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第4話 128回目の投稿
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投稿ボタンを押す前に、妹にDM。
「読め。エロ追求した。でも、これエロなのか分からん。もしかしたら、ただの日常かもしれん。いや、日常にもなってないかもしれん。とにかく読め」。
三分後。妹の返事:『……お兄、これ、ヤバい』
ヤバい? 悪い意味で?
『いや、いい意味で。澪の「雨、嫌い」のシーン、なんか……胸がざわついた。これ、エロじゃないけど、エロスだよ。投稿しろ。今すぐ』
本当か? 妹が褒めた。128回目にして、初めて。
投稿。午前三時十五分。アップロード完了。
◆
深夜三時半。投稿を終えた俺は、ふと机の隅に置いてあった古いノートを手に取った。
妹が昔、俺の初稿に批評を書き込んでいたノートだ。ページをめくると、懐かしい文字が並ぶ。当時は赤ペンで、今はDMで。媒体は変わっても、妹の辛辣さは変わらない。
そして最後のページ。
そこには、俺の筆跡でこう書かれていた。
「最高とは、孤独の果てに訪れる幻だ。届かないまま、永遠に落ち続ける瞬間──だが、その墜落こそが創作の本質なのかもしれない」
いつ書いたんだっけ、これ? 覚えがない。
そして、その下。妹の筆跡で、青ペンでこう書き加えられていた。
「お兄、ようやく気づいたね。エロスは、落ちることだよ。クックック」
待て。このノート、妹から返ってきていなかったはず。大学に持って行ったんじゃ……?
いや、それより。この青ペンの文字、今日書かれたみたいに新しい。インクが、まだ乾いてない気がする。
DMのベルが鳴る。妹から。
『お兄、今夜は良い夢見れそう? ようやく投稿おめでと♡。新しいヒロイン、とっても気に入ったよ。名前可愛いね。クックック』
背筋が、凍る。
そして、いつ俺の部屋に入ってノートに書き込んだんだ? 青ペンのインクは、まだ乾いてない。今日、書かれたばかりだ。でも、妹は遠くの大学にいるはずだ。
もう一度、ノートを開く。青ペンの文字を見つめる。
「エロスは、落ちることだよ。クックック」
この筆跡、確かに妹のものだ。でも、どうやって?
疑問が渦巻く。でも、答えは出ない。
画面を見つめたまま、俺は深夜の闇に沈んでいく。
(続く)
「読め。エロ追求した。でも、これエロなのか分からん。もしかしたら、ただの日常かもしれん。いや、日常にもなってないかもしれん。とにかく読め」。
三分後。妹の返事:『……お兄、これ、ヤバい』
ヤバい? 悪い意味で?
『いや、いい意味で。澪の「雨、嫌い」のシーン、なんか……胸がざわついた。これ、エロじゃないけど、エロスだよ。投稿しろ。今すぐ』
本当か? 妹が褒めた。128回目にして、初めて。
投稿。午前三時十五分。アップロード完了。
◆
深夜三時半。投稿を終えた俺は、ふと机の隅に置いてあった古いノートを手に取った。
妹が昔、俺の初稿に批評を書き込んでいたノートだ。ページをめくると、懐かしい文字が並ぶ。当時は赤ペンで、今はDMで。媒体は変わっても、妹の辛辣さは変わらない。
そして最後のページ。
そこには、俺の筆跡でこう書かれていた。
「最高とは、孤独の果てに訪れる幻だ。届かないまま、永遠に落ち続ける瞬間──だが、その墜落こそが創作の本質なのかもしれない」
いつ書いたんだっけ、これ? 覚えがない。
そして、その下。妹の筆跡で、青ペンでこう書き加えられていた。
「お兄、ようやく気づいたね。エロスは、落ちることだよ。クックック」
待て。このノート、妹から返ってきていなかったはず。大学に持って行ったんじゃ……?
いや、それより。この青ペンの文字、今日書かれたみたいに新しい。インクが、まだ乾いてない気がする。
DMのベルが鳴る。妹から。
『お兄、今夜は良い夢見れそう? ようやく投稿おめでと♡。新しいヒロイン、とっても気に入ったよ。名前可愛いね。クックック』
背筋が、凍る。
そして、いつ俺の部屋に入ってノートに書き込んだんだ? 青ペンのインクは、まだ乾いてない。今日、書かれたばかりだ。でも、妹は遠くの大学にいるはずだ。
もう一度、ノートを開く。青ペンの文字を見つめる。
「エロスは、落ちることだよ。クックック」
この筆跡、確かに妹のものだ。でも、どうやって?
疑問が渦巻く。でも、答えは出ない。
画面を見つめたまま、俺は深夜の闇に沈んでいく。
(続く)
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