれた人もいた。たった六ヶ月間しか営業していなかったのに、こんなにも沢山の人が惜しんでいてくれていたことに驚いた。それと同時に、この場所を自分が作ったということがなんだか誇らしく感じられた。片付けを終えた後、リビングの椅子に座って空っぽになった店内を見回した。ずっと長く住んでいたはずの実家や一人暮らししていたマンションよりも、この家の空気が体に馴染んでいる感覚があった。机に突っ伏して、微かに残った紅茶の香りに耳を澄ませる。春の夕暮れの空気に段々とダージリンの香りが溶けていくのを感じながら窓の外に目をやると、友人たちがこちらに向かって歩いてくるのが目に入った。今日は皆、最後に誰かに会いに行ったり行きたいところに出かけたり好きに過ごしていたはずなのだが、どうやら同じタイミングで帰ってきたらしい。もしかしたら閉店時間が過ぎるまで待ってくれていたのかもしれない。そんなことを考えながら立ち上がる。玄関を開けて外に出ると、緩やかな坂道を登ってくる四人が見えた。手を振りながら段々と近づいてくる友人たちは、なんだか有名映画の冒頭に出てくる少年たちの様に見えた。実際にその映画を見たことはないのだけれど。話を聞くと、帰り道に偶然会ったので一緒に帰ってきたらしい。疲れたと呟きながら家に入っていくのを見ながら、表に出してあった看板を持ち上げた。イーゼル形の看板を畳んで、玄関の中に仕舞う。鉄製の看板はいつの間にか所々錆びていて、白く彫られた『喫茶 コット』の文字はほんの少しだけ剥げている。長くはないが決して短くもなかった時間がこれで本当に終わりなのだと、ようやく実感が込み上げてきた。
「お疲れ様」
 そっと看板を撫でると、ざらりとした表面が指に当たる。春の空気に当てられた看板はほんの少しだけ温かかった。最初はあんなにピカピカで冷たかった看板がこんな風になるまで続けることができたのが嬉しかった。終わりが来ることはわかっていた。わかった上でその選択をした結果がこれならば、嬉しくないはずがないのだ。こんなにもいろんな人に愛されて、何より最後まで続けることができたのだから。だから、この心の温もりの奥にある冬のような寒さには気づかないふりをした。
「何かあった?」
 声のする方を見ると、リビングから友人が顔を出してこちらを見ていた。
「何でもないよ、すぐ行く」
 立ち上がって玄関の鍵を閉める。玄関の電気を消してリビングの方へ向かえば、友人たちは夕食の準備に取り掛かっていた。そこにはもうカフェとしての面影は無く、家の空気が流れていた。騒々しく、しかし暖かい生活の雰囲気。ずっと昔からここで一緒に住んでいたかのような感覚は、いつの間にか肌に馴染んで感じることすらなくなっていた。当たり前の生活をいつもと同じように繰り返す。夕食を一緒に食べ、順番に風呂に入り、しばらくは居間でだらけて、眠たくなったら自室へ戻って寝る。何か特別なことが起こるわけでもなく、今日も一日が終わる。自分の部屋に上がる前に、リビングに掛けられたカレンダーにまた一つバツを書き込む。残った数字はあと一つになっていた。
  
 最後の日にどう過ごすかは、少し前から皆で話し合って決めていた。最後の日に何食べたい、くらいの軽い感覚ではあったがそれでも決めておいた方が揉め事にならなくて済む。皆の希望としては、最後の日くらいゆっくり自堕落に過ごしたいと言うのが満場一致の意見だった。二度寝をした後お昼前に起き上がると、既に起きていた二人がリビングにいた。昼食用においてあったあまりもののパンを、放送休止になったテレビを見ながらつまんでいたらしい。テレビの画面には『臨時のため休止しております』というテロップと共に綺麗な自然の風景が繰り返し流れていた。一緒になってパンをつまんでいると、気づかないうちに全部食べ切ってしまった。元々五人で食べるには少ない量だとは思っていたがこんなにすぐなくなるとは思っていなかった。残りの二人が昼食に食べるものがなくなってどうしようかと三人で焦っていたが、そんなことはつゆ知らず、二人は結局昼過ぎまで起きてこなかった。
