食育される受付坊ちゃん

夏瀬カグラ

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6章 不吉な気配

01 初任給の使い道

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「緊張感が、抜ける。リベールもそう思わない?」
「気持ちはわかる」

 あれから1週間が経過した。
 してしまった。

「まさかの動きなし。普通あるよね、普通」

 僕らはさ、結構、真面目に警戒していたんだよ?
 だけど、それをあざ笑うかのように何もなし。

 おかげで、僕はリベールのご飯を堪能する普通の日々を送っていた。

「今日に至っては、初めてのお給料日だしっ!」
「頑張ったなチカ」
「まだ1カ月も働いてないのに払ってくれるギルマスさんに感謝だよー!」

 実質、3週間でお給料とか。
 神かな!?

「初のお給料、どうしよっかな……定番に沿うのもありかな」
「チカの故郷では、使い道に定番があるのか?」
「両親と外食かな。今まで育ててくれてありがとう、って」

「……その内容だと、この世界じゃ実行不可じゃないか?」
「あ、本当だ」

 自分で言っててアレだが、確かにそうじゃん。
 つか、仮に元の世界にいたとしても、奢りたくない。

「あとはー……自分が欲しかったものを奮発して買う、とか」

 この世界で、特別欲しいものか。
 それって……

「ダメだ。元の世界に帰るためのアイテムぐらいしか思いつかない」
「本末転倒。いや、正しい使い方だけど夢はないな」
「リベールは? 何に使った?」
「オレ? 冒険者として稼いだ分ってことなら……」

 うーん、と両腕を組んで、リベールは考え込む。
 しばらく沈黙したのち……

「ネックレス、かな」
「意外。王族ならいろんなアクセサリーはもらいたい放題なのに」

 代々引き継いだ物とかさ。
 貢物とか、親愛の証とかで、腐るほど持っているだろうに。
 それでもネックレスを購入とか、ちょっと意外。

 すると、リベールは右手を軽く振って

「違う違う。オレの分じゃない」
「そうなの? ってことは、プレゼント? 誰に?」

 気になる。
 リベールがわざわざ初のお給料で、ネックレスを買ってプレゼントした相手。
 そもそも王族のお給料とは? というのは、いったん横に置いておく。

(もしかして、好きな人にプレゼントしたとか? リベールならありえそう)

 納得すると同時に、心に引っかかり。
 ……ほんと、ここ最近なんで変な感覚になることが多いのだろう。

(これじゃあまるで、僕がリベールに対してショック? がっかり? しているような)

 ないないない。
 それはない。

(あれだな。一番身近で仲のいい友達に、彼女が実はいた時の疎外感的なあれ!)

 うんうん、と一人で納得していると。

「……あー、うん。彼女じゃないというか」
「ん? あっ、また声に出てた!?」

 うわー!? 変な言葉を口走ってたよね、僕!
 はずかしい。
 ちょっと今すぐ、外へ出てランニングしてきたい気分なんですけど。

「ネックレスの送り相手は、目の前にいるんだけど」
「……………え?」

 追撃のように紡がれた言葉に、僕は硬直する。
 目の前。
 リベールの目の前って……

 えーと、ここは僕が生活している寄宿舎の部屋である。

 現在は朝食の時間。
 リベールが用意してくれた、目玉焼き、コンソメスープ、果物、パンという洋食セット。
 実に美味しかった。手作りジャムがまたいい味で……じゃない!

「え、え、えっと、僕がつけている、これ……の、こと?」
「そうだ。……そこまで驚かなくてもいいだろ」
「いや、驚くというか。そ、そっか……リベールが初めてもらったお給料がこれ」

 首元にあるネックレスの先にある宝石を指先で撫でながら、僕はついつい微笑んでしまう。

「えへへ、なんだろう。すっごく嬉しいな」
「なら、良かった」

 他にもたくさんの使い道があったはず。
 なのに、わざわざ僕のためにネックレスを用意してくれたんだし。

「というか、他に使い道あったでしょ」
「それは否定しない。ただ、この使い方は以前から決めていたんだ」

 決めていた?
 僕みたいな異世界の人を助けることが出来たら、ってことかな。
 そうなると、これを貰ったのは偶然ではあるけど

(まぁいいか。嬉しいって気持ちは嘘偽りないわけだし)

 あっ! そうだ!
 それなら、僕の給料の使い道はコレにしよう。

「決めた! リベール、今日の夕飯は僕がデザートを購入してくる!」
「ど、どうしたんだ、急に」
「給料の使い道が決まったってこと」

 お仕事を終えたら、この前行った店に買いに行こう。
 何を買おうかな。
 甘さ控えめというか、素材の味を生かした甘味だから……

(アフェクあたりに聞けば、何が好きかわかるか)

 よし、僕の給料はリベールにデザートをごちそうするに決定!
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