【完結】迷惑だけど、離れたくない。~傲慢なエゴイストはグイグイくる君に焦がれる~

たるとタタン

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最終話 人生の設計図

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陽は引っ越しを取りやめ、再び玲の隣で暮らし始めた。

だが、以前のような一方的な関係ではなかった。
 
今度は、玲の方が陽を手放さないために必死だった。

「今日も弁当を作ったのか?」

「ええ。玲さんがちゃんと食べてくれそうにないから」

「毎日ありがとうな。面倒じゃないか?」
 
「好きでやってるので問題ないですよ」

「そうか。あまり無理はするなよ」

そう言いながらも玲の口元はほんのりと緩んでいて、陽の頭上にキスを落とした。

仕事も少しずつ軌道を取り戻した。

陽の存在が、彼の発想力や集中力を不思議なほど高めていた。

以前はノイズだと思っていたその声や笑いが、今ではリズムのように心地よく響く。

だが、すべてが順調というわけではなかった。

玲には、まだ誰かに依存していることへの嫌悪は残っていた。

ある夜、締め切り間近の仕事で、玲が遅くまで図面を描いていると、ふわりと背中に温もりがかけられた。

「もう休みましょう。限界超えてますよ」

優しい声。 

振り返らずとも、陽だと分かる。

その温かさに安堵する自分に気づき、玲は自嘲するように呟いた。 

「……俺は、お前がいないと駄目な人間になったのかもしれない」

絞り出すような声には、自分自身への失望が滲んでいた。しかし、陽は即座にそれを否定する

「そんなわけないじゃないですか。駄目なわけないです!」

玲の肩にそっと手を置き、その瞳を真っ直に見つめて言った。

「玲さんは、ちゃんと自分で立ってる。ただ、その傍に俺がいるだけです。……支え合えばいいじゃないですか」

その真っ直ぐな言葉に、玲は何も言えなくなる。

すると陽は、さらに言葉を続けた。

玲はしばらく黙った後、ようやく笑った。

「お前は、ずるいな。そう言われると、どんな正論も霞む。俺のほうが年上なのに……」

「それに、俺も玲さんに依存してるんですよ」

「何?どうゆうことだ?」

「玲さんが作る世界が好きなんです。玲さんが描く建物も、言葉も、生き方も。見てるだけで、俺の中が満たされる。……だから、俺も同じです。あなたいなくちゃ、息ができない」   

玲は息を呑んだ。
依存。それは、自分が最も恐れていた言葉のはずだった。

だが、陽の口から紡がれると、まるで甘美な告白のように胸に響く。

玲は目を細め、微笑んだ。

「……なら、もういい。依存でも、愛でも。お前といられるなら、何でも構わない」

掠れた声で呟き、玲は勢いよく立ち上がると、戸惑う陽の腕を引いた。

ぐらりと傾いだ体を強く抱きしめる。

シャツ越しに伝わる陽の体温と、シャンプーの柔らかな香りが、強張っていた玲の心をゆっくりと溶かしていく

二人の間に漂う沈黙は、かつてのような冷たいものではなかった。

それは、穏やかで、透明で、互いを包む「静けさ」だった。 

陽の耳元で囁くと、腕の中の体が小さく震えた。陽は小さく頷き、おずおずと玲の背中に腕を回す。玲はその髪に顔を埋め、深く息を吸い込んだ。

もう、二人の間に冷たい沈黙はなかった。

部屋に響くのは、穏やかな二人の呼吸と、壁の時計が静かに時を刻む音だけ。それは、互いの存在を確かめ合うような、満ち足りた静寂だった。

玲はゆっくりと陽の背を撫で、その温もりを確かめるように、もう一度強く抱きしめた。
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