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【第四章】 『北の魔王』ザラ
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それだけ言うと、アンドローズはふたたび魔王を睨んで剣を構えた。
「ふっ、まだ愉しめそうだな」
余裕たっぷりに言う魔王のもとへ、女騎士はたった一人で突っ込んでいく。
(魔王は、このわたしよりはるかに強い……。だが、敗北は許されない。わたしの剣に、この世界の命運がかかっているのだ。たとえ刺し違えてでも、こいつを、倒す――ッ!)
「はぁぁぁああっ!!!」
「正面から特攻してくるだけとは、芸が無い」
魔王が、まるで蝿を追い払うかのようにぞんざいに剣を振るうと、
「それは、どうかな?」
呟いたアンドローズは、それをおのれの剣、ではなく、左腕の籠手で受けた。
(っ!? 捨て身だとっ!)
魔王の剣はやすやすと騎士の鎧を引き裂き、刃が女の腕に深く食い込んだが、アンドローズは少しも怯まず、そのまま右手の剣を一閃させる。
「はぁっ!!!」
「ぐぅっ!」
魔王は慌てて上体を反らしたが、相手の一撃を完全にかわすことはできず、剣の切先が兜を掠めた。
その、瞬間――。
バリィィンッ! と甲高い音がして、魔王の兜が砕け散る。
「っ! おのれぇっ!」
一瞬、死の恐怖を感じさせられた魔王は、烈しい怒りにかられて女騎士の全身にふたたび強烈な衝撃波を見舞った。
「がはっ!」
決死の一撃も通じず、また後方に吹っ飛ばされたアンドローズは、旺介のそばに落下して、激痛に呻いた。
「ぐっ、うぅ……っ」
しかし、旺介は、倒れた彼女を気遣う素振りもなく、魔王を真直ぐに見つめたまま、驚愕の表情で固まっている。
「アン、あ、あれを見て……」
「……?」
言われて、女騎士も玉座のほうを振り返り、
「っ!?!?」衝撃に目を見開いた。
ふたりが驚いたのも、無理はない。
魔王の砕け散った兜の中から現れたのは、なんと――艶やかな黒髪を腰まで垂らした、愛らしい少女の顔だった。
「お、女だとっ!? 魔王ザラヴァンドールは、女だったのか……っ」
「そう、みたいだね……」
見た目の年齢は、旺介とほとんど変わらない。
金色のつぶらな瞳に烈しい怒りを燃やす少女は、病的なほど白い顔を醜く歪ませて、ふたりを睨む。
「おのれ……よくもっ! だが、ここで死ぬ貴様らに我の素顔を見られたとて、どうということはない……」
「いや、あるね」
自信に満ちた口調で言った旺介は、すでに満身創痍になっている女騎士を見つめて、目を細める。
「アン……」
「大丈夫だ、旺介……わかっている……」
気丈に笑ってみせた女騎士は、額に玉の汗を浮かべながら、のろのろと立ち上がった。
「お前を、絶対にあの女のもとへ連れていってやる……。そうすれば、わたしたちの勝ちだ……」
「その仕事は、あんたひとりじゃ荷が重いわね。アンドローズ」
ふいに声がして、ふたりが振り返ると、すでにボロボロの姿のイリアナが、ぜぇぜぇと荒い息を吐きながら立ち上がるところだった。
「そうです。おそらくチャンスは一度きり。わたしたち全員がおのれのすべてを出し切らねば、成功しません」
見れば、気を失っていたはずのウィレアまで立ち上がり、折れた左脚を引きずりながら、ふらふらと近づいてくる。
「旺介さま……もはや、この世界を救えるのは、あなたさまだけです。魔王を、その手で倒してください」
「そーね。今回だけはあんたに手柄をゆずってやるわ。あたしがばっちり援護してやるから、バシッと決めてきなさいっ!」
「ウィレア、イリアナ……」
「旺介……。どうやら、神がわれら三人に課した使命は、魔王を倒すことではなく、お前を今日この場所へ連れてくることであったようだ。お前が、お前こそが、最後の希望なんだ……。どうかこの世界を、皆の命を、救ってくれっ!」
「アン……」
旺介は、三人の英雄の顔を見回しながら、ゆっくりとうなずいた。
「まかせて。必ず、魔王を倒してみせる!」
「うんっ!」
女たちが少年に明るい笑みを返した、その時。
「別れの挨拶は済んだか? ではそろそろ……四人まとめて、死ねっ!」
魔王がその左手に瞬時に魔力を収束させると、それを暗黒の竜に似た雷撃に変えて、撃ち放った。
「させないっ!」
ほぼ同時、イリアナが仲間たちの前に踊り出て、
「滅神の大烈光剣!」
両手から先ほどよりさらに巨大な光柱を生み出し、敵の魔法を正面から迎え撃つ!
