論理で恋を解く男が、星のように揺れる夜

月下花音

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第41話 「嘘つきになるとき」

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 午前6時の相談所。

 透は一晩中眠れず、窓の外を見ていた。

 朝日が昇り始める。

 新しい一日。

 でも透の心は、まだ暗い。

 ◆

 五路交差点発、哲学者のほろにがログ。第41話。

 透は雪のメッセージを何度も読み返す。

「透お兄ちゃんと美月ちゃん、ありがとう。もう許してあげてね。星は落ちないよ」

 雪の字。

 優しい言葉。

 でも透の心は、まだ痛む。

「許す……」

 透は小さくつぶやく。

 自分を許すことが、こんなに難しいとは思わなかった。

 透は立ち上がり、棚の前に立つ。

 何百通もの手紙。

 すべてに、誰かの悩みが詰まっている。

 透は一通を取り出す。

 でも開けない。

「美月さん……」

 透は小さくつぶやく。

 美月はもう来ない。

「これで終わり」と言った。

 透は、それを受け入れなければならない。

 でも、受け入れられない。

 透は自分に嘘をつき始める。

「美月さんはもういない」

「俺は一人だ」

「これでいいんだ」

 嘘だ。

 全部、嘘だ。

 でも、嘘をつかないと、前に進めない。

 ◆

 午後11時の相談所。

 透は机に向かい、新しい手紙を開いた。

 便箋には、丸い文字でこう書かれていた。

『好きな人に、嘘をついてしまいました。

 本当は会いたいのに、「もう会わない」と言いました。

 本当は好きなのに、「もう好きじゃない」と言いました。

 嘘をついた自分が、許せません。

 でも、もう戻れません。

 30歳・女性』

 透の手が止まる。

 これは、美月さんのことだ。

 いや、違う。

 これは、俺のことだ。

 透はペンを取り、ノートに書き込む。

「嘘の重さをL、本音の痛みをT、後悔の深さをRとする。

 だが、この式には本質が欠けている。

 嘘は、優しさの形だ」

 透の手が震える。

 でも、今度は迷わない。

 透は便箋に、丁寧な文字で書き始めた。

『好きな人に、嘘をついてしまいました。

 その痛みは、分かります。

 本当は会いたいのに、「もう会わない」と言いました。

 本当は好きなのに、「もう好きじゃない」と言いました。

 それは、嘘です。

 でも、嘘は、時に優しさの形です。

 相手を傷つけないための、嘘。

 相手を守るための、嘘。

 でも、本当の優しさは、真実です。

 嘘をついた自分を、許してください。

 あなたは、相手を守ろうとしただけです。

 でも、もう嘘をつかないでください。

 本音を、言ってください。

「会いたい」と。

「好きだ」と。

 それが、本当の優しさです。

 私も、嘘をついています。

「美月さんはもういない」と。

「俺は一人だ」と。

 でも、本当は違います。

 美月さんに、会いたいです。

 美月さんが、好きです。

 もう、嘘をつきません。

 藤原透』

 透は手紙を封筒に入れ、棚に置く。

 透は、決意した。

 美月に、会う。

 もう、嘘をつかない。

 本音を、言う。

 透は相談所を出て、交差点に立つ。

 五つの道。

 どれも、美月に繋がっている気がする。

 風が吹き抜ける。

 冷たいけど、心地いい。

 星空が、静かに輝いている。

 透は小さくつぶやく。

「嘘つきになるとき」

 それは、本音が痛すぎるとき。

 でも、もう嘘をつかない。

 美月に、会いに行く。

 本音を、言いに行く。

 透は前を向く。

 一歩、また一歩。

 前に。

 美月へ。

(第41話完 次話へ続く)

 次回、透は「戻れない恋」を知る。
 そして、透の決意が——君の想像する「覚悟」が、試され始める——。
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