食育される受付坊ちゃん

夏瀬カグラ

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2章 受付坊ちゃん、お仕事開始!

03 楽しいランチはハンバーガー

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 疲れを感じながら戻った冒険者ギルドで、リベールさんが待ち伏せしていた。

「チカ! どこへ行ってたんだ、お昼の時間がなくなるぞ」
「……もう帰ってきてたんですね、リベールさん」
「そりゃ、簡単な依頼だったからな。それよりも、1日3食、しっかり食べるぞ!」

 ほらほら! と、手を引っ張られて近くの休憩スペースへ。
 手際よく紙袋から取り出してきたのは……

「っ! ハンバーガー!?」
「へー、キミの世界ではそういう名前なんだな、この料理」

 うわー、まさかここでハンバーガーを食べることができるとは!
 バンズといい、挟まっているジューシーそうなパティといい、まさにそれ!
 くぅぅ、ここにフライドポテトとコーラが欲しい。

「って、はっ!? いや、落ち着け僕。まだ慌てちゃだめだ、大事なのは味、味なんだ」

 ジューシーかつ、ボリューミーな見た目に反して無味。
 これこそ、ガッカリの極み。
 ラーメン屋でいろいろマシマシを頼んだら、カレーが出るぐらいのガッカリ感。

「安心しろ。今日のは自信作だから」

 笑顔で、トン、と自分の胸を軽く叩くリベールさん。

「そ、そこまで言うなら、食べる」
「おう。しっかり食べてくれ」

 意を決して、ひと口。
 もぐもぐ、と咀嚼をすると……

「~~~っ!? 味が、する!」

 元の世界と比べたら、そりゃ薄味だけどね。
 もっとソースは濃くして欲しいし、パティにも塩コショウをもう一声! ではある。
 ベーコンかチーズも追加してくれると、個人的にはグッドかもしれない。
 そんなわけで、もう1歩とは思うけど、今までと比較したら、すごく美味しい!

「うわぁ、こっちで美味しいハンバーガーを食べられるなんて……めっちゃ感激」
「ははっ、喜んでがっついてくれるだけで、オレもにやけるな」

 あ、本当だ。
 リベールさんの顔、めっちゃニコニコだ。
 ……というか。

「あの、できれば凝視しないでほしい、です」

 冷静に考えて、僕が食べている姿をずーっと見られているわけで。
 改めて考えると、恥ずかしさで火を噴きそう。
 すると彼は、一瞬、きょとんとしてから

「えー? 料理人としては、食べてくれる人が喜ぶ光景は最高のご褒美なのに?」

 立ち上がり、僕の目の前までくる。
 ゆっくりと顔を近づけてきて

「むしろ、じっくりと眺めたいんだが」
「近い、近い、近い、近い! ちょっと離れてくださいリベールさん!」

 顔面偏差値の高いイケメンが顔を近づけてくる。
 これの破壊力を、僕は初めて理解した。
 心臓に悪い。
 同じ男としてうらやましいと同時に、その凄さを実体験するとは……!

「慌てるチカも可愛いな。恰好が恰好なだけに、余計」
「……あー、そいや僕、女装中だったね」

 お昼休みで人気がないギルド内だからこそ、できる話題である。

「外に出たら、女性と間違われるだろ」
「うん。さっきも男装している女、って誤解を受けてきたところ」
「……なにがどうなって、そうなった?」
「んー、最初は僕を男だと思ってたけど、今の恰好でガチの女性と勘違いした、というか」

 アフェクさんのことを思い出しつつ、説明をする。
 うん、これなら彼が口止めした範囲には入らないはず。
 別に破ってもいい気もするけど、盗賊相手だからね。
 触らぬ神に祟りなし、ならぬトラブルの元に関わらずだ。

「なぁ、チカ。それを言ってきたの、誰だ? キミが男だと知っているのはごく一部だ」
「アフェクって冒険者。リベールさんが戻ってくる前に、ちょっとね」

 僕から名前を聞くと、彼はピクリと眉を跳ね上げた。
 この反応、知り合いかな?
 同じAランクで冒険者なんだから、交流なり、噂は聞いているかも。

「あいつ、なにやってんだか……」

 溜息と共に、リベールさんは肩を落とす。
 口ぶりから察するに、やっぱり面識ありそうだな。

「……ん? ちょっと待てよ? チカが男だと思ったってことは。まさか先日の盗賊か?」

 あっ……
 思わず手にあるハンバーガーを落としそうになる。

「えええっと、いや、どうやら働く前の僕をどこかで見かけたっぽいよ! うん!」

 そうだった、そうだよ!
 僕が気づいたパターンで、リベールさんだって気づく可能性あるじゃないか!
 まずい、気づかれると後で僕がまずい。
 アフェクさん、本気でなにかやってくるかもしれないんだし!

「そうなのか?」
「そうそう! あ、そうだリベールさん、ついでだからフライドポテトも食べたい!」
「今日はダメ。また今度、作ってやるから」

 よし、料理の話で話題をそらせた。
 これならバレていないだろう。
 危機は回避された! よし!



 ……と、思うだろう?

「おい、新人受付嬢。よくもチクったな」

 翌日の業務終了後のこと。
 アフェクさんが突撃して、そういわれた瞬間、僕は天を仰いだ。

「今日の晩御飯は、回避かも……」
「おい、現実逃避と独り言はやめろ」
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