 夕食は、近所の人に貰ったバーベキューセットを使って余り物パーティーをすることに決めていた。冷蔵庫や冷凍庫、床下倉庫に残っていた食材をかき集めて食べ尽くすのが目的だ。別に食べ尽くさなくても問題はないのだけれど、何となく全部綺麗に片付けたいと思ってしまう。バーベキューセットも物々交換で近所の人から貰ったものだったのだが、これまで出番がなかったのでせっかくだったら使おうと言うことで倉庫から引っ張り出してきた。炊飯器と鍋を総動員してあるだけのお米を炊いている間に、皆で残っている食料の確認をすることになった。
「野菜が少ないね」
「どうしても日持ちがしないものが多いからな~」
「最後くらい健康気にしなくてもいいんじゃない?」
「健康云々とは関係なしに野菜が食べたいの」
 家の中から残っている食料を出してみると、やはり偏りが目立つ。野菜は日持ちのする根菜類が多く、あまり使わなかった冷凍食品などの方が残っていたりする。魚は全くないし、肉もいつ冷凍したのかわからないものばかりだ。
「この冷凍肉って食べて大丈夫?」
「まぁ……冷凍してあるから大丈夫なのでは」
「飲食店経営者がそれでいいのか」
 そう言われても、今日が最後なのだから健康に被害があるかどうか考えなくても大丈夫だろう。腹を壊して困る明日の自分はいないのだから。
「まぁでも、これだけお肉があるのはパーティーっぽくていいね」
「好きなだけ焼いて食べてよ」
 そうこうしているうちに炊き上がったお米を茶碗によそう。バーベキューセットの方も友人の手によって無事点火し、夕空の下にオレンジ色の炎が揺れていた。残っていた肉を片端から焼いて、タレをつけてご飯と一緒にかきこめば、米の甘味とタレの辛味が口いっぱいに広がる。それぞれ食べたいものを焼いて、時には食材を取り合って。口いっぱいに白米をかきこんでいる時間はまさに至福の時間だった。あっという間に時間は過ぎ、遠慮の塊になった最後の肉を四人全員に押し付けられて渋々食べれば、全部の食料が綺麗さっぱり無くなった。のんびり食べているうちに、空はいつの間にか暗くなっていた。星ひとつ見えない空の下で炎を消すと、家の近く以外はほとんど何も見えないほどに暗い。だがこの時間でも吹く風が寒くないことが、季節が既に春に移っていることを表していた。柔らかな暖かさに身を包まれていると、満腹感も相まって眠気に襲われる。庭に広げたバーベキューの片付けを軽く済ませると、皆でリビングに戻る。今日は座敷で寝ると決めていたのでその準備をしなければならない。自分の布団を自室から持って降りてきて適当に並べれば、修学旅行の時のような寝室が出来上がった。
「衝突まであとどれくらい?」
「日付が変わる頃って言っていたから、あと二時間くらいかなぁ」
「じゃあ寝ていたらすぐだね」
「これで終わりか~」
 風呂にも入らずに布団に潜りこんで電気を消すと、いよいよ眠気の波が押し寄せてきた。暗い中でぼそぼそと聞こえる声が、段々と小さくなっていく。
「寝ている間に地球が終わるなんて、まだ実感ないね」
「実際終わってみないとねぇ」
「終わったらもう生きてもないから分かんないよ」
 中身のない話をぼんやりと続けながら、意識が沈んでいくのを感じる。示しあったわけでもないのに、誰も「おやすみ」とは言わなかった。誰かが既に寝たのか、それとも自分が先に寝てしまうのか。もしかしたらもう自分は寝ているのか。それすら分からないようなぼやけた意識が、段々と体から染み出して暖かな空気に溶けてほどけていった。
  