ヴィヴィヴィイヴィヴィヴィイヴィイィィィィィイイイイ!!!!
光と闇が正面からぶつかり合い、荒れ狂って、部屋の石壁がビリビリと音を立てて激しく振動しはじめる。
「やるなっ! だが!」
魔王がさらに魔力を高めると、
「ぐっ、くっそぉ……!」
徐々にではあるが、イリアナのほうが押されはじめる。
「イリアナ……ッ!」
「だいじょうぶっ……あたしに、まかせなって……」
防ぎ切れない敵の雷撃で全身を灼かれながら、魔女は背後を振り返り、旺介にウインクしてみせる。
「あたしは、大陸最強の魔導士……『ルーダミアの妖女』イリアナ・ガド・ゼファーランド……あんたがあたしを選んだのは間違いじゃなかったって……証明してあげるっ!!」
言って、ふたたび前を向いた魔女は、目と鼻から血を流しながら、不敵に笑う。
(つっても、このままじゃ、あたしの負け……。あたしがここで負けたら、四人仲良く死ぬだけね……。どっちみち死ぬなら、やってやろうじゃない……残りの体力すべてを魔力に変える、ってヤツ。あいつらだけでも助けられるなら、この命、気前よく捨ててやるわよっ!)
瞬間、魔女のボロボロの身体が眩い光に包まれる。
(オースケ……短い間だったけど、あんたと過ごした日々は、あたしの宝モンだよ。……じゃあねっ!)
「はぁぁぁぁぁあああああっっっ!!!!!!!」
真紅の髪を逆立てながらイリアナが叫ぶと、瞬時、彼女の両手から放出される魔力が膨れ上がり、魔王の魔法を圧倒した。
「なっ!? なんだとぉっ!」
「しっねぇええええっ!!!!」
ついに暗黒の竜を打ち砕いた巨大な烈光が、魔王を直撃する!
「ぐあぁあああぁあああっ!!!」
玉座を粉砕して後方の壁に叩きつけられた魔王は、その眼にはっきりと恐怖を浮かべながら、よろよろと立ち上がる。
「ば、ばかなっ……たかが人間ごときに、我の魔法が破られる、など……っ!」
すべての生命力を使い果たしたイリアナは、ふっと満足そうな笑みを浮かべると、そのまま目を閉じ、とさり、とその場に倒れ伏した。
「イリアナァッ!!」
慌ててそばに駆け寄ろうとする旺介を、ウィレアが素早く制する。
「旺介さま、いけませんっ! 彼女の死を無駄にするおつもりですかっ!!」
「っ!?」
「さあいってください! わたしが援護します!」
「くっ……わかった。いくよ、アン!」
「ああっ!」
「それで、いいのです……」
うなずいたウィレアは、弓にそっと一本の矢をつがえて、美しく微笑む。
(イリアナさん……お見事でした。あなたの覚悟、しかとこの目に焼きつけましたよ。このまま、あなたひとりを逝かせたりはしません。わたしも、いまこの瞬間に、おのれのすべてを捧げましょう……)
やがて、エルフの全身が淡く青い光に包まれたかと思うと、それがすべて彼女の手にある一本の矢へと収束していく。
(旺介さま、残念ですが、ここでお別れです……。どうか、このウィレアを、いつまでも忘れないでいてください)
大粒の涙をひとつ床に落とすと、それを合図にして、エルフの弓聖はおのれの全身全霊を懸けた最後の矢を放つ。
「くっ、そんなものぉっ!!」
迫り来る征矢を魔王が剣で叩き斬ろうとした、その瞬間――エルフの魔力を纏う矢が幾千の光線に分裂し、魔王の鎧に突き刺さった。
「っ!」
「絶壊!」
ウィレアが叫ぶと同時、無数の光線が一度に炸裂し、魔王の鎧が粉々に砕け散る!
