食育される受付坊ちゃん

夏瀬カグラ

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6章 不吉な気配

05 ペンダントの知らせ(※リベール視点)

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「お疲れ様です、ギルマスさん」
「あぁ、リベールもお疲れ様」

 城を出たリベールたちは、足早に寄宿舎への道を歩いていた。
 時刻はまもなく、太陽が落ちる頃。

「……ちょっと防音を張りますね」
「わかった」

 リベールは軽く魔力を操り、周囲に風の魔術で結界を張った。

「どう思いますか。今回の大規模異世界召喚について」
「前回とは大きく異なるのは、事実じゃろうな。ヤツの状態を見るに」

 先ほどまで、2人がいた場所は場内にある治療室。
 そう、ディルが『捕まえて治療中』と言っていた人物の元だった。

「ワシがあそこを潰していたにも拘わらず、こうなっていたとはな」

 チカには知らされていないが、ギルマスは第一次大規模異世界召喚の当事者である。
 ただ純粋に、好奇心から異世界召喚の方法を発見した、1人の魔術師。
 その結果がどうなったのか……今更語るまでもない。

 多くの爪痕を見届けたのち、ギルマスは贖罪としてその罪を現国王へと告白。

 王の名の元、その研究は二度と行われないように抹消した……はずだった。

「噂としては聞き及んでいたが、実際の光景を見るとな」
「仕方ありません。ただ、今はあなたの知識が必要です」
「そうじゃな」

 ギルマスはしばし黙ったのち、口を開く。

「まず、チカくんが狙われている理由はシンプルに『召喚先の固定』だろう」
「そのために、チカがこの異世界に召喚された」
「そもそも、呼び先を固定するには純粋な人でなければ難しいじゃろう」
「……融合された人たちは、不適切と」

 別のものが混じってしまった時点で、候補の世界は最低でも2つになる。
 人であった存在の故郷と、素材となったモンスターの故郷。
 そうなってしまうと、呼び出す効率はとたんに悪くなる。

「もっとも、ワシが資料を粉々にしたおかげで、チカくんを呼ぶときは不完全だったようじゃがな」

 チカが大自然のど真ん中に現れた理由。
 それは、ギルマスが構築した異世界召喚を再現したが、不完全だったから。
 本来であれば、チカはあんな場所ではなく、召喚主の目の前に現れるはずだった。

「じゃが、彼の召喚自体は成功した。そこから誤差を修正すれば呼ぶ方は問題なかったのじゃろう」
「もともとは、幅広い世界から少人数を……だったはずだしね」
「その方が制約が緩い。1つの世界に絞り込むには、膨大なリソースが必要じゃ」

 何事も、広く浅く、の方が手っ取り早い。
 1つのことを極めるのは、途方もなく難しいように。

「となると、15年前の犠牲者を送り返すのは、まさか……」
「リソースとして利用する。じゃろうな、十中八九」

 ギルマスの言葉を聞き、リベールは苦虫を嚙みつぶしたような顔をする。
 自分が対峙した黒いローブの言葉を思い出したのだろう。

 元の世界に戻りたい、と懇願するように叫んでいた存在を。

「ましてや、彼ら・彼女らはモンスターと融合しておる」
「……膨大な魔力の塊としては、優秀と」
「しかも15年も生き抜いた数少ない存在じゃろうからな。反吐が出るがの」

 希望だけを持たせて、待っている先はリソースとして消費される『死』
 元の世界には帰れない。
 人間の姿に戻るという甘い罠も、彼らを騙す卑劣な言葉でしかないのだ。

「リベリュシュカ・L・スピリスト王子。今回の件、頼みますぞ」
「もちろんです、ギルマスさん」
「すまない……ワシは表立って動けぬからの」
「仕方ありませんよ。本来、冒険者ギルドのギルマスなんて父上以外だと許可されませんって」

「おぬしでも許可するじゃろ」

「……否定はしないでおきます」

 話を終えたといわんばかりに、リベールは結界を解く。
 同時に、周囲の喧騒が戻ってきた。

「さてと、さっさと戻ってチカに夕飯を食べさせないと」
「はははっ、頑張って想い人の食育に励むのじゃよ」
「……ギルマスさん! あなたまで!」
「今更じゃろ。運命の出会いを目撃した唯一の存在じゃぞ、ワシは」

 否定できない表現をされてしまい、リベールは黙り込む。
 どう頑張っても、口で勝てる相手ではない。
 反論を諦めて、寄宿舎へと再び歩もうとした時だった。

「ん? あれ、オレのペンダントが」

 ふと、自分の胸元が光っていることに気付いたリベール。
 慌てて宝石部分を取り出すと……

「どうしたんじゃ、リベール」
「……まずい。チカになにかあったんだ」
「お前、まさか彼にあげたペンダントに何か細工を?」
「万が一、オレがいない時に狙われた場合のまじないです。それが発動したんです!」
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