 暗闇の向こうで、チカチカと瞬く光を見た。霧が少しずつ晴れるようにぼんやりと意識が象られていく。気づけばうっすらと瞼が開いており、意識を落とした時と同じ見慣れた風景が目の前に広がっていた。ここが死後の世界だと思うにはあまりにも景色がそっくりそのまま過ぎる。もしかしたら隕石衝突前に目が覚めてしまったのだろうかと考えていると、ふと視界の端に光るものが見えた。それはダイニングの方に置いてあったテレビの画面の明かりだった。画面自体はここからは見えないが、おそらく誰かがつけっぱなしにしていたのだろう。それにしてもやけに光が点滅しているように感じる。寝る前には自然の映像が流れていたのであんなに激しい点滅は起こっていなかったはずだ。周りですやすやと寝息を立てている皆を起こさないようにそっと布団から抜け出す。裸足でフローリングに降り立ち、目をこすりながらテレビの方を見ると、そこにはどこかのお偉いさん方が記者会見をしている様子が映し出されていた。何かの録画だろうかと思ったが、よく見ると右上に大きく中継と書かれている。何が何だか分からないような、反面、頭の奥底では既に理解しているような不思議な感覚のまま恐る恐る壁掛け時計を見ると、時計の針は五時ちょうどを刺していた。テレビの中では、まるで一年前と同じように、しかしあの時とは真反対の表情の大人たちが、嬉しそうに何かを伝えようとしていた。その必死そうな表情を、どこか他人事のように、一人静かなリビングで眺めていた。
 しばらくテレビ中継を小さな音量で聞いていると大体の状況は掴むことができた。長年の研究の甲斐あって、地球に衝突する寸前に隕石を破壊することに成功したらしい。世界中の学者たちは何十年も前から隕石の衝突を予測していて、破壊実験も試みていたがこれまで成功には至らなかった。世間に与える影響を考え隕石の存在を公表していなかったが、肉眼で確認できるレベルにまで接近してしまったため、一年前、渋々情報公開したのだとか。結果的に破壊には成功したが、決してそれは隕石による全ての災害が無くなったわけではないらしい。破壊によって隕石は大量の破片となり、今も地球に降り注いでいるらしく。小さな破片は大気圏で燃え尽きるが、万が一大きい破片が落ちてきた場合は衝撃波の発生や火災の原因になるため注意してほしいとのことだった。同じように、以前の破壊実験の余波で出来た細かな隕石が落ちてきていたのが、隕石衝突ニュースの前後で起こっていた原因不明の火事の原因だったということも発表された。しばらく見たあと、同じ情報と喜びの声を繰り返すだけになったテレビを消して、ふぅと息をこぼした。
 なんだかまだ、夢の中にいるような心地だった。自分がまだ寝ぼけているだけなのではないかという気さえした。乾いた空気が喉に詰まる。何か飲もうと立ち上がり、ふらふらとした足取りでキッチンへと向かった。冷蔵庫を開けるが当たり前のようにそこには何も入っておらず、いつも以上に冷たい冷気が顔を掠めるだけだった。ため息をついてキッチンを見回すと、半分ほど入ったコーヒーサーバーが置いてあるのが目に入った。誰かがコーヒーを淹れ、そのまま残りを置いていたのだろうか。コップに入れ、ぬるくなったコーヒーを何度か口にする。強い酸味が喉を刺す度、不快感を飲み干していく度に、先ほどまでふわついていた意識が段々とはっきりとした輪郭を取り戻していく。苦味が腹の底に沈んでいくのを感じながら、空になったコップをシンクに置いた。
 まだ寝息を立てている友人たちを横目に見ながら、静かに玄関の鍵を開ける。なるべく音を立てないように外に出ると春風が頬を撫でた。空を仰ぐと、つい数時間前まではそこにあったはずの巨大な影はまるで最初から無かったかのようにすっかり姿を消していた。その代わりに、薄い光がじわりと混ざった紺色の空にはたくさんの光が走っていた。それはまさに、何かの写真で見た流星群のようだった。散り散りになった隕石のかけらたちは、燃えながら一つまた一つと空を駆けていく。