「な、なんだとぉっ!?」
魔王は、薄い灰色の下着一枚となった自分の身体を見下ろし、呆然と立ち尽くす。
「おっぱいは、わたしの勝ちみたいですね……」
エルフの体に宿る聖なる力を使い果たしたウィレアは、魔王の薄い胸を見て笑いながら石化していき、まもなく、世にも美しい一体の石像となってしまった。
「ウィレア……」
振り返って悲しみに顔を歪める旺介をみて、アンドローズが怒鳴る。
「悲しむのは後にしろっ! お前にはやるべきことがあるだろうがっ!」
「わかってるよっ!」
ふたりはそのまま全力で部屋を駆け抜け、無防備な姿をさらしている魔王に躍りかかる。
「っ! 舐めるなっ、人間どもぉっ!!」
下着姿の魔王が、怒号を叫んで剣を構えた時――、アンドローズが旺介を庇うように素早く前に出た。
女騎士は、いまも大量の血を流し続ける左腕をみて、唇を噛む。
(血を失いすぎたな。それに、どのみちこの腕では、もうまともには戦えん。……だが、こんなわたしでも、まだ旺介のためにできることがあるっ!!)
「死ねぇっ!」
魔王が鋭く剣を突き出すと、アンドローズも同時に飛び出し――なんと、敵の刃をみずからの胸に深々と突き刺した。
「っ!?」
「ぐ、ふぅっ……いっ、いまだ、旺介っ!」
最後の力を振り絞り、驚愕する敵の手から剣を奪い取ると、アンドローズはその場にゆっくりと倒れ伏す。
「アンッ! ……くっそぉぉぉおおっ!!」
旺介は、涙を流しながら魔王に飛び掛かり、相手の身体をどん、と床に組み伏せる。
(みんなの想い、命を、絶対に無駄にはしないっ!!! オレのすべてを、この一瞬にぶつけてやるっ!)
「絶技――天神創造」
《神の性技》を発動すると、魔王の股に素早く手をやって下着をずらし、まだ濡れてもいない少女の蜜壷に、股間で怒張した肉棒を一気に、根元まで突き刺した!
「ふっ、まだ愉しめそうだな」
余裕たっぷりに言う魔王のもとへ、女騎士はたった一人で突っ込んでいく。
(魔王は、このわたしよりはるかに強い……。だが、敗北は許されない。わたしの剣に、この世界の命運がかかっているのだ。たとえ刺し違えてでも、こいつを、倒す――ッ!)
「はぁぁぁああっ!!!」
「正面から特攻してくるだけとは、芸が無い」
魔王が、まるで蝿を追い払うかのようにぞんざいに剣を振るうと、
「それは、どうかな?」
呟いたアンドローズは、それをおのれの剣、ではなく、左腕の籠手で受けた。
(っ!? 捨て身だとっ!)
