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6章 不吉な気配
04 交渉
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「……ここ、は?」
意識が戻ると、そこは見知った公園じゃなかった。
以前、アフェクと一緒に潜入したオークション会場とも雰囲気が違う。
……むしろ
「豪華すぎる……?」
異様にきらびやかな部屋だった。
例えるなら、王族とか上流階級の人たちが住む場所の一室のような。
そこに備え付けられている、質の良いベッドに僕は寝かされていた。
「とりあえず、ここがどこだか……え?」
動こうとした瞬間、ジャラリ、と鉄のような音がした。
視線をそちらに向けると両足首が鎖で繋がれている。
……これって、完全に捕まっているってことじゃん。
「油断した……思えば、人気が少ない公園に行くのが間違いだったんだ」
原因は十中八九、クッキーだな。
というか、僕が食べてちょうどいい味だった時点で、本来疑問を持つべきだった。
(この世界の食事は、どれもクソマズ……じゃなくて、薄味も薄味だったのに……!)
というか、ラテジアさんがなんで?
高ランク冒険者が、わざわざこんなことをする理由はないはず。
(ギルドを介さない依頼を受けた? それとも、別の……)
犯人は、タイミング的にエスピオン王弟陛下。
いや、僕が知らない他の王族たちの可能性もあるか。
こんなことなら、もうちょっとリベールたちから聞いておけばよかった!
今となっては時既に遅しだけどさ。
警戒するチャンスは増えていたわけで……
「とにかく、逃げないとダメだよな」
足首にある鎖に手を伸ばすけど、
―――バチッ!
「っっ! なんだ今の静電気みたいなの」
右手を軽く振りながら、どうしたものかと考えていた時だった。
ガチャリ、とドアが開く音がした。
「あ、目覚めたんですね。すいません、手荒な真似をしました」
そこに聞き覚えのある声がした。
慌てて顔をあげると、そこにいたのはラテジアさん。
とはいえ、ここで彼が現れるのはある程度予想が出来ている。
問題は……
「いきなりなんだよ。僕、こんなことされる覚えがないんですけど」
ここだ。
今は女装状態でもない。
狙われている、受付嬢のチカではなかったはずだ。
そりゃ名前は特に変えてなかったけど、同一視される謂われはない。
(こっちは、ギルドかしまし3姉妹直伝の完璧女装だったのに!)
少なくとも、ギルドに来ている常連冒険者をはじめ、バレちゃいないんだ。
実績があることを看破されるわけが……
「いいえ。あなたは我らと同胞。同じ異世界から来た者ですし」
「は!?」
「バレないと思っていたんですね」
クスクスとおかしげに笑うラテジアさん。
「わかりやすかったですよ。魔法陣の止め方なんて、特に」
バレているなこれ。
受付嬢=僕だって。
「それに、モンスターと融合した影響でしょうか。魔力の波長を読めるようになりまして」
「受付嬢と僕が同じ、だと?」
「はい。確信を持っているので、話をはぐらかそうとしても無駄です」
その方向でバレるのは、予想外だよ。
なるほど、女装姿じゃないのにバレたのは、これが原因か。
「チカさん。交渉しましょう」
「……なんですか」
「まもなく、ボクらは元の世界へ帰ることができます。それにはあなたが必要です」
「それは、この前から聞いてる。だけど、なんで僕が必要なわけ」
一番わからないよな、この点が。
リベールたちと話していても、まったく理由が見えなかった。
「そもそも、今やろうとしてることって、キミらを送り届けることじゃなくて……」
「再び異世界から、ボクらのような生贄を呼び出すこと。ですよね?」
「わかっているなら、なぜ」
「どちらもやるんですよ。だから、ボクらは帰ることができる」
どっちも?
どういうことだ、それ……
「その際に、人間に戻って帰るためにも、あなたが必要なんですよ、チカさん」
「ここまでの流れから、さっぱり想像できないんだけど」
「おや、この異世界に呼ばれた時点で、何かしら『役割』があるのは当然でしょう」
誰かが、何かのために、僕を異世界から転移させた。
ってのは分かるけど、召喚された先は緑ゆたかな草花が生い茂り、人の行き来があると分かる土の道。
しかも、ナビゲーターがいないどころか、アフェクの率いる盗賊に囲まれたわけで。
「その役割を果たしてくれれば、あなたも元の世界へ帰ることができます」
「……元の世界に?」
「帰りたくないんですか? 故郷へ」
なるほど。
帰りたいという気持ちに訴えかけるってわけか。
だけどな。
「僕は、怪しい作戦に手を貸してまで帰りたくはない」
正直にいって、こいつは僕の質問に何も答えちゃいない。
なぜ、僕が必要なのか。
なぜ、今いる兵器化したものを手放してまで、新しい人間を呼び込むのか。
そのあたりをハッキリ言わない以上、そもそも僕は首を縦に振る気は一切ない。
(なによりも、僕はリベールの努力と苦労を、無に帰させたくはない)
短い間でも、リベールたちがこの件でどれだけ心を痛めているかは知っている。
(少しでも、彼の力になりたい。心労を、1つでも取り除きたいんだ)
そうなれば、僕の回答は1つだけ。
「協力はしない。絶対に」
「……そうですか。残念です」
ラテジアさんの右手に、杖が現れる。
同時に、彼の姿がゆっくりと変わってゆく。
背中から生えてきたのは、白い翼。
服装も変化が起き、魔導師風から……まるで天使のような格好へ。
「協力を得られれば、少なくとも苦しまなかったものを」
意識が戻ると、そこは見知った公園じゃなかった。
以前、アフェクと一緒に潜入したオークション会場とも雰囲気が違う。
……むしろ
「豪華すぎる……?」
異様にきらびやかな部屋だった。
例えるなら、王族とか上流階級の人たちが住む場所の一室のような。
そこに備え付けられている、質の良いベッドに僕は寝かされていた。
「とりあえず、ここがどこだか……え?」
動こうとした瞬間、ジャラリ、と鉄のような音がした。
視線をそちらに向けると両足首が鎖で繋がれている。
……これって、完全に捕まっているってことじゃん。
「油断した……思えば、人気が少ない公園に行くのが間違いだったんだ」
原因は十中八九、クッキーだな。
というか、僕が食べてちょうどいい味だった時点で、本来疑問を持つべきだった。
(この世界の食事は、どれもクソマズ……じゃなくて、薄味も薄味だったのに……!)