「きれい……」
 思わず口から溢れたのは心の底から漏れ出た言葉だった。あのかけらの中で燃え尽きなかったものが、どこかの誰かを不幸にしているかもしれない。大きな災害や事故を引き起こしているかもしれない。そう頭の中ではわかっていても、今はただこの景色を綺麗だという感情ばかりがとめどなく溢れてくる。それに少なくとも自分は、あの小さなかけら一つに救われたのだ。あれが無ければきっと職場が燃えることもなかった。そもそも隕石が地球に向かってこなければ、こんな生活をする決意すら抱かなかった。もちろん大変なことも嫌なこともあった。それでもこの一年の生活は自分にとって幸せなものだった。それも全部『終わり』があったからだった。終わりがあるから頑張れる。終わりがあるからどうだっていいと思える。「どうせ地球は滅ぶのだから」なんて言って、笑い飛ばすことができる。終わりが来ることを受け入れて、未練なんて何一つ残さないで、幸せな気持ちで最後を迎えた。そのはずだった。そうでなければ、いけないはずだったのに。
「なんなんだよ、もう……」
 小さく呟いて、頭を抱えてしゃがみ込む。ぼさぼさのままの頭を掻きむしりながら地面を見つめていると、どこからか猫の鳴き声がした。ちらりと顔を上げて声のした方を探すと、裏山の奥に白い影が見えた。それは裏山に住み着いているあの白い猫だった。冬に入ってから姿を見せなくなっていたが、どうやら無事に冬を越せていたらしい。声の数から見るに、他の猫たちも姿は見えないが生きているのだろう。小さく手を振ると、白猫は山の奥へと消えていった。
 猫が消えた先をしばらく眺めていると、不意に家の方からガタガタと物音がした。突然の音に驚き立ち上がり、家の方を見やる。段々と人の声が混じりながら大きくなるその音は、やがて玄関の扉を勢いよく開ける音で締めくくられた。家から飛び出してきたのは、起き抜けの四人の友人の姿だった。髪もぼさぼさで、服は寝間着のまま、まだ少し眠さを残した顔ではっきりとこちらを見ている。皆でしばらく顔を見合って、何か言いたそうに口を開いたり閉じたりしながら、ただ小さく笑い声を漏らしていた。
「おはよう」
 そう呟くと、ほんの少しだけ視界がぼやけた。霞んで見えにくくなっても、みんながどんな顔をしているかなんてわかりきっていた。自分がきっと同じ表情をしていることも。それでも、頬に伝う感覚は意地でも見て見ぬ振りをした。
  
 家に入ったら、まずはカレンダーに十五と書き足そう。そのあとは、豆を挽いてコーヒーを淹れ直そう。朝食にするものなんて残っていないし、空き腹に刺激物を入れるのはよくないかもしれないけれど。今日くらい好きに生きたっていいだろう。いや、今日くらいと言わず、明日もその先も自由に生きていい。本当はずっとそうだったのだ。そう考えると、頭の中にやりたいことが次々と浮かんできた。休職扱いのままにされているあの会社に退職届を叩きつけてやろう。これまでの事を労働基準法違反で訴えてやるのもいいかもしれない。不安定かもしれないけれど、この生活も続けられるだけ続けてみよう。もし嫌になったり別のことがしたくなったりしたら綺麗さっぱりやめたっていい。隕石など降らなくたって、どうせいつか終わりはやってくるのだから。
 だからもし、いつ来るかわからない終わりを迎える前に桜が咲いたなら。去年は見逃してしまった満開の桜の下で皆と一緒に花見がしたい。ずっと心の奥底に秘めていた願いを、閉めかけた扉の隙間から夜明けの空に打ち明けた。流星群は未だ止む事なく、明るくなった空を流れていた。
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