論理で恋を解く男が、星のように揺れる夜

月下花音

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第29話「愛の確率」

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 午後2時の相談所。

 透は、ノートに数式を書いていた。

 愛を、確率で表せるか。

 透は、ずっと考えていた。

「愛は、計算できない」

 透は小さくつぶやく。

 でも、試してみたい。

 ◆

 五路交差点発、哲学者のほろにがログ。第29話。

 透は、ペンを走らせる。

「出会いの確率をM、好意の相互性をR、継続の可能性をCとする」

 数字が、ノートに並ぶ。

 でも、答えが出ない。

 愛は、数式に収まらない。

 透は、ノートを閉じる。

「愛は、確率じゃない」

 透は小さくつぶやく。

 愛は、選択だ。

 誰かを選ぶこと。

 それが、愛なのかもしれない。

 ◆

 午後11時の相談所。

 透は机に向かい、新しい手紙を開いた。

 便箋には、丸い文字でこう書かれていた。

『好きな人と、結ばれる確率はどのくらいですか?

 計算できますか?

 25歳・女性』

 透の手が、止まる。

 今日、美月に聞かれたことだ。

 透はペンを取り、ノートに書き込む。

「出会いの確率をM、好意の相互性をR、継続の可能性をCとする。

 だが、この式には本質が欠けている。

 愛は、確率じゃない」

 透の手が、震える。

 でも、今度は迷わない。

 透は便箋に、丁寧な文字で書き始めた。

『愛の確率は、計算できません。

 なぜなら、愛は確率ではないからです。

 愛は、選択です。

 あなたが、相手を選ぶ。

 相手が、あなたを選ぶ。

 それが、愛です。

 確率は、偶然です。

 でも、愛は、必然です。

 あなたが選んだから、愛が生まれます。

 相手が選んだから、愛が続きます。

 確率を計算する必要はありません。

 ただ、選んでください。

 相手を。

 そして、相手に選ばれてください。

 それが、愛の確率です。

 100%です。

 あなたが選べば。

 藤原透』

 透は手紙を封筒に入れ、棚に置く。

 透は、答えを見つけた。

 愛は、確率じゃない。

 選択だ。

 誰かを選ぶこと。

 それが、愛の確率。

 100%だ。

 透は相談所を出て、交差点に立つ。

 五つの道。

 どれを選んでも、誰かに繋がる。

 風が、吹き抜ける。

 冷たいけど、心地いい。

 透は小さく笑う。

「愛の確率」

 それは、100%だ。

 選べば。

 誰かを選ぶこと。

 それが、透の愛だ。

(第29話完 次話へ続く)

 次回、透は「運命は気まぐれじゃない」ことを知る。
 そして、透の未来が——君の想像する「道」が、開かれ始める——。
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