というか、ラテジアさんがなんで?
高ランク冒険者が、わざわざこんなことをする理由はないはず。
(ギルドを介さない依頼を受けた? それとも、別の……)
犯人は、タイミング的にエスピオン王弟陛下。
いや、僕が知らない他の王族たちの可能性もあるか。
こんなことなら、もうちょっとリベールたちから聞いておけばよかった!
今となっては時既に遅しだけどさ。
警戒するチャンスは増えていたわけで……
「とにかく、逃げないとダメだよな」
足首にある鎖に手を伸ばすけど、
―――バチッ!
「っっ! なんだ今の静電気みたいなの」
右手を軽く振りながら、どうしたものかと考えていた時だった。
ガチャリ、とドアが開く音がした。
「あ、目覚めたんですね。すいません、手荒な真似をしました」
そこに聞き覚えのある声がした。
慌てて顔をあげると、そこにいたのはラテジアさん。
とはいえ、ここで彼が現れるのはある程度予想が出来ている。
問題は……
「いきなりなんだよ。僕、こんなことされる覚えがないんですけど」
ここだ。
今は女装状態でもない。
狙われている、受付嬢のチカではなかったはずだ。
そりゃ名前は特に変えてなかったけど、同一視される謂われはない。
(こっちは、ギルドかしまし3姉妹直伝の完璧女装だったのに!)
少なくとも、ギルドに来ている常連冒険者をはじめ、バレちゃいないんだ。
実績があることを看破されるわけが……
「いいえ。あなたは我らと同胞。同じ異世界から来た者ですし」
「は!?」
「バレないと思っていたんですね」
クスクスとおかしげに笑うラテジアさん。
「わかりやすかったですよ。魔法陣の止め方なんて、特に」
バレているなこれ。
受付嬢=僕だって。
「それに、モンスターと融合した影響でしょうか。魔力の波長を読めるようになりまして」
「受付嬢と僕が同じ、だと?」
「はい。確信を持っているので、話をはぐらかそうとしても無駄です」
その方向でバレるのは、予想外だよ。
なるほど、女装姿じゃないのにバレたのは、これが原因か。
「チカさん。交渉しましょう」
「……なんですか」
「まもなく、ボクらは元の世界へ帰ることができます。それにはあなたが必要です」
「それは、この前から聞いてる。だけど、なんで僕が必要なわけ」
一番わからないよな、この点が。
リベールたちと話していても、まったく理由が見えなかった。
「そもそも、今やろうとしてることって、キミらを送り届けることじゃなくて……」
「再び異世界から、ボクらのような生贄を呼び出すこと。ですよね?」
「わかっているなら、なぜ」
「どちらもやるんですよ。だから、ボクらは帰ることができる」
どっちも?
どういうことだ、それ……
「その際に、人間に戻って帰るためにも、あなたが必要なんですよ、チカさん」
「ここまでの流れから、さっぱり想像できないんだけど」
「おや、この異世界に呼ばれた時点で、何かしら『役割』があるのは当然でしょう」
誰かが、何かのために、僕を異世界から転移させた。
ってのは分かるけど、召喚された先は緑ゆたかな草花が生い茂り、人の行き来があると分かる土の道。
しかも、ナビゲーターがいないどころか、アフェクの率いる盗賊に囲まれたわけで。
「その役割を果たしてくれれば、あなたも元の世界へ帰ることができます」
「……元の世界に?」
「帰りたくないんですか? 故郷へ」
なるほど。
帰りたいという気持ちに訴えかけるってわけか。
だけどな。
「僕は、怪しい作戦に手を貸してまで帰りたくはない」
正直にいって、こいつは僕の質問に何も答えちゃいない。
なぜ、僕が必要なのか。
なぜ、今いる兵器化したものを手放してまで、新しい人間を呼び込むのか。
そのあたりをハッキリ言わない以上、そもそも僕は首を縦に振る気は一切ない。
(なによりも、僕はリベールの努力と苦労を、無に帰させたくはない)
短い間でも、リベールたちがこの件でどれだけ心を痛めているかは知っている。
(少しでも、彼の力になりたい。心労を、1つでも取り除きたいんだ)
そうなれば、僕の回答は1つだけ。
「協力はしない。絶対に」
「……そうですか。残念です」
ラテジアさんの右手に、杖が現れる。
同時に、彼の姿がゆっくりと変わってゆく。
背中から生えてきたのは、白い翼。
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「協力を得られれば、少なくとも苦しまなかったものを」
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