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最終章:愛の残骸
#15:10年前のチョコレシピ Ep.05
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翌日。
私は古いノートをゴミ箱に捨てた……のは忍びないので、箱の奥深くに封印した。
もう開くことはないだろう。
あの情熱は、博物館に飾っておくべきものだ。
日常に持ち込むと、今の幸せが霞んでしまうから。
スーパーに行く。
マサキが「昨日のチョコもうないの?」と言うからだ。
「また作ってよ」と言われたら、作るしかない。
ただし、今度はレシピを変える。
岩塩とペッパーは減らす。
代わりに、ミルクを多めにして、マイルドにする。
刺激はいらない。
仕事で疲れた彼が、テレビを見ながら無心でパクつけるような、優しい味にする。
それが「今の私」のレシピだ。
キッチンに立つ。
BGMは失恋ソングじゃなく、テレビのニュース番組の音。
ときめきはない。
でも、穏やかな満足感がある。
「はい、新作」
出来上がったマイルドチョコを出す。
マサキが食べる。
「お、こっちの方がうまいかも。落ち着くわ」
「でしょ? 介護食みたいに優しい味にしたから」
「誰がジジイだよ」
笑い合う。
ドラマチックな展開も、涙も、心拍数の上昇もないバレンタイン。
でも、このぬるま湯の中で、私たちは死ぬまでダラダラと生きていくのだろう。
かつての私が夢見た「運命の恋」とは違うけれど。
これはこれで、悪くない結末だ。
私は自分の分のチョコを口に放り込む。
甘い。
ただただ甘くて、溶けていく。
「あー、太るなこれ」
呟きながら、私はマサキの隣に座った。
かつてのヒロインは引退して、今はエキストラのおばさん役が板についてきた。
それが大人になるということなら、受け入れるしかない。
(おわり)
私は古いノートをゴミ箱に捨てた……のは忍びないので、箱の奥深くに封印した。
もう開くことはないだろう。
あの情熱は、博物館に飾っておくべきものだ。
日常に持ち込むと、今の幸せが霞んでしまうから。
スーパーに行く。
マサキが「昨日のチョコもうないの?」と言うからだ。
「また作ってよ」と言われたら、作るしかない。
ただし、今度はレシピを変える。
岩塩とペッパーは減らす。
代わりに、ミルクを多めにして、マイルドにする。
刺激はいらない。
仕事で疲れた彼が、テレビを見ながら無心でパクつけるような、優しい味にする。
それが「今の私」のレシピだ。
キッチンに立つ。
BGMは失恋ソングじゃなく、テレビのニュース番組の音。
ときめきはない。
でも、穏やかな満足感がある。
「はい、新作」
出来上がったマイルドチョコを出す。
マサキが食べる。
「お、こっちの方がうまいかも。落ち着くわ」
「でしょ? 介護食みたいに優しい味にしたから」
「誰がジジイだよ」
笑い合う。
ドラマチックな展開も、涙も、心拍数の上昇もないバレンタイン。
でも、このぬるま湯の中で、私たちは死ぬまでダラダラと生きていくのだろう。
かつての私が夢見た「運命の恋」とは違うけれど。
これはこれで、悪くない結末だ。
私は自分の分のチョコを口に放り込む。
甘い。
ただただ甘くて、溶けていく。
「あー、太るなこれ」
呟きながら、私はマサキの隣に座った。
かつてのヒロインは引退して、今はエキストラのおばさん役が板についてきた。
それが大人になるということなら、受け入れるしかない。
(おわり)
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