論理で恋を解く男が、星のように揺れる夜

月下花音

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第54話 「君の影を追いかけて」

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 午前8時の病室。

 透は目を覚ました。

 窓の外が明るい。

 新しい朝だ。

 ◆

 五路交差点発、哲学者のほろにがログ。第54話。

 透はベッドから起き上がる。

 体はまだ重い。

 でも、動ける。

 透は病室を出る。

 看護師が驚く。

「藤原さん! どこに行くんですか!」

 透は振り返る。

「美月さんを探しに」

 看護師は首を振る。

「ダメです! まだ安静が必要です!」

 透は首を振る。

「安静にしていられない」

「美月さんを、探さなきゃ」

 透は走り出す。

 看護師が追いかける。

「藤原さん!」

 でも透はとまらない。

 病院を出る。

 外の空気が冷たい。

 でも透の心は熱い。

 美月を探す。

 どこにいるかわからない。

 でも、探す。

 透は交差点に向かう。

 五つの道。

 どこかに美月がいる。

 透は一つ目の道を走る。

 息が切れる。

 心臓が痛む。

 でも止まらない。

 美月の影を探す。

 でも、いない。

 透は二つ目の道を走る。

 汗が流れる。

 視界が歪む。

 でも止まらない。

 美月の影を探す。

 でも、いない。

 透は三つ目の道を走る。

 膝が震える。

 体が限界だ。

 でも止まらない。

 美月の影を探す。

 でも、いない。

 透は四つ目の道を走る。

 心臓が激しく痛む。

 息ができない。

 でも止まらない。

 美月の影を探す。

 でも、いない。

 透は五つ目の道を走る。

 もう限界だ。

 体が動かない。

 でも、走る。

 美月の影を探す。

 そして、見つけた。

 遠くに、美月の後ろ姿。

 透は叫ぶ。

「美月さん!」

 美月が振り返る。

 透を見る。

 そして、走り出す。

 逃げる。

 透は追いかける。

「待ってくれ!」

 透は叫ぶ。

 でも美月は止まらない。

 透は必死に走る。

 心臓が悲鳴を上げる。

 でも止まらない。

「美月さん!」

 透は叫び続ける。

 美月が角を曲がる。

 透も曲がる。

 でも、美月はいない。

 消えた。

 透はその場に立ち尽くす。

「また……消えた……」

 透は膝をつく。

 涙が溢れる。

「美月さん……」

 透は小さく呟く。

「俺は……君の影を追いかけてる……」

「でも、追いつけない……」

 透は地面に手をつく。

 心臓が痛む。

 息が苦しい。

「美月さん……待ってくれ……」

 透は涙を流す。

「俺は……まだ諦めない……」

 ◆

 午後3時の病室。

 透は看護師に連れ戻されていた。

 医師が怒っている。

「無茶をしないでください!」

「あなたの体は、まだ回復していません!」

 透はうなずく。

 でも、心は別のことを考えている。

 美月のこと。

 美月の後ろ姿。

 美月が逃げる姿。

「先生……俺は、なんで追いかけられないんでしょうか……」

 透は小さく呟く。

 医師は首を傾げる。

「何をですか?」

 透は涙を流す。

「大切な人を……」

 医師は透の肩に手を置く。

「藤原さん、焦らないでください」

「時間が必要です」

 透は首を振る。

「時間がない……」

「美月さんは、どんどん遠くに行ってしまう……」

 医師は何も言わない。

 ただ、透を見ている。

 透は窓の外を見る。

 空が青い。

 雲が流れる。

 でも透の心は暗い。

「美月さん……」

 透は小さく呟く。

「君の影を追いかけて……」

「でも、追いつけない……」

「俺は……どうすればいい……」

 ◆

 午後11時の病室。

 透は眠れずにいた。

 美月の後ろ姿が浮かぶ。

 逃げる姿が浮かぶ。

 透は小さく呟く。

「美月さん……なんで逃げるんだ……」

 その時、雪が現れる。

「お兄ちゃん」

 透は雪を見る。

「雪……」

 雪はベッドの横に座る。

「美月ちゃん、怖いんだよ」

 透は首を傾げる。

「怖い……?」

 雪はうなずく。

「お兄ちゃんを傷つけるのが、怖いんだよ」

「私のせいで、お兄ちゃんが苦しむのが、怖いんだよ」

 透は涙を流す。

「美月さんは……俺を守ろうとしてるのか……」

 雪は頷く。

「そうだよ」

「だから、逃げるんだよ」

 透は頭を抱える。

「でも……それは違う……」

「美月さんがいないと、俺はもっと苦しい……」

 雪は小さく笑う。

「それを、美月ちゃんに伝えなきゃ」

 透は雪を見る。

「どうやって……」

 雪は消える。

 透は一人残される。

「伝える……」

 透は小さく呟く。

「どうやって……」

 透は目を閉じる。

 でも、眠れない。

 美月の影が、頭から離れない。

(第54話完 次話へ続く)

 次回、透は「言葉にならない想い」を抱える。
 そして、透の心が——君の想像する「限界」を、超える——。
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