ヘヴンリー・ヘル ~姦ノ島~

クロナミ

文字の大きさ
11 / 79
一日目

10

しおりを挟む
 三人が洋館に戻ると、玄関前の庭には大きな炭焼きのコンロと、人数分のイスとテーブルが並べられていて、いつでもバーベキューが始められるよう準備が整えられていた。

「おっ、どれどれぇ。買ってきたモノを見せてみなさい」

 まだビキニ姿のままのヒトミが近づいて来て、三人が持つビニール袋の中身を覗き込んだ。
 そして、

「えぇっ!? 肉これだけしか買ってこなかったの!? しかも牛じゃないし! あり得ないでしょっ! アンタたち、バーベキューやったこと無いの!?」

 と、予想どおりのリアクションをした。

「いや、店にこれだけしかなかったんだよ……」

 そう言って、ユウトが先ほどスーパーの店員から聞かされた話を伝えると、ヒトミは、アニメのキャラみたいな大袈裟なしかめ面をした。

「この島の住民が、突然、みーんなヴィーガンになったって? 年中獲れたての新鮮な魚ばっか食べてる人達だよ? そんなこと、あり得る?」
「あり得ない、と言いたいところだけど、あの店員が僕たちにウソをつく理由もないしさあ……」
「アタシが思うに、そのオバサンが生意気な都会の学生をちょっとからかってみた、ってだけじゃないの?」
「うーん、そういわれると……そうだった、のかも」

 ユウトが困り顔で頭をかいていると、ビキニの上にラッシュガードを羽織ったアキとキョウコがやってきて、ヒトミと同じようにビニール袋の中身を覗いた。

「まぁ、ここであれこれ言っても仕方ないよ。あるものだけで、なんとかしよう。うちは、そんなにお肉いらないし」

 アキが言うと、キョウコも袋から缶ビールを取り出して、ニヤリと笑った。

「わたしも、これがあれば十分♪」

 それから――、夕焼けの真赤な光の中で、やや貧しいバーベキューがはじまったが、ヒトミ以外の女性陣はみんな少食だったし、ユイが自宅のキッチンでパスタやチャーハンをつくって振る舞ってくれたので、あたりがすっかり暗くなる頃には全員が満腹になって、酒を片手にのんびりと満天の夜空を見上げていた。

「あー、サイコー。ここは地上の天国だね。もうずうっとここにいたい」

 ヒトミが、イスに半分寝そべるようなだらしない恰好で言うと、

「ほんとだね」

 ユウトも、眼鏡の奥の目をとろんとさせながら、ぼんやりうなずく。

「いいよ。いつまでもここにいて。わたしは大歓迎」

 ユイが微笑みながらいうと、ヒトミはチューハイの缶を振りながらケラケラ笑った。

「ほんとにぃ? じゃ、お言葉に甘えて、ほんとにここに住んじゃおっかなぁー」
「うん、そうして。みんなで、ここで一緒に暮らしましょうよ」

 そう力強く言うユイの声音に真剣なものを感じて、皆は思わず黙り込んだ。

「……まあ、そうしたいのは、やまやまだけどさ」ヒトミは、足元を見つめながら苦い口調で言った。「そうもいかないのが、人生じゃん? アタシらも、こんなド田舎で漁師か、そのヨメになるためにわざわざ大学いってるわけじゃないし――」

 そのひと言で、それまで和やかだった場の空気が一瞬で凍りついた。

 ヒトミには一切悪気はないと皆わかっていたが、いまの言葉は、この島で生きているユイにとっては、かなり酷だった。

「そう、だよね……。ごめんなさい。勝手なこと言って」

 ユイは、暗い声で言ってイスから立ち上がると、ひとりで洋館の中に戻っていった。

「ユイ……」

 キョウコが心配そうに呟いて、すぐにその後を追う。

「……」

 その場に残された者達は、なんとなく気まずい空気の中、だまって酒を飲み続けた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

意味が分かると怖い話(解説付き)

彦彦炎
ホラー
一見普通のよくある話ですが、矛盾に気づけばゾッとするはずです 読みながら話に潜む違和感を探してみてください 最後に解説も載せていますので、是非読んでみてください 実話も混ざっております

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話

桜井正宗
青春
 ――結婚しています!  それは二人だけの秘密。  高校二年の遙と遥は結婚した。  近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。  キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。  ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。 *結婚要素あり *ヤンデレ要素あり

彼の言いなりになってしまう私

守 秀斗
恋愛
マンションで同棲している山野井恭子(26才)と辻村弘(26才)。でも、最近、恭子は弘がやたら過激な行為をしてくると感じているのだが……。

処理中です...