食育される受付坊ちゃん

夏瀬カグラ

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2章 受付坊ちゃん、お仕事開始!

04 連れていかれた先は

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 というか、よくリベールさんと、ギルマスさんの目を盗めたよな。
 そう思っていないと、正直やっていられない。

 何が起こっているかって?

 妙に小奇麗なワンピースを着させられ、さらに大きいリボンで装飾されております。

「……なんですかこれ」
「イメージは、そのあたりの令嬢」
「いや、そうではなく」

 仕事終わりと同時に、アフェクさんに連れ拐かされたわけだけど……

「なんで、僕自身が、オークションの品になっているんですか!?」
「しゃーねーだろ。本来なら、もっと前からこうする予定だったのに」
「だからって、どうして僕で再トライするんですか―――!」

 人間オークション会場にいます。
 奴隷市場と何が違うのかって?
 そりゃもちろん、来る層がさらにヤバい人たちです。

 一言でいうなら、王族クラスがいる。

 一般的な貴族が行くのが奴隷市場なわけだけど、王族は来ない。
 なぜなら、ここが王族も参加する場だからだ。
 ……奴隷市場が、この場を隠すための存在って方に驚くよ。

「で、盗賊さん。僕を売って何をするんですか」
「あー、その件だがな……えーっと、名前」
「今更!? チカですよ」
「チカな。俺様は知っての通り、アフェクだ」

 彼は僕に近づき、耳に手を持ってゆく。
 いつの間にか手にあったイヤリングを、ゆっくりとつけてくれた。

「俺様の仕事は、この人間オークションをぶち壊すことだ」
「え?」
「種類がいろいろあるが、今回はここだ。で、この手の場は、侵入するのが面倒でな。手っ取り早いのは出品側だったんだ」

 王族も参加する人間オークションは、当然ながら審査が厳しい。
 なにせ、国を治める王族が、という大前提がある。
 こんなこと、一般市民にバレたら大変なことになるわけで……

「そのために、わざわざ『そういう』盗賊たちに潜り込んだんだ」
「で、先日のアレってことですね。あれ? じゃあ逃げたのはやっぱりギルマスさんのせいか」
「……いや、ギルマスさんはむしろラッキー。逃げたのはアイツ、リベールの野郎だ」

 え? まさかのリベールさん?
 しかも、ギルマスさんにバレる分には良い……あっ!

「あー、ギルマスさんならこの件で協力して貰えるかもだから?」
「まぁな。その交渉も兼ねたかったのに、ここ数日、ずっと冒険者ギルドにリベールの野郎が張り付いてやがる!」

 やっとちょっとクエストに出るようになった!
 と、憤慨するアフェクさん。
 えーっと、それって。

「ごめんなさい。たぶん、100%それ僕のせい」
「は? お前の?」
「今、リベールさんに1日3食、食育されているんです、僕」
「…………」

 うっそだろ、と言わんばかりの顔を向けないで。
 気持ちはわからなくないけど。

「あのお人好し、今度は何やってるんだ」
「僕が無味な食事で餓死するって嘆いたら、なんか、こうなって」
「……む、み?」

 あ、やっぱりこの世界の味基準は、あの店で食べたレベルなのかも。
 うーん、相当な薄味世界だよな、ここ。
 本当にあと一声、もう一振り、でもっと美味しくなるのに。

「わかった。終わったら俺様が高級レストランでおごってやる」
「え!?」
「こう見えて、味にはうるさいんだ、俺様も」

 な、なんか急に食事で釣ろうとしてくるんですけど。
 高級レストランって、もっと無味じゃないかなぁ。
 ほら、僕らの世界でも、そういう場所って素材の味が重視というかさ。
 高くていい素材を使った、超シンプルな感じといいますか。

 つまりなにかというと、高級の無味料理が待ち受けるってわけで。

「いや、僕はできれば高級じゃなくて、もっとこう、普通な……!」
「よしっ、うまい具合に売られてくれ。大丈夫、あとで俺様が助けてやる」
「はっ!? そうだ、作戦! ごはんの件より作戦!」
「お前は可愛く座って、微笑んでいりゃいいんだ。貴族に競り落とされんなよ」

 無茶苦茶な!?
 僕じゃ、王族と貴族の判断もつかないんですけど!

「おい、そろそろ時間だ。こいつを持ってっていいか?」
「よろしく。いい結果を期待してるぜチカ。うまくいったらご褒美にキスしてやる」
「食事よりいらねぇぇ……!」
「口が悪いと、かわいい顔も台無しだぜ」

 バラしたい。
 僕が男だと、心の底からバラしたい。
 アフェクさんは絶対、女だと思っているから余計に……!

「とっとと来い!」
「うわわっ!」

 よくわからない黒服に引っ張られ、鳥かごみたいなものに入れられる。
 そのまま、ガラガラとステージ袖へ運搬された。
 うわぁ、めっちゃライトがまぶしい。
 これじゃあ会場に誰がいるのかさっぱりなんだけど。

『それでは、商品10番。珍しい漆黒の乙女です!』

 戻ったら、アフェクさんを殴るか。
 紹介された単語に、思わず頬が引きつった。
 なんだよ、その中二病感は―――!

 心の中で涙を流しながら、僕は、ステージにたたき出される。

 おぉ……と、観客席から感嘆の声が漏れ出す。
 うわぁ、ここは変態の巣窟だよ、絶対。

『では、今からオークションを開始します!』
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