神様の失敗作ガチャを引かされた俺(元SE)、ハズレ女神たちと寂れた異世界を「再創生(リ・ジェネシス)」する

月下花音

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第14話:防衛戦:デバッグモード

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 戦況は苛烈を極めた。
 勇者の剣技は凄まじく、こちらの防衛ライン(茨の壁)を容易く切り裂いてくる。
 魔法使いたちの広範囲爆撃が、大地を抉る。

「くっ……強い!」
 ヘスティアが吹き飛ばされる。
 フィリアの魔力も枯渇寸前だ。

「ハハハ! 観念しろ魔王!」
 勇者が俺に肉薄する。
 聖剣が光を放つ。
 あの一撃を受ければ、俺のデータごと消滅するだろう。

 俺は冷静に彼を見据えていた。
 恐怖で動けないのではない。
 タイミングを計っているのだ。

 俺の管理者権限は、直接的な攻撃力はない。
 できるのは「環境設定の変更」と「オブジェクトの操作」のみ。
 だが、それで十分だ。

「……今だ」
 勇者が剣を振り下ろした瞬間。

「対象オブジェクトID:聖剣エクスカリバー……『耐久度』をゼロに変更!」

 パリンッ!
 硬質な音が響いた。
 勇者の持つ伝説の聖剣が、まるでガラス細工のように粉々に砕け散った。

「な……!?」
 勇者が目を見開く。
「馬鹿な!? 聖剣が折れるだと!?」

「整備不良(メンテナンス不足)ですね」
 俺は冷たく言い放つ。
「次は鎧だ。『重量』を100倍に変更!」

 ズシンッ!
 勇者がその場にひれ伏した。
 自身の鎧の重さに耐えきれず、地面にめり込む。

「ぐあああっ! 動け……ない!?」

「貴様らの装備は立派だが、データ構造が単純すぎる。……ハックし放題だ」
 俺は倒れた勇者の頭を踏みつけた。
 悪役ムーブ? 知ったことか。

「総員、反撃開始!」
 
 形勢逆転。
 武器と防具を無力化された騎士団は、ただの案山子だ。
 フィリアのツルが彼らを拘束し、ヘスティアのハンマーが(峰打ちで)宙を舞わせる。
 ソフィアの魔法(記憶消去)が、彼らの戦意を削ぐ。

「ひいぃっ! 化け物だ!」
「退却! 退却ーーっ!」

 侵略者たちは、這う這うの体で元の世界へと逃げ帰っていった。
 空間の亀裂が閉じる。
 赤い空が、元の灰色に戻っていく。

「……勝った……?」
 フィリアがへたり込む。
「勝った……勝ったわよ!」
 ヘスティアがハンマーを投げて叫ぶ。

 勝利の歓声。
 俺はそれを聞きながら、ゆっくりと膝をついた。
 視界が明滅する。
 鼻からツーっと血が垂れた。
 権限の使いすぎだ。脳が焼き切れそうだ。

「創さん!」
 女神たちが駆け寄ってくる。
「創さん、しっかりしてください!」
「血が……! 誰か回復魔法を!」

 俺は薄れゆく意識の中で、彼女たちの顔を見た。
 泣いている。
 また泣かせちまったな。
 でも、怪我はないようだ。良かった。

「……俺は大丈夫だ。……ちょっと、休憩(スリープ)するだけ……」
 
 俺は地面に倒れ込んだ。
 冷たい土の感触。
 その感触が、なぜかとても心地よかった。
 ここは俺たちの土地だ。
 俺たちが汗を流して守り抜いた、俺たちの家だ。

 (お疲れ様です、天野さん……)

 誰かの声が聞こえた気がして、俺は深い闇へと沈んでいった。

(つづく)
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