論理で恋を解く男が、星のように揺れる夜

月下花音

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第28話「救いの定義」

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 午前8時の相談所。

 透は、コーヒーを飲んでいた。

 苦いけど、温かい。

「救いは、何だろう」

 透は小さくつぶやく。

 ◆

 五路交差点発、哲学者のほろにがログ。第28話。

 昨夜、透は一人で相談所にいた。

 体調が優れなかった。

 でも、誰かの手紙を読むことで、救われた気がした。

 透は窓の外を見る。

 朝日が、交差点を照らしている。

「救いは、誰かがいること」

 透は小さくつぶやく。

 一人じゃないこと。

 それが、救いなのかもしれない。

 ◆

 午後3時の古本屋。

 透は、哲学書の棚を整理していた。

 キルケゴール、サルトル、カミュ。

 救いを探求した学者たちの言葉が、並んでいる。

「救いは、自己の中にある」

 透は小さくつぶやく。

 でも、今の透は違う答えを持っている。

「救いは、他者の中にある」

 美月がいるから、透は救われる。

 透は、一人で考える。

「救いは、何だ」

 透は小さくつぶやく。

 誰かを止めることが、救いなのか。

 それとも、誰かを支えることが、救いなのか。

 透は、分からない。

 ◆

 午後11時の相談所。

 透は机に向かい、新しい手紙を開いた。

 便箋には、丁寧な文字でこう書かれていた。

『好きな人が、危険なことをしようとしています。

 止めるべきでしょうか?

 それとも、支えるべきでしょうか?

 どちらが、救いですか?

 29歳・男性』

 透の手が、止まる。

 これは、透自身の問いだ。

 透はペンを取り、ノートに書き込む。

「止める効果をS、支える効果をE、本人の意志をWとする。

 だが、この式には本質が欠けている。

 救いは、本人が決める」

 透の手が、震える。

 そうだ。

 救いは、透が決めることじゃない。

 美月が決めることだ。

 透は便箋に、丁寧な文字で書き始めた。

『救いは、あなたが決めることではありません。

 相手が決めることです。

 止めることが救いだと、あなたは思うかもしれません。

 でも、相手は違うかもしれません。

 支えることが救いだと、あなたは思うかもしれません。

 でも、相手は違うかもしれません。

 大切なのは、相手の意志を尊重することです。

 相手が何を望んでいるか、聞いてください。

 そして、その選択を支えてください。

 止めることも、支えることも、愛です。

 でも、相手の意志を無視することは、愛ではありません。

 救いの定義は、人それぞれです。

 あなたの救いと、相手の救いは、違うかもしれません。

 でも、それでいいんです。

 相手の救いを、尊重してください。

 そして、その選択を、一緒に歩んでください。

 それが、本当の救いです。

 藤原透』

 透は手紙を封筒に入れ、棚に置く。

 透は、答えを見つけた。

 相手の選択を、尊重する。

 それが、透にできる救いだ。

 透は相談所を出て、交差点に立つ。

 五つの道。

 どれを選んでも、誰かに繋がる。

 風が、吹き抜ける。

 冷たい。

 でも、透は震えない。

 誰かがいるから。

「救いの定義」

 それは、相手の選択を尊重すること。

 そして、一緒に歩むこと。

(第28話完 次話へ続く)

 次回、透は「愛の確率」を計算する。
 そして、透の論理が——君の想像する「感情」が、融合し始める——。
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