魔王の剣はやすやすと騎士の鎧を引き裂き、刃が女の腕に深く食い込んだが、アンドローズは少しも怯まず、そのまま右手の剣を一閃させる。
「はぁっ!!!」
「ぐぅっ!」
魔王は慌てて上体を反らしたが、相手の一撃を完全にかわすことはできず、剣の切先が兜を掠めた。
その、瞬間――。
バリィィンッ! と甲高い音がして、魔王の兜が砕け散る。
「っ! おのれぇっ!」
一瞬、死の恐怖を感じさせられた魔王は、烈しい怒りにかられて女騎士の全身にふたたび強烈な衝撃波を見舞った。
「がはっ!」
決死の一撃も通じず、また後方に吹っ飛ばされたアンドローズは、旺介のそばに落下して、激痛に呻いた。
「ぐっ、うぅ……っ」
しかし、旺介は、倒れた彼女を気遣う素振りもなく、魔王を真直ぐに見つめたまま、驚愕の表情で固まっている。
「アン、あ、あれを見て……」
「……?」
言われて、女騎士も玉座のほうを振り返り、
「っ!?!?」衝撃に目を見開いた。
ふたりが驚いたのも、無理はない。
魔王の砕け散った兜の中から現れたのは、なんと――艶やかな黒髪を腰まで垂らした、愛らしい少女の顔だった。
「お、女だとっ!? 魔王ザラヴァンドールは、女だったのか……っ」
「そう、みたいだね……」
見た目の年齢は、旺介とほとんど変わらない。
金色のつぶらな瞳に烈しい怒りを燃やす少女は、病的なほど白い顔を醜く歪ませて、ふたりを睨む。
「おのれ……よくもっ! だが、ここで死ぬ貴様らに我の素顔を見られたとて、どうということはない……」
「いや、あるね」
自信に満ちた口調で言った旺介は、すでに満身創痍になっている女騎士を見つめて、目を細める。
「アン……」
「大丈夫だ、旺介……わかっている……」
気丈に笑ってみせた女騎士は、額に玉の汗を浮かべながら、のろのろと立ち上がった。
「お前を、絶対にあの女のもとへ連れていってやる……。そうすれば、わたしたちの勝ちだ……」
「その仕事は、あんたひとりじゃ荷が重いわね。アンドローズ」
ふいに声がして、ふたりが振り返ると、すでにボロボロの姿のイリアナが、ぜぇぜぇと荒い息を吐きながら立ち上がるところだった。
「そうです。おそらくチャンスは一度きり。わたしたち全員がおのれのすべてを出し切らねば、成功しません」
見れば、気を失っていたはずのウィレアまで立ち上がり、折れた左脚を引きずりながら、ふらふらと近づいてくる。
「旺介さま……もはや、この世界を救えるのは、あなたさまだけです。魔王を、その手で倒してください」
「そーね。今回だけはあんたに手柄をゆずってやるわ。あたしがばっちり援護してやるから、バシッと決めてきなさいっ!」
「ウィレア、イリアナ……」
「旺介……。どうやら、神がわれら三人に課した使命は、魔王を倒すことではなく、お前を今日この場所へ連れてくることであったようだ。お前が、お前こそが、最後の希望なんだ……。どうかこの世界を、皆の命を、救ってくれっ!」
「アン……」
旺介は、三人の英雄の顔を見回しながら、ゆっくりとうなずいた。
「まかせて。必ず、魔王を倒してみせる!」
「うんっ!」
女たちが少年に明るい笑みを返した、その時。
「別れの挨拶は済んだか? ではそろそろ……四人まとめて、死ねっ!」
魔王がその左手に瞬時に魔力を収束させると、それを暗黒の竜に似た雷撃に変えて、撃ち放った。
「させないっ!」
ほぼ同時、イリアナが仲間たちの前に踊り出て、
「滅神の大烈光剣!」
両手から先ほどよりさらに巨大な光柱を生み出し、敵の魔法を正面から迎え撃つ!
ヴィヴィヴィイヴィヴィヴィイヴィイィィィィィイイイイ!!!!
光と闇が正面からぶつかり合い、荒れ狂って、部屋の石壁がビリビリと音を立てて激しく振動しはじめる。
「やるなっ! だが!」
魔王がさらに魔力を高めると、
「ぐっ、くっそぉ……!」
徐々にではあるが、イリアナのほうが押されはじめる。
「イリアナ……ッ!」
「だいじょうぶっ……あたしに、まかせなって……」
防ぎ切れない敵の雷撃で全身を灼かれながら、魔女は背後を振り返り、旺介にウインクしてみせる。
「あたしは、大陸最強の魔導士……『ルーダミアの妖女』イリアナ・ガド・ゼファーランド……あんたがあたしを選んだのは間違いじゃなかったって……証明してあげるっ!!」
言って、ふたたび前を向いた魔女は、目と鼻から血を流しながら、不敵に笑う。
(つっても、このままじゃ、あたしの負け……。あたしがここで負けたら、四人仲良く死ぬだけね……。どっちみち死ぬなら、やってやろうじゃない……残りの体力すべてを魔力に変える、ってヤツ。あいつらだけでも助けられるなら、この命、気前よく捨ててやるわよっ!)
瞬間、魔女のボロボロの身体が眩い光に包まれる。
(オースケ……短い間だったけど、あんたと過ごした日々は、あたしの宝モンだよ。……じゃあねっ!)
