食育される受付坊ちゃん

夏瀬カグラ

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2章 受付坊ちゃん、お仕事開始!

06 リベールの正体

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「今回落札した逸材は、兵器への転用に有用と思われます」

 男はリベールさんに対して、膝をついて頭を下げる。

「その子がか?」
「はい。モンスターとの融合により、より強い兵器と生まれ変わるはずです」
「説明を続けろ。今まで、素材はここで入手したのか?」
「その通りです」

 僕が知る彼と同一人物には見えない。
 冷徹に、声を低くしながら、男へ報告を促す姿なんて。

「恐れながら王子。我が国は、他国からの侵略で長年苦しんでおります」
「それは知っている」
「少しでも対抗するには、より強く、他が持たぬ技術が必要です」

 ダメだ、話がどんどん大きくなっている。
 リベールさんが王子とか、何の冗談だよ。
 自国でいろいろやってるべきだし、冒険者とか意味が分からない。

(アフェクが、リベールさんを警戒したのも、そういうことか)

 いや、それよりも。

「リベールさん……」
「貴様、口を慎め。気安く名を呼んでよい方ではないのだぞ」

 チラリと、リベールさんの視線が僕に向く。
 だが、すぐに視線を逸らされた。

(なんで、目を逸らすんだよ……ッ!)

 見捨てられたような感覚になり、絶望感が全身を襲う。

「国王陛下は、なかなか許可されず、我々は困っております」
「……」
「あなた様ならば、国を守るために必要だと理解できるはず」
「……たしかに、他国の件は最重要課題ではある」
「では、この者を使って、その優位性をお見せいたしましょう」

 男の視線が、僕の方に向く。

「ちょうど、魔法陣での解析も……おおおぉ! 王子、最高の時にいらっしゃいました!」

 そういえば、触られる前に何か使われてたんだった。
 どこに魔法陣があるのか、と探ると……げっ、胸元とか最悪。

「虹色……?」

 見ると、カラフルに光っているし。
 なんなんだこれ。

「この者は、神だろうと、悪魔だろうと融合が可能な逸材! あぁ、素晴らしい」

 マッドサイエンティストが、ギラギラとした目で僕を見てくる。
 あぁだめだ。
 いろいろと情報が増えすぎて、僕の方が混乱してきた。

(考えが、まとまらない……もう、どうすれば……!)

 異世界だし、食事はマズイのしかないし、果てにはこんな状況だし。
 なにより……僕は、ショックだったんだ。
 この世界で、きっと、もっとも信頼していた、リベールさんの反応に。

「もう、嫌だ……」

 出来ることは、何もない。
 このまま、あの男がいう融合というのをされるしかないんだろう。
 そう、悲観した時だった。

「……思ったよりも、口を滑らせないものだな、やはり」
「へ?」

 ドッ、と鈍い音がした。
 直後、僕の頬に生暖かい何かが降り注ぐ。
 それは、真っ赤な液体。

「な、あ……かはっ!? 王子、なぜ……!」
「今すぐにこの研究の首謀者を白状すれば、命だけは助かると思うぞ」
「……くそっ、やはり愚鈍な国王の息子か! 近い将来、滅びを迎えるぞ!?」

 見ると、マッドサイエンティストの胸から、剣が突き出ている。
 それをやったのは、リベールさんで……

「そもそも、オレらは、この件を承認していない」
「はっ! しかし、歴代で最も仲の悪いと定評のある……あなた様の兄弟らは、どう……」

 一瞬のうちに、剣が引き抜かれる。
 そのまま、男はバタリと地面に倒れて動かなくなった。

「チカ! 大丈夫か!?」

 剣の血を振り払い、リベールさんが僕に近づいてくる。

「ケガは? アフェクのやつが、ここに連れてきたと聞いた時は……」
「……わから、ない」
「チカ?」
「わからない! もう、何が何だか、僕にはわからない!」

 ダメだ、もう、頭が追い付かない。
 グラリと視界が揺れ、暗転する。

「チカ!」
「……ここにいた!? って、リベール、てめえ!」

 リベールさんの悲鳴のような、僕を呼ぶ声。
 それに続くように、アフェクの声を聞きながら、意識が途切れた。

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 目が覚めたら、見覚えのある天井だった。
 異世界に来てから、僕が寝泊まりしている冒険者ギルドの寄宿舎。

「おっ、目覚めたかい、チカくん」
「ギルマス、さん」
「事情は聞いた。大変だったみたいじゃな」

 そっか、僕、戻ってきていたんだ。
 ギルマスさんの顔を見て、少しだけホッとする。
 直後、部屋のドアが乱暴に開き、

「あー! チカちゃん起きたっぽーい」
「……大丈夫?」
「トラブルおつおつ。今日の仕事は、あたしらに任せなさいん」

 かしまし3姉妹が慌ただしく声をかけ、そのまま去っていった。
 部屋の時計を見ると、もうすぐギルドが開く時間だ。
 うわ、忙しいのにわざわざ……感謝の言葉を言いそびれちゃったし。

「さて、ワシも行かねば。今日はゆっくり休みなさい。いろいろと状況を整理しないといけないだろうし」
「はい。ありがとうございます、ギルマスさん」

 全員を見送り、僕はベッドに倒れこむ。

「……これから、どうしよう」
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