いまだこず

みどりん

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第1章

土居さん

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哀しい。涙が止まらない。
今までも将来は手探りであったはずなのに、
それはこれからも変わらないはずなのに、
あんな可能性があると考えると、生きる意味さえあるのかと。

思考が緩慢でまとまらない。
考えることが凄く億劫だ。

自分の心音が鬱陶しい。
心臓が大きくなって、それ以外の体のパーツなんかなくなってしまっている気がする。




「入院中の皆様、夕食の時間です。青色、黄色のの方は各自とりに来て下さい。赤色の方は職員が持っていきますので部屋でお待ち下さい。入院中の皆様ーー」

放送があり。夕食の時間であることがわかった。空腹ではない。動く気力はない。

布団に潜りながら、再度目を閉じた。



「高橋くん。高橋くん」
誰かが布団の上から体を揺すってくる。
男の声だ。

「ご飯食べてない?熱くない?」
布団から頭を出し、声の方へ顔を向ける。

20代後半でくらいか、短髪で少し色黒な男性がいた。
ユニフォームで看護師だとわかった。

“土居 誠”
性別:男性 Ω性
状態:➖ブルー➖

「大丈夫か。確か今日入院だったよな。なんかあったのか。」

声とともに涙が出てきそうな気がして、首を振る。

「そうか。」
そう言って土居は俺のベッドに座った。

「俺はΩって言われたときは、めっちゃ泣いたし、親に反抗とかもしたぞ。高橋くんは受け止めていてすごいなぁ。」

全然凄くない。受け止めきれず。ただ籠っていただけだ。そう言われる奴じゃない。

「いやーー」
声とともに涙がこぼれた。

「大きな事件もないし、高橋くんも死んでいない。Ω性になるって一大事だったのによく乗りきった。おつかれさん。
まー死なないって点だと、俺もなんだけどね。褒めてくれてもいいよ。」

優しい言葉だった。
今日は自分を否定しかなかったから。肯定されることで胸が暖かくなった。

「褒めるってどうすれば。」

「おっ褒めてくれるの。そうだなー。土居さん、今日は大変だったのに生きているなんて流石って言って。」

「土居さん、今日は大変だったのに生きているなんて流石です。」
言われた通りに褒めると、土居さんは笑顔でこっちを見てきた。

「素直かよ!言うこと聞いてくれるなら、これから夕飯運んでくるから食えるだけ食って、早寝しろ。
夜起きてしまったら、なんか適当に時間潰しに手伝ってやるよ。」

そう言って、ベッドから降り部屋を出て行った。

病院のご飯。何が出るんだろう。
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