「はぁぁぁぁぁあああああっっっ!!!!!!!」
真紅の髪を逆立てながらイリアナが叫ぶと、瞬時、彼女の両手から放出される魔力が膨れ上がり、魔王の魔法を圧倒した。
「なっ!? なんだとぉっ!」
「しっねぇええええっ!!!!」
ついに暗黒の竜を打ち砕いた巨大な烈光が、魔王を直撃する!
「ぐあぁあああぁあああっ!!!」
玉座を粉砕して後方の壁に叩きつけられた魔王は、その眼にはっきりと恐怖を浮かべながら、よろよろと立ち上がる。
「ば、ばかなっ……たかが人間ごときに、我の魔法が破られる、など……っ!」
すべての生命力を使い果たしたイリアナは、ふっと満足そうな笑みを浮かべると、そのまま目を閉じ、とさり、とその場に倒れ伏した。
「イリアナァッ!!」
慌ててそばに駆け寄ろうとする旺介を、ウィレアが素早く制する。
「旺介さま、いけませんっ! 彼女の死を無駄にするおつもりですかっ!!」
「っ!?」
「さあいってください! わたしが援護します!」
「くっ……わかった。いくよ、アン!」
「ああっ!」
「それで、いいのです……」
うなずいたウィレアは、弓にそっと一本の矢をつがえて、美しく微笑む。
(イリアナさん……お見事でした。あなたの覚悟、しかとこの目に焼きつけましたよ。このまま、あなたひとりを逝かせたりはしません。わたしも、いまこの瞬間に、おのれのすべてを捧げましょう……)
やがて、エルフの全身が淡く青い光に包まれたかと思うと、それがすべて彼女の手にある一本の矢へと収束していく。
(旺介さま、残念ですが、ここでお別れです……。どうか、このウィレアを、いつまでも忘れないでいてください)
大粒の涙をひとつ床に落とすと、それを合図にして、エルフの弓聖はおのれの全身全霊を懸けた最後の矢を放つ。
「くっ、そんなものぉっ!!」
迫り来る征矢を魔王が剣で叩き斬ろうとした、その瞬間――エルフの魔力を纏う矢が幾千の光線に分裂し、魔王の鎧に突き刺さった。
「っ!」
「絶壊!」
ウィレアが叫ぶと同時、無数の光線が一度に炸裂し、魔王の鎧が粉々に砕け散る!
「な、なんだとぉっ!?」
魔王は、薄い灰色の下着一枚となった自分の身体を見下ろし、呆然と立ち尽くす。
「おっぱいは、わたしの勝ちみたいですね……」
エルフの体に宿る聖なる力を使い果たしたウィレアは、魔王の薄い胸を見て笑いながら石化していき、まもなく、世にも美しい一体の石像となってしまった。
「ウィレア……」
振り返って悲しみに顔を歪める旺介をみて、アンドローズが怒鳴る。
「悲しむのは後にしろっ! お前にはやるべきことがあるだろうがっ!」
「わかってるよっ!」
ふたりはそのまま全力で部屋を駆け抜け、無防備な姿をさらしている魔王に躍りかかる。
「っ! 舐めるなっ、人間どもぉっ!!」
下着姿の魔王が、怒号を叫んで剣を構えた時――、アンドローズが旺介を庇うように素早く前に出た。
女騎士は、いまも大量の血を流し続ける左腕をみて、唇を噛む。
(血を失いすぎたな。それに、どのみちこの腕では、もうまともには戦えん。……だが、こんなわたしでも、まだ旺介のためにできることがあるっ!!)
「死ねぇっ!」
魔王が鋭く剣を突き出すと、アンドローズも同時に飛び出し――なんと、敵の刃をみずからの胸に深々と突き刺した。
「っ!?」
「ぐ、ふぅっ……いっ、いまだ、旺介っ!」
最後の力を振り絞り、驚愕する敵の手から剣を奪い取ると、アンドローズはその場にゆっくりと倒れ伏す。
「アンッ! ……くっそぉぉぉおおっ!!」
旺介は、涙を流しながら魔王に飛び掛かり、相手の身体をどん、と床に組み伏せる。
(みんなの想い、命を、絶対に無駄にはしないっ!!! オレのすべてを、この一瞬にぶつけてやるっ!)
「絶技――天神創造」
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